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十四

「はあ、あんな美人、見たことがない」

 森がためいきをついた。

「仕事の楽しみが五十パーセント増しになりそうですよ」と丸子が言う。

 それを聞いて「二人とも現金だなあ」と和彦が言った。

 三人は、夜、誰もいない地下訓練場に残っている。

「いいのだ。早い話が俺は綺麗好きなのだ」

「森さん、綺麗好きの意味が違うよ」

「しかし……これを愛ちゃんに知られては困る」

「愛ちゃんだって。森さん、早くも馴れ馴れしいじゃないですか。でも確かに、僕らのこの秘密の集まりは知られたくない……」

「まあ、俺は平気だなあ」

 このように、三人は度々地下訓練場で徹夜をしている。マユミが想像しているような、サッカーの練習をするためではない。

 彼らは徹夜で、ある変態行為に及んでいたのである。



 トランク職員高橋真之は、若い茉莉まりの体に夢中になっていた。今日は芝のシティホテルに来ている。茉莉と会うときは、もっぱらこういうホテルであったが、高橋の望みで公園や車の中で行為したこともある。高橋が若い頃から妄想するだけで果せなかったシチュエーションを、茉莉が会話から巧みに引き出し、実現させてくれたのである。一度など「体育館の倉庫の中、マットの上で同級生としてみたかった」などと高橋が言うのを茉莉は実現してみせた。ある高校の体育館に忍び込み、ご丁寧に体操服まで用意して、高橋の長年の願望を叶えてみせたのである。

 そんなわけで、高橋は完全に茉莉のとりこになっている。

「ねえ、この前の続きを聞かせて?」

 茉莉は高橋のxxxをxxxしながら言った。

「戦闘用ロボットに興味があるなんて、変わった娘だね……あっ」

 xxxをxxxでxxxされている高橋は悶えながら言った。

「ドールって、いつもはどこにいるの?」

「それは重要機密事項だからなあ」

「意地悪ね。これでもくらえっ」

 茉莉はxxxをxxxしながらxxxxしたあげくxxxでxxxした。

「あっ……意地悪して隠してるんじゃないんだよ。じゅ、重要な……ひぃ」

 xxxを執拗にxxxされて、高橋はxxxをxxxした。

「xxxしたいでしょ? でもxxxせてあげない」

「君こそ意地悪じゃないか……うっ」

 茉莉はxxxを指でxxxxし、xxxをxxxxあげた。

「あっ、そんなこと……ああ、言うよ。ド、ドールは地下訓練場に格納……されてる」

「それって、どこにあるの?」

 高橋はxxxをxxxxされて、xxxした。

「うっ……国立……国立競技場の地下だ……アッー」



「ふああ」

 若い刑事、山本は欠伸をした。

「さっきから欠伸ばっかりしてやがるな」

 先輩刑事の渡辺が言った。

 早朝の関越自動車道をひた走る車の中である。二人の刑事が、八月の末に発生したトラックの盗難事件の捜査で新潟に向かっていた。東京で盗まれたトラックが、九月一日に新潟インターを通過したのをナンバー読取装置が検知したのである。

「先輩だってさっき、つまんねえ仕事だなあとかボヤいてたじゃないですか」

「実際、つまんねえんだもの」

「あ、関越トンネルですよ。トンネルの中で新潟県に突入です」

「関越抜けてから新潟市内までが長いんだよな。はぁ」

 そうして二人はボヤきながらも新潟までたどり着いた。

「新潟って何が美味いんだ?」

「渡辺さん、仕事しましょうよ」

 

 二人は不審なトラックが新潟の江尾港にいたという情報を新潟県警から聞いていて、そのトラックが東京で盗難にあったトラックなのではないかと思い、江尾港へ向かった。


「何やら船から降ろした荷を積んでいたって?」

 目撃者から話を聞いた。トラックの型も東京の盗難車と一致しているようだった。


 港の近くのガソリンスタンドでもトラックの目撃証言があった。

「東京白味噌ラーメンって書いてありましたからね。それが東京ローカルのラーメンチェーンの名前だって知ってたもんで、何でこんなところにいるんだろうと思ったわけですよ」

 店員が言った。

 トラックはどこへ向かっていったのか……

 ガソリンスタンドの接する道を真っ直ぐ進めば東京方面には違いないが、本当に東京へ向かったのかどうかは確証がない。

「東京へ行くなら関越道を使いますよね、渡辺さん」

 山本が言った。

「いや、そうすればまたナンバー読取装置に検知されるだろ」

「ということは下道ですかね」

 二人の刑事は東京へ向かう一般道に沿って点在するガソリンスタンドやコンビニエンスストアに聞き込みをした。


 一件のコンビニで証言があった。

「そんな感じのトラックだったんですが、男の客が、十数人分のおにぎりやサンドウィッチを買っていったんですよ」

 店員が言った。

「十数人分?」

「おにぎりとサンドウィッチの棚が空になりましたよ。どんだけ食うんだよって思いましたね」

「その他、何か気になったことはあります?」と山本が聞いた。

「ええ、ありますよ。その客、キムチのパックを五つも買っていきました」

「キムチ?」

 二人は顔を見合わせた。


 車に戻った二人は、そのコンビニで買った弁当をかきこみながら話し合った。

「トラックがここへ来たのは四時間前だったな」

「店員はそう言ってました」

「東京に一般道で向かうとしたら、国道十七号で三国峠を通る。高速で先回りすれば、月夜野インターを降りたところで追いつける。一か八か高速道で行こう」

 二人は車を急発進させて、最寄の巻潟東インターチェンジに向かった。

「ああ、美味いもんを食う暇もなかったな」


 月夜野インターで降りて、二人は国道十七号に出た。

 トラックを追い抜けたのだとしたら、三国峠の方からトラックが来るはずだった。

「本当に来ますかね」

 路肩に止めた車の中、後ろを気にしながら山本が言った。

「刑事生活三十年の俺の勘を信じろ」

「渡辺さん、三十五歳でしょ」


 二人はトラックが来るのを待った。

 もう来てもおかしくない時間になる。刑事の勘などと言ってしまった渡辺は焦りだした。

「ごめん山本。俺の勘はハズレかも……」

「いや先輩、来ました!」

 紛れもなく東京白味噌ラーメンと書かれたトラックが、後ろからやってきた。

「止めましょう」

「いや、応援を呼ぼう。俺たちは後をつける。車を出せ」

 トラックが通り過ぎると、山本は車を発信させた。

「どうしてなんです」

 疑問に思った山本が渡辺に聞いた。

「コンビニで買った大量の食料ってのが気になるんだよ」

「え?」

「あの荷室の中に、人間が大勢入ってるんじゃないかってね。おそらく中国からの密航者だろう」

「なるほど。でも食料を買ったときに、キムチも買ってましたよね。北とか韓国という線は?」

「中国にも朝鮮族ってのがいるぜ」

 いずれにせよ荷室に大勢の人間がいた場合、調べの際に暴れたり逃げられたりしたら二人では捌ききれないので、応援を要請したのである。

 そうしてしばらくの間、二人の乗った車はトラックの後をつけた。

 するとトラックはウインカーを出して左折し、コンビニの駐車場に入っていった。山本は怪しまれぬよう、一旦追い抜くか、一緒に停めるか迷った。

「どうしましょう」

「トラックと少し離れたところに停めよう」

 山本はトラックの右、車六台分離れた場所に車を停めた。

 トラックの方を見ると、運転手が降りて、店へ入っていくのが見えた。

「また食い物ですかね……あれ?」

 山本は驚いた。運転手は雑誌のコーナーで立ち読みを始めたのである。雑誌のコーナーは窓際にあるので、車の中の二人の刑事には、立ち読みしている運転手の様子はよく見える。

 よく見えたが故、彼らは運転手に注意がいきすぎた。

 トラックの助手席から一人の男が降りたことを彼らは気付かなかった。男は二人の刑事の車の後ろを通って、助手席側に回り込んだ。

「一体何やって……」

 言いかけたときに発砲音がし、助手席のガラスが砕け散った。渡辺の体がびくんと跳ね上がり、血がフロントガラスに飛び散った。

 山本は渡辺の向うの銃を構えた男の顔を見た。

 しかしその瞬間、轟音とともに眩い光につつまれ、山本は何も分からなくなった。

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