リクラブ
その頃、平田里見は就職活動が楽しくて仕方が無かった。
元々人と話すのは好きだし、企業研究も興味深い。勉強熱心で積極的な里見は、インターンシップの選考は全て合格だった。
彼女は満面の笑みで堂々と大勢の前でスピーチを済ませ、カメラの前で破顔した。
そして、彼はやってきた。
「どうも、20番目の男世故です」
どうやら彼は、インターンに受かった旨のメールを見なかったものの、はるばる京都から来たらしかった。しかも始発で。
「どうも爬虫類の研究をしていたら、蛇に顔が似てきまして」
里見は、彼に興味を抱いた。が、彼は淡々と話すだけであった。
そして班分けがあり、里見と世故コウゾウは同じ班になった。
案は出るものの、なかなかまとまらない。というか、案を悉くコウゾウが潰していくのだ。
あれもだめ、これもだめ。
里美はいつもの癖で、重い胸をテーブルに乗せて議論に参加していた。
そこで里見は名案を思いつき、ヴィーナスフォートの画像をみんなに見せた。
案は決まった。地下商店街に空を投影するのだ。光ファイバーで。
彼らは時間内に課題がまとまらず、徹夜で情報を収集したりして発表の資料を作り上げた。しかし里見は準備の段階でもう限界を迎え、人の部屋だというのにベッドで寝た。
コウゾウはちらりとも彼女を見なかった。
そして発表、里美は自分がやりたかったのだが発表者に選ばれたのは他の男性で、しかも彼とは別の男性が勢い良くマイクを奪ったりして、その男性が言葉に詰まると世故が補足説明をした。彼らはベストを尽くしたが、最優秀賞は理系の院生がほとんどと文系の女性学部生一人のグループで、里美と世故のグループは最下位だった。しかし力を合わせたグループワークは楽しかった。
最後のパーティーで、コウゾウが里見にメールアドレスを聞きにやってきた。
里見は怪訝な顔をして、赤外線通信を開いた。
どうせメールはしないだろう。里見はそう思っていた。