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第四話 訪問

遅れてすみません。予約投稿を忘れてました。

では、ラブコメをお楽しみください。

ピンポーン

「はーい」

扉を開けると、そこには

「来ちゃった」

と宣う笑顔の紫がいた。

思わず固まる俺だが、そんなことを気にせず、部屋に入る紫。

「えっ?ちょっと待て!?」

慌てて紫を追いかける。

「一人暮らしか〜。まぁ、それなりに綺麗だね」

部屋を見渡す紫。

「何でここにいる」

俺は顔を片手で覆い、この状況の説明を紫に求めた。


「友達の家に遊びに行くと言って一人でここまで来た?」

そういえば、昔からこいつは行動力のある奴だった。俺はいつもそれに振り回されたっけ。

「はぁ…」

「悠人、一人暮らししてるって聞いて、部屋を見てみたかったんだもん」

「俺の部屋を見ても何も楽しくないだろうに」

「楽しいよ。私はあの後の悠人を知らないから」

息が詰まった。

「あれから悠人はどんな生活をしていたのか知りたいの。迷惑だった?」

そんな顔でそんなことを言われてはもう何も言えねぇじゃねぇか。

「何もないけど、好きにしたらいいよ」

とりあえず俺はお茶を出すために台所に向かった。

居間に戻ると、ベッドの下を漁っていた紫がいた。

「お前、何してる」

「えっ?いや、何かないかなって」

紫の目が泳ぐ。

「……お前、ここに何しに来たんだよ」

呆れた俺はため息を吐く。

「あっ、このゲーム懐かしい!」

露骨な話の逸らし方だったが、それに乗ってやった。

「そうだな。よく2人でやった」

久しぶりに紫とゲームをしようとセットし出す。

隣に座った紫は俺を見ると、俺の上に座った。

「小さい、軽い」

「何?あの時は重かったって言いたいの?」

睨まれるが、むしろ上目使いになって可愛い。

「そんなこと一言も言ってない」

ちなみに、ゲームは俺の圧勝だった。

「ぐっ、この小さい手が憎い」

悔しがってる紫にどや顔をする。

俺がにやにやと笑っていると殴られた。


「それにしても小さいな〜」

紫の小さな手を撫でる。

あらゆる場所が小さい。

「ぐっ、早く大きくなりたい」

「そうだな。ゆっくりと大きくなれよ」

「……ゆっくりでいいの?」

紫は俺にもたれかかり、見上げる。

「ゆっくりでいいよ。もう5年も待ったんだ。小さくてもここに紫がいてくれるなら俺は何年でも待つよ」

「うん…」


悠人が料理してる間、紫は部屋を物色していた。そして、見つけた。

例の奴か!

その箱に飛び付き、開けると、そこには前世の私と悠人の思い出が詰まっていた。

「あっ…」

悠人のお父さんから貰ったビデオカメラやカメラで撮ったデータや写真があった。

懐かしい。

貰ったからには使わないと、と悠人は言って、何が楽しいのか私にはさっぱりわからなかったけど、撮影ばかりしていた。私も借りて撮影したけど、悠人ほど上手く撮れなかった。

何回も何回も見たのだろう。写真は古びていてボロボロだ。

「あのバカ…」

私を忘れないでいたことが嬉しい。だけど、この5年間私に囚われ続けた悠人を悲しいとも思う。だから、私は…。

「私を忘れないでくれてありがとう」

生まれ変わって、まず思ったことは悠人のことだった。

今、どこで何をしているのか?私のことを忘れてないだろうか?幸せに暮らしているのだろうか?

そして、恋人ができただろうか?

私じゃない女性を好きになって幸せになっているのかと思うと、胸が苦しくて泣きたくなった。

本当は怖かった。会いたいけど、会いたくもなかった。

私はずるい。私に囚われ続けた悠人を嬉しいと思う私は悪い人間だ。だから、絶対に悠人を幸せにします。私の人生を捧げますから許してください。私に悠人をください。


紫は多い時は週一、少ない時は月一のペースで俺の部屋を訪れた。

「お前、よく来るけど大丈夫なのか?」

「大丈夫!両親は共働きで休日も出勤だからね」

大抵、土日に来るのは保育園が休みなのと俺が家にいるからだろう。

今の紫の両親は各地を飛び回っているらしい。それをいいことにあいつは俺の家に遊びに来ている訳だが。

紫を生んですぐに仕事に復帰したのは思った以上に紫が手のかからない子供だったからかもしれない。前世の記憶がある紫は大人しくて聞き分けのいい子供だろうから。

俺の家に来た紫は家事をしたがる。炊事、洗濯、掃除とその小さな体で必死にこなす姿は可愛い。それと同時に罪悪感もあるが。

紫と穏やかな時間を過ごしていると、それをぶち壊す奴らが来た。

「何しに来た」

扉を開け、奴らを見て開口一番に本音が出た。

「わざわざ遊びに来てやった友達にそんなこと言うか」

「お前、最近付き合い悪いからな、彼女でもできたんじゃないかって噂になってるぞ」

「そうか。帰れ」

そう言って扉を閉めようとしたら奴らは抵抗した。

「何でだよ!?」

「中に誰かいるのか?」

「もしや彼女!?」

騒ぎ出す奴らに顔が引きつる。

「お前ら近所迷惑だ」

仕方なく、本当に仕方なく中に入れた。あのままだと入れるまで騒ぎそうだったからだ。

「何この子?これが彼女?」

紫を見て、開口一番にそう言った奴の頭を叩く。

「お前がロリコンだったとは知らなかったよ」

憐れんだ目で見てやった。

「彼女ができない理由ってそれだったんだ…」

「いや、違うからね?俺はロリコンじゃない!ノーマルだ!」

「うるさい。叫ぶな、静かにしろ」

「親戚の子供か?」

「まぁ、そんなとこ。紫」

紫を呼び寄せると、それまで一切喋らず、妙に大人しい彼女を抱き抱え、ベッドに座らせた。


その日の紫を送る帰り道。彼女は静かだった。

「紫?どうした?」

「うん、歳の差って大きいな〜って思ったの」

「そうだな」

「悠人がもてるなんて知らなかったし」

「それは…!」

一番知られたくなかったことだった。彼女を不安にさせたくなかったから。

後であいつら覚えとけよ。

「私が好きになった人だもん。もてるのもわかるよ」

繋いだ手に力が入ったのがわかった。俺も強く握り返す。

「こうやって来るのはね、私が知らない悠人を知りたいのと、不安だから。私はもう…あんな思いをしたくない。もう悠人を失いたくないの…!」

一度死を経験した紫は生が何の前触れもなく、唐突に奪われるものだと知ってしまった。まだこんなに幼い子供が。

「また悠人を一人残すなんて無理…。だから、ずっと一緒にいたい。もう離れたくない。だけど、そんな簡単なことがすごく難しい」

「俺もそうだよ。また紫を失うかもしれないっていつも不安だ。この手がまたなくなるんじゃないかって怯えてる。だからこそ、この一瞬が愛しい。この時間がずっと続くものじゃないってわかってるから大事にするんだ」

俺は立ち止まり、しゃがみ込むと、不安でいっぱいの彼女と視線を合わす。

「だから、この光り輝く一瞬、一瞬を2人でゆっくりと積み重ねていこう」

「2人で?」

「そう、2人で」

額を合わせ、お互いに微笑み合う。

「うん、一緒に年を重ねていこう」

そう笑い合って、お互いの唇を重ねた。

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