001 出会い
プロローグから数年後から物語は始まります。何卒よろしくお願い申し上げます。
「モニカさん、ホントにそんな人、いるんですかね……」
「リョウ、何回も言ってるでしょ? 行ってみる価値はある。そうは思わない?」
リョウとモニカは二人の背丈ほどある高い草をかき分けながら進む。
鬱蒼とした草は量も、臭いも、色も、どこか毒々しく、異様な雰囲気を放っていた。
「……こんなところに人なんか住めるんですかい? いかつい魔力が充満して、鼻が曲がりそうだ」
「知らないわ。だが『占い師』の話だとこのあたりのはずよ」
「どーもあの婆さんの話って信用できないんすよね……歳食ってモウロクしてるだけじゃないですかい?」
「……仕方ないでしょ。事態は一刻を争う」
リョウはモニカに見えないようにため息をついた。
やってられない。このクソ真面目人間め。わざわざ都からこんなところまで来る必要なかっただろ……などと脳内で悪態をついていると、前を歩くモニカはスピードを上げた。
「ちょっと、置いてかないでくださいよ!! こんなところに置いてきぼり食らったらオレ絶対死にますって!」
「……ああ、ごめんなさいね。役立たずは置いていくのが私の隊の決まりだったからな。こんなに遅いと思わなかったし、この地区に足を踏み入れると分かっていながら、何の対策もしてこないほど、リョウが愚かだとは知らなかったわ」
リョウを見もしないで皮肉を言うモニカに、リョウも若干苛立って言い返す。
「モニカさんこそ、何ですかその恰好。谷間ばっつり、スリットがっつり、なんでそんな露出度マシマシの衣装で来たんですか? これから会う相手に色目でも使う気ですか? 痴女なんですか? 王国唯一の【聖剣士】の癖にはしたな……ひっ」
言葉の途中で、リョウは黙った。モニカが腰の剣を抜いたからだ。
「冗談っすよ、冗談! なんでそう気が荒いかな!!」
「だまんなさい……。ついたわ。おそらくあれよ」
抜いた剣を向けた先、そこだけは草がかりとられており、今にも壊れそうな掘っ立て小屋が立っていた。
「これが、【占い師】が言ってた救世主の家……ですか?」
「他にないからな。おそらくここが……救世主、ユキムラの住処……」
風が吹けば壊れそうな小屋を見て、さすがにモニカも自信がなくなって来たみたいだ。
「やっぱりモウロクしてたんですよあの婆さん。あの婆さん、オレに向かって、『お前はもうすぐ役立たずになるから、今のうちに次の職探しとけ』とか言ったんですよ? ホント失礼ですよ。目腐ってますって」
「確かに、その予言は間違っているわね。『もうすぐ』ではなく、『既に』役立たずですもの……!!」
その瞬間、掘っ立て小屋の扉が開いた。モニカもリョウもそっと草の間に身体を隠し、様子をうかがう。
小屋から出てきたのは、小屋と同じくらいみすぼらしく、同じくらいボロボロの恰好をした男だった。
そして、彼らにとっては残念なことに、この男こそが占い師が言った救世主ユキムラだった。
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