十七
連絡を受けた伊藤が国立競技場につくと、馬絹が出迎えた。
「一体、どうなってるんです。ドールは無事なんですか?」
「連中の持ち物から時限爆弾が見つかりました。目的はやはりドールの破壊だったようですが、連中は目的を果せませんでした。ドールは無事です」
伊藤は馬絹に連れられ、地下訓練場に入った。銃弾痕だらけの壁、血まみれの床……まるで市街戦の後のようだった。
中では軍と警察が死んでいる工作員の体を調べたり、生き残りがいないか確認している。血と硝煙の臭いが立ち込めている。
「連中は誰もいないこの地下訓練場でドールに爆弾を仕掛けて破壊しようとしたものと思われますが、たまたま中村さんたちがいたんです」
伊藤は彼らが不定期に訓練場で徹夜していたのを思い出した。
休憩室につくと、ボロボロになった和彦、丸子、森が座り込んでいた。
そして彼ら三人の後ろに、やはりボロボロの四体のドールが立っていた。
「君たちだけで連中を返り討ちに……?」
「俺たちというよりドールが、ですけどね」
和彦は力なく笑った。
伊藤は安堵した。よく生き残ったものだと思った。
「それにしても……君たちはここで一体、何をしていたんだ?」
ボロボロのメイド服のヒカル、女子高の制服のノゾミ、ユニフォームのハナエを見ながら伊藤が言った。
「…………」
三人は答えられなかった。
工作員たちの身元は分からなかった。
韓国も北朝鮮も、互いに我が国に罪を擦り付けるための成りすましだと主張した。中国やロシアではないかという説もでた。キムチを大量に買ったのが、あまりにわざとらしいというのである。
「ほんと、最低ですね」
マユミが汚らわしいものを見るような目で三人を見た。
三人は小さくなって座っている。
地下訓練場は一旦閉鎖になり、市ヶ谷に小部屋を用意された。その部屋の中である。
「何の話ですかー?」と我那覇愛が入ってきた。
森も丸子もこの世の終わりがきたような絶望の色を顔に浮かべた。彼らの変態行為が憧れの我那覇の知るところになる瞬間が訪れるのである。
「聞いてください。夜な夜な地下訓練場で徹夜してると思っていたら、ドールにコスプレさせてたんですよ!」
マユミは我那覇に説明した。
「ええっ!?」
声を上げた我那覇を、ちらっと横目で見て森はため息をついた。
「コスプレですかー!?」
我那覇は言った。
「言ってくれればいいのにー。コスプレなら私が喜んでモデルやります!」
「げっ」マユミは驚愕した。
森と丸子の顔ににわかに歓喜の色が浮かんだ。
「な、なんなのこの女!」
谷口とは違うが、これまたマユミの苦手なタイプの女だと思った。
困惑しながら、ふと和彦の方を見てみた。
和彦はただ苦笑いしているだけだった。
(終)




