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十二

「つまりは」と伊藤が言った。

「彼女たちは、うちの中村の言うことしか聞かないってことか」

 何故プロフェッショナルな立場の人間ではなく、素人の和彦だけがドールを従わせ、成長させられるのか。マユミにはさっぱり分からなかった。

「おそらく、最初に設定された能力を使った作業や運動をさせる分には、命令許可を持った者の言うことを聞いて実行できるんだろうが、新たに覚えさせたことをやらせるには、教えた者の命令しか聞かないということになっているんじゃないか」と伊藤が言った。

「そもそも」と中澤は言う。

「ドールに新たに何かを覚えさせる。今まで関わった全ての人間が、誰もそれをできなかった。しかし中村さんだけは、それができた。今までの我々のやり方と、中村さんのやり方と、一体何が違ったと言うかと……」

「名前だね」と伊藤が言った。マユミは、はっとした。


 ハナエ。ノゾミ。


「そう、我々もそういう結論に達しました。ドールには成長の余地があったが、その能力はプロテクト、つまり封印されていた。が、名前を与えるということがそれを解除するするキーになっていた」

「中村が、彼女たちに名前をつけたことで、そのプロテクトが解除され、同時に、中村がドールたちの主人として設定された。やはり関塚教授はドジ娘以上の能力をドールに備えていたんだな。しかし何らかの意図があって、こんなパズルみたいな鍵をかけて、それを封じていた」と伊藤が言った。

「まさか、それも分かってたの?」とマユミは和彦に聞いた。

「いやいやいや、まさか、まさか。そんなわけないよ」と和彦は否定した。

 

 伊藤は笑い出した。

「しかし、多額の国費を使って、関塚教授も冗談がすぎる。ははは」

「笑いごとではありませんよ。伊藤さん」

中澤はピシャリと言った。

「やはりドールには能力が秘められていた。これは関塚教授の失踪と何らかの関連性があることは間違いありません」

 マユミは中澤の後ろの女の方が気になっていた。

 先ほどからずっと表情一つ変えないので、この女こそロボットみたいだと思った。


「ところでさらに問題が」

 中澤は和彦をちらっと見た。

「十二体のドールのうち、二体は中村さんが名付け親になったことで、中村さんの影響下に入ってしまったが、残り十体は、我々が名前をつけてプロテクトを外せば、我々が支配できると思い、試してみました」

「ほう、どうなった?」伊藤が聞いた

「これがね……」中澤は憎々しげに言った。

「だめなんですよ。やはり言うことを聞かない。これは推測にすぎませんが、ドールたちは互いにネットワークで情報交換し、最初にプロテクトを外した三号や四号から残りのドールへ、中村さんを主人と仰ぐよう命令がなされているのではないでしょうかね」

「いやあ、ハーレム状態だねえ。寺田さん」と和彦は言った。

「馬鹿」とマユミは和彦を突付いた。

「国防省としては、ドールの能力がどこまで伸びるのか見てみたい。関塚教授のロボットだから、さらなる尋常ではない能力があるかもしれませんから。しかし、中村さんを主人とする現在の設定の変更方法を手探りで調べるのは時間の無駄というものです」

 中澤は言った。

「そこで我々としては中村さんを頂きたい」

「へっ!?」と和彦は間抜けな声を出した。

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