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1話

よろしくお願いします

遠い遠い、さらに遠い国のお話。


その国は平和で国に住む人々は幸せに暮らしていました。

国の中心には大きな都があり、都の中には大きなお城がありました。そのお城は白で統一された綺麗なお城でした。

もう一つ、お城の近くに同じような大きな建物がありました。それはこの国の神様に仕える者たちが住む神殿と呼ばれる場所です。



「今日も司祭様は元気ですね」

神殿の前で老婆が腰を曲げて歩いているところに若い青年が近寄ってきて、荷物を持ってあげると老婆は嬉しそうに礼をながら言った。

「私は元気だけが取り柄ですから」

わかれるときに青年はそう言って元気よく手を振って神殿に戻ったのだった。


「ああ、やっとお戻りになられた」

神殿に仕える者たちが慌てふためいて司祭の青年に駆け寄った。

「どうしたのです?朝の朝議にはまだ時間がありますよね?」

不思議そうに青年が尋ねるとひとりの青年が司祭の青年に向かって叫ぶように言った。

「どうしたもこうしたも……」

「おかえりなさい、クリュンバルト最高司祭様」

少し怒っている様な口調の少女の声が青年の声を押しのけて司祭の青年に掛けられた。

「またあなたですか」

クリュンバルトと呼ばれた青年は額に手を添えて困ったような表情で少女を見下ろした。

少女はこの神殿の中でも一番偉いと言われる最高司祭にも物怖じしていないいっそ太々しいくらいの態度で彼を見上げた。

少女は白銀の髪を背中の中ほどまで伸ばしており、瞳はグレーがかったシルバーアイをしていた。肌は透きとるように白く、着ているものも白で統一された可愛らしいワンピースだった。

「あなたはここに居て良いはずの方ではないでしょうに…」

「あら、別にいてもおかしくはないでしょう?」

青年の言いように少女も負けてはいなかった。

クリュンバルトはもう諦めたかのような表情で少女を再び見下ろした。少女はそれが気に食わないのか、怒りの表情を明らかにする。

それに慌てふためいたのはクリュンバルト以外の神殿に仕える者たちだった。

「王族がそのように無闇に他を威圧してはならないとお教えしたはずですが」

青年は仕方ないとため息をついて少女を宥めにかかった。

「そうね、これもあなたには効かないようですもの。他の方法を探します。…あ、忘れていたわ。私の名をきちんと呼びなさい、仮にも私の婚約者なのですからね」

少女はそう言い残して、神殿の正面玄関から出て行った。

「おや、朝議の時間ですね」

クリュンバルトはそう言うと何事もなかったかのように言った。

「…毎朝の事だ、そろそろ慣れろよ、新人」

年嵩のいった中年の男性に肩を叩かれ、若い僧は項垂れながら朝議に出るために神殿の奥へ向かった。



「信じられません、あんな子供が宝玉の持ち主の一人だなんて!」

若い司祭見習いが朝議の後の清掃活動中に大きな声で抗議した。

「お前、そう言えば先月きたばかりだったな」

中年の司祭が呆れたような目付きで司祭見習いを見た。

「今の宝玉の持ち主はどの国も子供なんだよ。最後の持ち主も最近決まったって話だ。ま、俺達にはそれほど重要な話ではないけどな」

手に持った箒を器用に操りながら中年司祭は神殿の前に集められた枯れ葉などを一ヶ所に纏めていた。

「この白の国はあのこまっしゃくれたお嬢ちゃんが治めるんだよ。だがな、やっぱり王族なんだな、これが」

司祭見習いは中年司祭を振り返った。

「ま、後で嫌っていうほど見せつけられるから。そう言えばそろそろ今年も祭りの季節になったな」

神殿の近くの屋台が花や菓子を売っているのを見て中年司祭は嬉しそうに言った。

「はい、今年は私も司祭見習いとして参加できるので楽しみなんですよ」

司祭見習いはわくわくした表情で言った。

「まあ、頑張れ」

中年司祭は小さくため息をつくと司祭見習いの肩に手を置いて、意味あり気に励ました。

司祭見習いは特に気にもしていなかったようで元気にはいっと返事を返した。

ありがとうございます

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