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簡単なことだろう?



暁様はそう言いながら立ち上がると、私の座るソファの背もたれに手を置いた。

頭の横に置かれたそれに、ソファが軋んだ音を立てる。

逃がしはしないと語る、アイスブルーの瞳に私は射すくめられ、身動きが取れない。


もう一方の手が、再び私の顎を掴む。



俺に脚をひらけばいい



耳元に囁かれたその言葉に、身体中の血液が沸騰し私の呪縛を解く。


「お断りしますっ!」


パシンッ


口づけられそうになり、私は暁様の手を振り払った。


「私は体は売りません。何がなんでも返済します。」

そんな私を見ても、暁様は怒るでもなくニヤリと笑う。


「出来ない事は出来ないと諦めたほうがいい。それに、俺に抱かれて後悔した女などいないぞ。」

素直になれと言われても、そっちの方が私には無理だった。

しかも、なにその自信。女は金で何とでもなるとでも言い出しそうなその態度にますます腹が立つ。


「暁様がどんな手腕をお持ちなのか存じませんが、私にはその方法は不向きです。別な方法で返済致します。」


「できるのか?525万だぞ」


出来ないだろう?


揶揄するような暁様の視線。


「なんとかします。今日中は無理だけど、家を売ればなんとか…」

拳を握りしめ、気が緩めば今にも泣き出しそうな自分の心を奮い立たせる。

まるで、そんな私の姿をみるのが楽しいとでも言いたそうな暁様の瞳。


そんな目で見られるのが、とても悔しかった。


反面、絶対屈しないと奮い立つ。



暫くの沈黙。



先に口を開いたのは暁様だった。


「では、特別に提案してやろう。」

再び向かいのソファに身を投げ出した暁様の瞳が私を捉える。


アイスブルーの肉食獣の目。


細められたその瞳は、目の前の獲物が弱まるのを待っているかの様に隙がない。


私はこの瞳から逃れる事が出来るのだろうか…


「俺の警護の世話人が辞めたところだ。住み込みで働いて返せ。月給は30万。悪くないだろ?」


月々の返済額はお前に任せる…と。


いきなりの提案に面食らう私に暁様は続けた。


「さぁ。どうする?」


何か裏があるのではと思う。


心が警鐘をならす。


危険だと。


でも私には…他に選択肢がない。


この捕食者からは、逃れられないと分かった。


ならば、全力で戦う。


「わかりました。やります。」

握りしめた手は血の気を失って白くなっていた。助けを求めたいけれど、今の私には誰も居ないのが現実で…


せめて、後で思いっきり父親を恨もうと心に誓う。


「働かせてください。」

自分に言い聞かせる様につぶやくと、立ち上がり暁様に頭を下げた。

この人の思い通りになるかと思うと悔しいけれど、仕方が無い。


「よし分かった。今から働け。異論は許さん」


「はい。」

私はそう返事をするしかなかった。

薬を待っている常連さんの顔が浮かんだけれど、今の私には為す術がない。

落ち着いたら、手紙を書いて説明しよう。


「そこの男に着いていけ。」

暁様が顎で示したそこには、警護と見られる男性が立っていた。


彼が私に向ける視線は柔らかいもので少し安心する。


その人について部屋を出る私の背中に暁様が言い放った。


「もし、世話人が無理だったら言えばいい。いつでも俺の女にしてやる。ただし…」


処女のままでいればな…と






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