品定め
そこで世故は、勿論お嬢さんを云々とは言わなかった。
ただ、私たちは結婚しますと、
規定事実のように述べた。
それは許可を求めるのでなく、ただの、報告であった。
平田里見は、ファッション雑誌なんか滅多に買わない。
彼ママに会う時のワンピース♡みたいな特集を見た事がなかった里見は、
リクルートスーツで世故家を夏に訪れた。流石に上着は脱いだが、8月に、里見は長袖のシャツで来た。
平田家で目についたのは、飾り棚に並んだ学研の本たちだった。
そこはやはりインテリである平田コウゾウが育った家で、
平田の母親は笑って「コウゾウが舞い上がっちゃって」と言い、
おじいちゃんまで出てきて「破れ家で驚いたでしょう」と言った。
里見はやぶれやという言葉の意味を瞬時に理解できずはいと答え、この後何年も後悔することになる。
耕作の妹二人はペットを買うならトビネズミがいいと上の妹が言い、下の妹はタランチュラがいいと主張した。
やっぱり変わってるわ。でも、わかる。面白い。里見は黙ってそう感じていた。
里見は上の妹と写真を撮り、ミクシィの友達申請をされて、芥屋を後にした。
帰りのバスでミクシィを里見が見ていた頃、上の妹が自分の母親に
「可愛い人やったけん、許す!」
と、品定めを公表していた。