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甘い甘い骨

作者: 閒中
掲載日:2026/02/15

火葬された伯母の骨の味は、皆を狂わせた。

火葬で焼かれた伯母の骨は、まるで上質なチョコレートのように甘かった。


火葬場に集まった私を合わせ八人ほどしかいない親戚たちは、骨をつまみ食いした私を勿論叱った。

しかし6歳の私には何がいけないのか分からなかった。

こんなに美味しそうな香りがするのに。


だが私を叱りながらも、その香りに我慢できなくなった母や他の親戚たちは「一口だけ」と自分に言い聞かせ伯母の骨を摘み、口の中に頬張った。


そこから皆止まらなくなった。


伯母の骨はあまりにも甘く、美味し過ぎた。


私も皆も、両手で伯母の骨を掴み、次々と口の中に放り込んでいく。

美味しい、もっと食べたい、もっと欲しい、一つでも多く、誰にも渡したくない。


たちまち伯母の骨は無くなった。

骨壷に入れるものは何も無かった。




***




それから10年後、伯母の骨を食べた親戚の一人が病気で亡くなった。


焼かれたその親戚の叔父の骨もまた、伯母と同じ上質で甘い香りがした。


皆は内心喜んでいた。

あの味が忘れられなかった、またあの味を味わうことができる、と。


叔父の骨も瞬く間に食べ尽くされ、やはり骨壷は空のままだった。


その数年後、立て続けに亡くなった母や親戚も同じように食べ尽くされた。


私は恐ろしくなった。

伯母の骨を食べた人間は皆、伯母と同じように骨が甘くなるのではないのだろうか。

あの場にいなかった親戚が亡くなり焼かれた時は、そんな香りはしなかった。


じゃあ、私も。


ゾクリと寒気がした。

私も死んだら食べられてしまうのか。

あの香り、あの味は私も皆も狂わせた。

常識や理性が排除され、親であろうと、兄妹であろうと、一心不乱に食べた。


食べる人間が増えたら、骨が甘くなる人間も増えるという事だ。

そうしたらこの狂気は何処まで広がるのだろう?


抑えなければ。

終わらせなければ。


私は決意した。

伯母の骨を食べた残りの親戚たちを、殺すのだ。

焼かれないように、見つからないように。

海に沈め、山に埋める。


***



何年もかかった。

どの親戚も最期は悲壮な表情で涙を流し、私に縋りながら訴えた。

「またあの骨が食べたい、殺さないでくれ。」と。

「お前の骨を食わせろ!」と逆に私を殺そうとした人もいた。

恐ろしかった。

甘い骨の存在が広まれば、いつか骨を食べるために殺し合いが始まるだろう。

私も、あの骨の味が忘れられない。

食べたくて仕方がない。


だがその恐怖も今日で終わる。

甘い骨を持つ最後の一人の命が此処で終わる。


私は足に重りを着けて、

崖から海へ飛び込んだ。



***




しかし私は知らなかった。

伯母の骨を食べたあの日、伯母の骨を焼いた火葬場の職員の一人が骨を一欠片くすねたのだ。

甘い香りの誘惑に負け、職員はこっそり伯母の骨を食べていた。


この職員が亡くなるのは、あと五十年後。


狂気は静かに嗤っていた。

甘い甘い、骨の中で。




〈終〉

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― 新着の感想 ―
最初の一文からめちゃくちゃインパクトあって、一気に引き込まれました。 骨が甘いっていう発想だけでも十分怖いのに、それを「チョコレートみたい」と表現しているのが最高に気持ち悪くて良いです。しかも最初は6…
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