私にはヲタ用語かビジネス文書しかないんや…
おはようございます。
爽やかな朝でーす!
とは、問屋が卸さないわけですわー。
一瞬目の前が暗くなったと思ったら、気づけば私は居間のソファーに居た。座る私の前には、膝をつき、私の手を握って、心配そうに見上げてくれている光の貴公子。
あー
説明したくない。
けど適当に納得してかえってほしいー。
ゆっくりと背もたれから体を起こす。周囲に視線を投げ掛けたら、居間の扉の脇に美丈夫が壁に背を預け、腕を組んでこちらをみていらっしゃった。
なんてこったい。
お客様放置か。私…
はぁーーーーー
深いため息が出た。
「せ、聖女…」
あ、最悪なとこでため息ついてしまった。マジごめんね。光の貴公子。
「あの、神様?」
「なんだ。」
私は恐る恐る話しかけてみると、親鳥のように光の貴公子はなんでもするから言ってくれという顔をした。
「誤解なんです。色々と…」
「誤解?」
「私、死にたい訳じゃないんですよ。本当です。」
「聖女…!」
みるみるうちに光の貴公子の顔に安堵が広がっていく。良かった。顔色も戻ってきてる。
うむうむ。と、内心頷きながらさて、この口下手が何をいったら良いものか、見当もつかぬぞ。誰か教えて!えろいひと!!
「えーと、あの、確認宜しいですか?」
「うむ。」
「さっき、私の今なら死んでも良いって思ったものが、神様に届いてしまわれたということでお間違い無いでしょうか?」
完全にビジネスモードになってしまう口調で確かめる。
致し方ないんじゃー。私には、ヲタ用語か、ビジネス電話窓口口調しか話せる用語が無いんだよ。
伊達に社畜してないぜよ。
「あぁ、純粋な祈りは真っ直ぐ我に届く。我が天にあろうと、地にあろうと、変わらぬ理である。」
おぅふ…純粋な祈りときましたぞ!
純粋なって、純粋とは何ぞや。
こちとら腐った生き方で人生の半分以上を塗り替えてしまった喪女ヲタクぞ?腐女子ぞ?ユリも美味しく頂ける雑食ぞ?
純粋枠とは無縁な生き方してきた私に何を求めてるんだ。
「申し訳ございません神様。さっぱわからん。」
思わず最後はヲタになる私…
「明確な真実を端的に告げたではないか。どこがわからぬ。」
「私に、純粋な祈りなどなかったかと。」
むしろ不純な萌えしかなかった。
「何を言う。そなたはいつもただただ純粋に、神への感謝を、生への感謝を、果てはこの世界の存在にすら感謝をしているではないか。これほど純粋で真っ直ぐ届く祈りなど、我はついぞ聞いたことがない。」
それが不純で邪な萌えから出てようとも、いいのか…マジでか…。
何か、脱力してしまった。
「なるほど、理解できないですが知識として、承知いたしました。それでですね。」
「なぜわからない…」
あ、むくれた。かわいい。ってそうじゃない。
私はまたポンコツになる気か?ポンコツ返上いつやるの?今でしょ!
「私の、さっきの意思は、辛くて死にたいのではなく、幸福に生きてるのでいつ死んでもきっと悔いはないという気持ちからのものとなります。ほら、よく考えてください。神様。私はいつも生に感謝してます。ほら、いつも届く祈りを思いだして…」
思い出して…私は、冷や汗が止まらないけどな!!!!!詳細を思い出さないでいいから、何かふわっとそうかもしれないー位で良いから。
五円玉を目の前でゆらゆらさせるイメージで、ほーらいつもそうだったでしょー?と、繰り返す。
「確かに、そうであったな。我の早とちりとは…聖女に負担をかけてしまったな。すまぬ」
「いえいえ、お気になさらず。とりあえず今日はお互いゆっくり休養をとることを、お勧めします。」
「そうだな。」
ここまでずっと、膝立ちで私を見上げていた光の貴公子がやっと立ち上がってくれた。その所作もめちゃくちゃ美しい。
そして、上着の乱れを直し、美しい指先が、私にのびた。
「いつでもそなたの祈りを待っている。」
みたことの無い優しい笑みで、光の貴公子は去っていった。というか、あの、えと、心臓が早鐘を打ち付けていて頭がかーっとなってて、今、すごい、倒れそう。
光の貴公子、最後に優しく、私の頬を撫でていきましたよ!!?
ひえーーーーっ転げ回りたいーーーー!!!
床を叩いてバンバンやってこの暴発寸前の気持ちを発散させたいーーーーー!!!!
でもできなーーい!
なぜってー?
そ れ は …
目の前に黒髪サラサラストレートロングヘアー様がいらっしゃるからさー!
オプションのモノクルが最高にお似合いですね。二次元キャラなら推せた。けど、今をいきる私としては、どう…説明しよう…。
チーン…
「あ、あの、ええと、あの…」
美丈夫様に意識を向けて、それから慌てて立ち上がって2歩程近づき、なんとかかんとかこの場を乗りきれる言葉がないか探しあぐねる。
今の出来事を何と言ったら良いのだろうか。
いやまて、その前にするべきことがあった。
「申し訳ありません。」
クレーム対応の時、こんな気持ちだったなぁ。
お腹の前で両手を組み、45度きっかり腰から真っ直ぐ頭を下げる。
2拍で下げ、1拍溜め、2拍でまた頭を上げる。
頭をあげ、真っ直ぐあの紅玉を見上げると、片眉を上げて眉間にシワを寄せている。
おぅふ…
ご不快にさせてしまったやもしれない。