表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

第一章 アキの憂鬱

「おああああああ!?」


少女から発せられたとは思えないような叫び声が、大講義室中に響き渡しました。

直後、ボンッという音とともに黒い煙が立ち、少女を飲み込みます。

煙がはれた後に残ったのは体中真っ黒になった少女と、黒焦げになりプスプスと音を立てている細長い何かでした。


「う、あ……失敗した……」


少女がガクッと肩を落とすと、それを見ていた周りの学徒たちが笑いはじめました。

少女のすぐそばにいた髪の長い一人の学徒が、少女の顔を拭きながら言います。


「アキったら、なんでそうなっちゃうのー!?」

「分かんないよマルカ~、ちゃんと魔術書通りにやったはずなのに……」


アキと呼ばれた少女は涙目になりながら答えました。


「呪文はあってるように思ったんだけど……力みすぎてたのかな?これ、結構簡単なんだけど……」


アキにマルカと呼ばれた学徒は、先ほどアキが失敗した魔法を自分でやって見せました。

目の前にある蕾に意識を集中させ、呪文を唱えます。透き通る、小鳥のような声でした。やがて蕾が淡く光ったと思うと、ゆっくりと開き始め、可憐な花を咲かせます。


「こんな感じ……かな?」

「わあ……マルカすごい……」


今度は周りの学徒から賞賛の声と拍手がわきました。


「素晴らしいですね、マルカ。合格です。」


講義室にトーンの低い女性の声が響きます。

声がした途端周りの学徒は静かになりました。


「あ!えっと、ありがとうございます、アイリアス先生……」


マルカはどぎまぎしながら頭を下げました。

そこに、ひとりの女性が近づいてきます。

アイリアスと呼ばれたのはこの授業を受け持つ先生でした。高い身長に細身の体、肩より上で切りそろえられた黒髪……と、見た目は美人そのものでした。ですが、声と眼光は鋭く、魔導士学校で一番怖い先生として名高い先生でもあります。


「あなたは優秀ですね、マルカ。それに比べて……アキ、あなたは何度道具を炭にしたら気が済むのかしら?」

「ご、ごめんなさいアイリアス先生……」

「あなたは今夜も”特別授業”ね。さあ、早くその焦げ臭い身体を洗ってらっしゃい」

「はい……」


アキが返事をすると、アイリアスはくるりと向きを変えて戻っていきました。


「アキ……大丈夫?」

「うん、まあ……毎回のことだからね」


アキは小さく肩をすくめた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ