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なんでわかるのよっ。


顔が赤くなるのがわかった。


絶対この人にも聞かれたし…


前を歩く警護の人の表情は分からないけれど、あの時隣に居たのだから聞こえていないほうがおかしい。


はぁーと自然にため息がもれるのも、仕方が無いでしょ。


「大変なことになったな」


歩みを止めた彼に、同情の様な視線を向けられ、手を差し出された。


「俺は一瀬。これから宜しく」


「イツセさん、私は十六夜です。宜しくお願いします。」

手を握り返し挨拶する。


「あの、私は何をすればいいんでしょうか?」


「詳しい事はメイドに聞いてくれ。多分、食事の用意と洗濯、掃除くらいだと思うが…」

再び歩き出した一瀬さんの後について行く。


「長年俺達の面倒を見てくれていた人が高齢の為、辞めてしまってな。何人か候補が来たんだが、長続きしなくて困っているんだ。」


「では今まではどうしていたんですか?」


「こっちのメイドが兼任しているが、人出が足りなくて手が回らない。」

一瀬さんは苦笑いしながら、前を通りかかったメイドに呼びかけた。


「みこと。良かった会えて」

ミコトと呼ばれたメイドは振り返ると一瀬さんに駆け寄り抱きついた。


「イツセ。会いたかった…」

ビックリしている私の前で、2人は熱い口づけをかわす。

完全に私の存在忘れてるし…

22年間、付き合った事もない私には刺激が強いです。


目のやり場に困っていると、一瀬さんが私の存在を思い出してくれた。


「あ、悪いな。こちらは ミコト。兼任しているメイドの1人だから、仕事の内容を教えてもらってくれ。」


「あ、はい。十六夜です。よろしくお願いします。ミコトさん」

ぺこりと頭を下げる。


そんな私を見て、呆れた様にミコトさんはため息をついた。


「あなたは何日くらいもつのかしらね。」


「えっ?」


少しトゲのある言葉に驚く。


「今まで、3日居れた人いないから。それに家事は?すぐに辞めるつもりなら、先に言って。無駄な事を教えたくないの。」

ミコトさんは嫌気がさしているみたいで、今までの人はそんなに酷かったのかな?


「ミコト。それについては大丈夫だ。」

一瀬さんが、すかさずフォローを入れてくれた。


「今までの奴らと経歴が違う。」

そう言うと、後は宜しくと一瀬さんは去って行った。


「あの家事は今まで1人暮らしだったので、一通りできますので…」

恐る恐る話しかけてみた。


「そうだったの。ごめんなさいね。」

とミコトさんは笑ってくれた。

その笑顔に私もホッとする。


「確かに初めて見る顔だものね。今までいくら教えてもすぐ居なくなるし、嫌になっちゃって…」

あなたなら大丈夫そうね。


そう言うと私を先導し歩き出した。


「食事は7時、12時、18時。それ以外に部屋の掃除とシーツの洗濯。主な仕事はそれだけよ。今日の夕食から作ってね。隊員は全部で5人。沢山食べるから多めにね。

朝の5時に食材が届くからそれを見てメニューを決めて。あぁ、自分の分の食事も忘れないようにね。」


さぁ、着いたわ。

ここが、あなたの戦場よ。


見ると、渡り廊下の先には質素な別棟が見える。


「簡単に案内するけど、分からなければ誰かに聞いて。私も忙しくって。」


ランドリー

キッチン

ダイニング

リビング

お風呂

各隊員の部屋


それぞれ案内される。


「最後がここ。隊長さんの部屋だけど、絶対に入ってはダメと言われているわ。」


他の部屋の扉とは特に違いがなくて、気をつけていないと間違えてしまいそう。


「では掃除はしなくていいんでしょうか?」


「いいんじゃない。私達もしたことないし。そもそも慣れるまではそこまで手が回らないわ。」


彼女の言葉に納得する。

確かに1日3回の食事の準備や、洗濯などをしていたら、あっという間に1日が終わってしまいそう。


「隊長さんを探しましょう」


と言うと、足早に庭に向かう。


そこはとても広くて、隊員達がそれぞれ訓練をしていた。


「あれ?ミコトさん。新しい子ですか?」


金髪の男性が私達に気付き声をかける。


「そーよ。隊長さんに紹介したいんだけど、どこにいる?」


ミコトさんの問いかけに、男性は奥を指差した。


「あっちで弓の練習をしていると思いますよ。」

それを聞いて、ミコトさんはそちらへと歩みを進める。


「ありがとうございました。また後ほどあらためて。」


私は頭を下げると、先に行ってしまったミコトさんの後を追った。


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