聖女様って絶滅危惧種?
さてはてこれはなんと言えばいいのだろう。私はもう死んでいる…。
ケ●シロウを思い出した。
ちょっと今はそんな場合ではないから、そのムキムキボディちょっとどっか行っててくれ。たのむ。
死んで…るんですか…
「そうよぉ。死んだの。」
つまりこれは、所謂お迎えって事ですね。
こんな奇跡みたいな美しいお迎えに当たるなんて、私の引きすごい。
麗しい。
最後にこれって神の慈悲か。
神よありがとう。
つらつらと目の前の美しさに心震わせてたら、ふわっふわのおててが私を撫でてくれた。
ボディなくて良かった。あったら絶対鼻血回避不可だった。
「貴女ほんとに聖女向きねぇ。こんなに純粋な祈り、他に類をみないわぁ。うふふふふ」
麗しさに意識がガンガン持ってかれる。麗しい。
いや、そうじゃなくて。
あの、ちょっと待ってください!
「なぁに?」
はうっ小首傾げた。チャームカンストしてる。胸が苦しい。いや、死んでるんだった。それは置いといて。
さっきから聖女がどうのって、どういう意味でしょうか!?
食いぎみに意識を麗しい麗しいお迎えの…えーと天使様?いや、もうこれ女神だな。女神様に投げてみる。
意思を強く持たないと、麗しさ以外ふにゃふにゃになりそう。
「あらーいいわね。いいわね。きちんと自分を取り戻せたみたいで安心したわぁ。」
女神様はまた私をいいこいいこしてくれる。待ってやめて。おてての暖かさと柔らかさがほんとに素晴らしすぎるのです。好きです。笑顔が輝いてます。ありがとうございます。ご褒美です。
「今ね、他の次元は聖女不足が深刻でねぇ。貴女には是非、私の管轄する世界線で聖女になっていただきたいのよぉ。あ、安心して。貴女がいた世界線の管理者からは、ちゃんと大事にするならいいですよって、許可いただいてるから。」
安心させるように微笑んでくださるが、待って欲しい。思い止まって欲しい。
できません!
無理です!
思い止まってください!!
ひえええええっと、私は焦りで続く言葉が思い付かない。ほんとに待っていただきたいのです女神様。
「あらあら、落ち着いて。生まれた世界からはなれるのは不安だとは思うけど…」
そうじゃないです!わ、私死んだんですよね!?
それって生まれ変わって聖女になるってことですか!??
最近流行りの転生聖女とか、胸は熱くなるができるはずがない。転生小説の皆さま方、何でそんな知識あるの?普通に生きてたら知り得ないよ??好きな趣味だから製造方法もばーっちり☆とか、どんな才女だったんだよって思うわけですよ。
こちとら喪女拗らせてアラサーどころか三十路越えたわ。
それでもそんな知識生きてるうちに身に付けれたりしなかったさ。
社会の歯車なめんなよ!普通に働いてる人間はな、自分が使ってる道具や薬品の成り立ちなんて知るよしもないんだわ。
それで転生聖女させられてもただ人の幼児にしかなれるわけがない!
目もなんも無いけど泣きそうなときの熱さを思い出しながらむりむりむりむりと意識を投げ続ける。
「あらまぁごめんなさいね。勘違いさせたみたい。」
かん…違い…?
心のなかで首をかしげながら女神様の言葉に意識を傾ける。
「そうよぉ。あのね、今、ほんとにとーっても聖女不足なの。」
はい…
そこまでいうほど聖女って不足するものなのか…。絶滅危惧種?
「だからね、いちから育ってもらう時間がないのよ。」
なるほど…?
「だから、生まれかわりでなく転住してもらうことになるの。」
女神様、どうかお止めください。
私は心のそこからの意思をまた絞り出した。