既に死んでる…だ…と?
ブオン と、世界がぶれて私はポツンとした空間にいた。
なんかよくわからないけど…何だっけ。
ありとあらゆるものが曖昧な気がするが、はて、曖昧って何だ?それすらも何だかわからんとかなんとかたぶん考えてたら
「あらやだちょっとー勝手に薄くなっちゃダメダメェ」
無茶苦茶美しい声が…した?気がした。
いや、わからんけど。
「あーもぉー。だーかーらー、勝手にどんどん存在小さくしないでちょうだいな。ほらほら、あたくしを見て、賞賛なさい。」
素敵な御手に両頬を挟まれた。
すべすべモチモチ暖かくてすべらかでまろやかー
しあわせぇー
何だこれすごいぞ素敵だ。おててだけでこんな幸せになれる存在って何だ。いやでもだって、すごいんだ。ふんわりと柔らかくて素敵なおててなんだ。今すごい幸せ。私、幸せだぁ!
うっとりとそのおててに幸せを噛み締めていたら、うふふっと、またきれいな声で笑いが降ってきた。
「あたくしの手だけでそんなに賞賛できるなんて、やっぱり貴女で正解ね。さすが、あたくしの決めた聖女だわぁ。」
きれいなお声が降り注ぎ、ただその響きだけにうっとりとしていた私は、はた…と、言葉の中身に真顔になった。気がする。
せいじょ…だと?
「あらうふふ、少し自分を取り戻してきたかしら?いいわねいいわね。その調子よ。そうよ、聖女よ。」
わかる?と、小首をおかしげになった…気がする。
ええい、気がする気がすると、さっきからなんだこれ、私はどうなってるんだ。この人を見ることはできないのか。ふわふわモチモチ素敵なおてての、美しいお声の女性だぞ。絶対美人。絶対美人だろ。そうに違いないのに、違いないから見たいのに!というかあれだ、せいじょってなんだもうほんと何なんだ。
とにかく私は、この、絶対美しいはずのお方を、見たい!!!
パチッ
何か、自分の中で音がした気がする。また、気がする…だよ。
でも、一気に目が覚めた時みたいな感覚だ。そして、眼前にはドアップで、この世の美しさを詰め込んだみたいなそれはそれはすごい美しく麗しいご尊顔があったのだ。
何これ尊い…
神に感謝しかない
こんな存在をこの目に映せるとは…世界よ…ありがとうございます
私の脳内はそんな言葉で埋め尽くされた。なんという美しさだろう。神々しすぎて言葉にならない。
だがなぜか形や色がわかるようなわからないような。
瞳はキラキラとした瞬きが揺らめくし、青かったと思えばゆらりと紫に移ろいゆきその内に奥から金色がにじみ出す。髪は金なのか銀なのかまばゆすぎてなんにもわからん。うねってるのか直毛なのかもわからないけどなんかべらぼうに長そうだ。睫毛は長くバッサリ扇のようにはえ揃い、お口はふっくりプルンプルンだが陶器のようなすべらかさな気もする。
マジ麗しい。
尊みしかねぇ…
「っふ…ふふふふははははははっ」
美しさに合掌してる気持ちの所に、あの麗しい声が心底楽しそうに笑い声を上げた。
「貴女、思ってることあたくしに伝わってるのだけど、気付いていて?」
マジかよ…
死にたい
「安心して、貴女、既に死んでるわ。」
何てこったい望む前にご臨終してた。