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亡国戦線――オネエ魔王の戦争――  作者: 石和¥


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猛る獣人

「え!? 発砲が早過ぎない!? まだ100哩以上はあるでしょ?」

虚心兵(こっち)じゃありません。平野部東側から所属不明の吸精族(ヴァンプ)魔導師部隊、約20!」

「別働隊か。輜重隊の悪夢(おまえ)の警戒網を抜けたってことは、転移か隠蔽の特殊魔術持ちだな。ゴーレムには荷が重い。人虎族重装歩兵部隊(ウチ)が出る。援護を頼む」

「わかった、けど1分だけ待って!」


 イグノちゃんの声にバーンズちゃんは頷くと、部屋の外に顔だけ出して部下たちに出声を掛ける。


「タバサ、出撃準備!」

「出来てます、いつでも!」

「総員、城壁外で待機、1分後に出る! 人狼族(けいそー)の連中には城壁を死守するよう伝えろ!」

「はッ!」


「……いまよ、わたしの虚心兵(ゴーレムちゃん)たち!」


 イグノちゃんが魔珠を叩面(タップ)すると砲撃が開始され、平地のあちこちで爆炎が上がった。血飛沫と肉片が撒き散らされるが、すぐに吸精族ヴァンプ魔導師部隊は散開して姿を消す。


「甘い甘い、いくら速くても見えなくても、捕まえられない訳じゃないのよ!」


 虚心兵(ゴーレム)からの一斉砲撃は、転移も隠蔽も関係なく敵を区画ごと吹き飛ばし、焼き払ってゆく。草原は凄まじい勢いで掘り起こされ、鋤き返され、黒土と肉塊が入り混じって耕される。


「残敵17……14……12……」


 順調に敵を殲滅してゆくように見えた虚心兵たちも、決死の突撃により懐に入られ、動力源の魔珠を貫かれて機能停止させられてゆく。敵勢力の無力化は残り11体で止まった。


いいとこ(・・・・)だな。後は任せろ、たかが11体程度なら一瞬で片付けてやる」

「バーンズちゃん。合計だと22だけど、大丈夫?」

「問題ありません。混成部隊(むこう)が来る前に、こっちを片付けます」


 魔珠からの映像には、早くも展開を始めた人虎族重装歩兵部隊の姿が映っていた。分隊ごとにまとまって陣形を組み、指揮官の到着を待っている。

 魔王城を出て行ったバーンズちゃんが、ものの数分でその先頭に立つと、重装歩兵部隊の精鋭20名は一斉に動き出した。


 左翼が回り込みながら敵を囲い、中央が牽制、逃げ場を失くして固まったところを右翼が突進して食い千切る。動きが止まったところを中央からの一撃が切り裂くと、下がる隙も与えず左翼が嚙み砕く。

 敵へと襲い掛かるその動きは、連携などという生易しいものではない。躍動し暴れ回る1頭の猛獣だ。しなやかに伸びる爪と、強力無比な牙。

 魔力と攻撃魔術に長け、速度と隠蔽術で敵を翻弄するのが身上の吸精族(ヴァンプ)が。手も足も出ず次々に(ほふ)られてゆく。


 あまりにも一方的すぎる展開に、アタシは唖然として魔珠の映像を見詰めるしかない。


「……なんなの、これ。相手は上級魔族で、バーンズちゃんたちは、下級魔族なのよね?」

「その疑問は、ごもっとも……というより事実、先代魔王様が即位されるまで、彼らが上位の魔族に敵うものなど何ひとつなかったのです」


 イグノちゃんは魔珠を抱き締めるようにして呟く。


「肉の壁でしかない烏合の衆、文字通りのケダモノ扱いしかされていなかった獣人族(ウェア)たちを、カイト様が変えたのです。規律、統率、連携、指針、目的意識と達成計画。それは、何もかもが聞いたことのない概念。下級魔族の誰もが夢見ることさえなかった理想でした。目の前に差し出された新しい魔王領軍の未来に、獣人族(かれら)は熱狂し、死にもの狂いで期待に応え、結果を出し、実現しようとしたのです」


 静かで穏やかで愛情に満ちたその声に含まれる何かが、アタシを怯ませる。


「……応え過ぎた(・・・・・)、ってこと?」

「魔王領をバラバラにしたという意味でしたら、その通りです。獣人族(ウェア)の成長と躍進ぶりには目を見張るものがありましたが、それは上級魔族の誇りを踏み躙り、中級魔族の存在価値を喪わせたのですから」


 イグノちゃんは、笑う。


「あまりに純粋な彼らは、背中から撃たれるなんて、思ってもみなかったのです」

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