第5話~学園都市③~
セレナに連れてこられた建物はどうやら市役所的な所らしい。
「初めまして。私は今回窓口をさせていただきます。レミと申します」
ピンク色の髪をしたいかにも受付のお姉さんという感じの女の人が にこやか営業スマイル?で話しかけてくる。
「お話は伺っております。記憶喪失ですか……。お名前を伺っても?」
「上井亜瑠です」
「上井亜瑠さん……少々お待ちください。……確かにご自分のお名前で?」
「名前だけ覚えています」
レミさんは#上井亜瑠__かみいある__#と書いた紙に手をかざすと
「ビィア・ノモ・エスタス」
と言葉を紡ぐ。
すると手のひらから光の粒が浮かび上がり文字をなぞると光は高速で外に出ていき10秒後ぐらいに戻ってきた。
「戸籍はないようですね。まずは戸籍の登録でよろしいでしょうか?」
セレナが静かに頷く。
レミさんもそれを見てか話を進める。
「今回記憶喪失ということでこちらに署名とステータス確認そして初期登録料5000ロンドをお願いします」
カウンターのしたから羊毛紙とペン水晶玉?を取り出す。
まずは羊毛紙のいかにも名前を書くようなところに自分で名前を書く。
漢字で名前を書いたところでレミさんが真剣な顔をする。
「それは……何語ですか?」
紙には上井亜瑠と書いてあるが……もしかして漢字は使えないのだろうか?さっきレミさんが書いていた文字も日本語の平仮名だった。
「すみません、サンクワード語でお願いできますか?」
平仮名でかくとそのとおりというかのように頷く。この国では日本語の平仮名がサンクワード語なのだろうか?
えぇと次はステータス確認……?履歴書を書けばいいのだろうか?
どういう……?
「ステータス確認ってどうすればいいですか?」
「……忘れる事あ……りますかね?……わかりました。詠唱はスタチュート・コンフィーモです」
戸惑いながらも教えてくれる。レミさんは優しい。いや記憶喪失最強説……?
えぇと魔法なんてものを使うのだろうか?
詠唱とはさっきやっていた魔法を使うためのものだろう。
魔法なんてものは存在しないものだと思ってるけれど……
とりあえず詠唱してみようか
『#ステータス表示__スタチュート・コンフィーモ__#』
すぅーーと体から何か言葉に言い表せれないものが流れ落ちた感覚がする。
まるで冷や汗が皮膚の下で流れ落ちたかのような……。
ぼやぁと目の前といっても30センチほど前に白色の板のようなものが形を作る。
手を伸ばすがそれは当たってもつかむことは出来ずすり抜けていく。
手を伸ばすという行為に周囲から軽く嘲笑が起きる。
仕方なくね?知らなかったし
やや沈んだ気持ちで見るとそこには以下のことが書かれていた。
名前 上井亜瑠
性別 男
年齢 17歳
種族 人間
レベル 38
職業 無し
HP 4560/4560
Mp 4157/4207
所持金 0オロ
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装備 衣服
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スキル 剣技Lv.3 槍術Lv.1 体術Lv.1 鑑定Lv.1 火魔法Lv.2 水魔法Lv.1 風魔法Lv.2 光魔法Lv.2 闇魔法Lv.4 Lupit Lv.5 観察眼Lv.2
技能 徒歩Lv.1 詠唱速度Lv.1 サンクワード語Lv.2
加護 生命神の加護 邪龍の檻 魔王の呪い
なんて言えばいいのか……。
これが自分…38レベルってどういうこと?
17歳……?
職業無し……ニート?
ツッコミどころが多すぎてあまり良く考えれない。これほんとに自分のなのか?
「見れましたか?他人からはステータスボードは見ることはできない仕組みになっているので安心して見てください」
とりあえず戸籍を先に作ってステータスを詳しく調べたい。
名前、種族、歳、職業を書いていく。
特に突っ込まれることがなかったから間違えてはいないだろう。
最後にレミさんが水晶玉を渡してくる。
「手のひらで掴んでください、あっ両方でお願いします。そしたら魔力を流して終わりです」
「魔力を流す……?」
具体的なことはわからないがアニメとかによく出てくるやつだろうMPとかいう。
……とりあえず……ふぉおぉおおってやればいいのだろうか?
「ふぉおぉおおぉおおお!」
周囲から奇妙なものを見る目を向けられる中、水晶玉を包む手の力を強める。
見かねたのだろうかレミさんが口を開こうとした時
パリン
水晶玉が割れた。
「「えっ…!?」」
ざわっ…
「まじかよあいつ水晶玉を魔力で割りやがったのか?」
「魔力で!?」
「マジか!」
「ありえん!」
ざわざわ
「あっあの……すみません」
レミさんは僕をこの世のものではないかのように見つめ
「整備不良?そんなことあるわけない。不良品?今まで使ってこれたわ。龍の目が…?」
と言うと。
「とっとりあえず戸籍を作って置きますね。」
指を僕の額に当てる。光が流れてくる。
「こっ戸籍ができました。いつでも実体化し、またしまうこともできます……」
顔を青くしながら、水晶玉の残骸を片付け始めるレミさん。
周りの目も、睨むもの畏怖の目を向けるもの興味の目を向けるもの色々いる。
「行こうか」
セレナが手を取る。
1つ忘れている。
「あとお金が……」
「これでいいか?」
セレナさんは小袋をドンッと机に置いた。
レミさんは音に驚いたのか準備してあったからか相手が王族だからか少し驚くがすぐにお金を数える。
受付をやっているからかその作業はとても様になっていてすぐに数え終わる。
「だっ大丈夫です。お釣りが…」
「要らん。とっといてくれ」
と言うと手を引かれ外に出る。
かっこええ~。
日本では1度言ってみたかったセリフだ。
実利がないから1回もしなかったけど。
外に出ると喧騒の音が大きくなる
相変わらず忙しそうな馬車が目に付く。
「水晶玉は龍の目玉から作られる。流した魔力は龍の目玉から通じ戸籍に流され魔力の波長などが記録される。つまり壊れることなんて滅多にない」
そこまで言うと突然黙り込む。
無言の時間が30秒ぐらいか続いた後。
「特に気にすることは無い さぁ入学審査に行こう」
どこか渇望が混じったかのような目をしたセレナはさっと道に目をそらすと後ろを振り返りそこがミスティア学園の学校部分であるであろう城のような塔を指を指した。
馬に乗っていた時に見た堂々とした背中は微塵もなく、水につけた猫のように静かな背中をしていた…。