中編
翌日は、早めに起きて、シャワーを浴び、朝食を摂ると学校へ向かった。
「おはよう、美憂」
背後から声がして振り返ると恭佳がこっちに駆けてきた。
「おはよう、恭佳」
一緒に並んで、学校に向かう。
「昨日は、ごめんね。あの後、お兄ちゃんに“何で、美憂ちゃんを暗い中一人で帰したんだ、同じ方向なんだから、家まで送ってくのに…。バカ、恭佳”って起こられた」
恭佳が、お兄さんの真似をして言う。
「ううん。気持ちだけ受け取っておくって、お兄さんに言っておいて」
私は、苦笑しつつそう返した。
「ねぇ、美憂。今日は、元気無いね。何かあった?」
心配そうに訪ねてくる恭佳に。
「何も無いよ」
そう、何でもないのだ。
最初から、相手にされてなかっただけなんだ。
そう思うことで、胸の痛みに気付かない振りをする。
「そう、なら良いんだけど…。何かあったら、相談に乗るからね」
そう言うと恭佳は、自分のクラスに入っていく。
そんなに落ち込んでるように見えたのかなぁ?
上手く、隠せてる自信あったのにな…。
親友に気遣わせるって、よくないよね。
あぁ、こんな筈じゃなかったのになぁ。
あれから、恭佳にも話せず、週末を迎えた。
本来なら、彼と出掛けてる。
だが、今回は向こうからキャンセルしてきたんだし、応じる必要性もない。
「姉ちゃんが、家に居るの珍しいな」
リビングで寛いでいたら、弟が声を掛けてきた。
「居ちゃ悪い?たまには、家でのんびりも良いかなって思ったの」
何て、当たってみる。
「ま、別に悪くはないけど…」
歯切れの悪い言い方。
居て欲しくないなら、そう言えば良いのに…。
さっきから、弟の視線がチラチラこっちを伺ってる。
私は、居心地が悪くなり自分の部屋に逃げた。
何もすることが無い。
何時も、どうしてたんだっけ?
もう良いや、昼寝でもしよう。
私は、ベッドに横になると眠りについた。
「美憂。ご飯よ」
下から呼ぶお母さんの声で目が覚めた。
「はーい」
部屋を出て、下に降りて行くと。
「美憂、どうしたの?何かあった?」
お母さんが、心配そうに私を見てくる。
首を傾げる私。
そんな私の目許をハンカチで拭うお母さん。
その行動で、はたと気付く。
あれ?何で、泣いてるんだろう、私。
「取り合えず、顔を洗ってらっしゃい。ご飯の準備しておくから…」
お母さんに言われて、洗面所に行き顔を洗う。
フェイスタオルで水分を拭き取ると、ダイニングに行く。
弟は、自分の席座って待っていた。
お父さんは、まだ仕事から帰ってきてないみたい。
「姉ちゃん遅い。オレ、腹ペコペコなんだよ」
と訴えてくる弟。
「ごめん」
私は、それだけを言って、自分の席に座る。
「「頂きます」」
手を合わせて、合掌すると弟は直ぐに箸を持ち、食べだした。
私は、それを見ながら、本当にお腹空かせてたんだなぁって、呑気に思いながら、ゆっくりと食べ出した。
「ごちそうさまでした」
私は、そう言って自分が使用した食器を流しに持って行くと、自分の部屋に戻った。
そう言えば、課題が出てたな。
それを片付けてしまおう。
教科書、ノート、問題集を取り出して、机に向かった。
ふと時計を見る。
午後十一時を指していた。
もう寝よう。
私は、机の上のも物を片付けて、ベッドに潜り込んだ。