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気まぐれしょうもナイト【更新不定期】  作者: すっとぼけん太
7/8

007 暇なときにやっている、ちょっといい話。

――少し昔の話。


PM(管理)をしているプロジェクトの現場でのこと。

定例ミーティングを終え、3人で居酒屋へ繰り出した。


ジョッキを傾けながら、常駐リーダーのマサが聞いてきた。


「暇なときにしてることって、なにかある?」


すると、スマホの中の愛犬写真を見せだすと、自慢話がなかなか終わらない――ゴトーが、得意げに胸を張った。


「あるよ!」


まぁ、こいつのことは誰もアテにしてなくて、みんな半分スルーモードで呑んでいると……


「これ、チョットいい話なんだけど――」


と、突然、ゴトーが体を前に乗り出してきた。


「夜中に家のトイレの便座に座ってさ。

 少し前かがみになると、自分の頭の影が、足元の床にできるじゃん」


(いや、知らんがな)


「その頭の影を、両手を前に出して、頭(影)を挟むよう両側から手で挟んでさ」


(どうでもいいけど……)


「で、その影を、両手で挟むようにして……左右にゆすってみるんだ」


マサがエイヒレをほおばりながら、ぽかんと口を開けた。


「両手で……頭の影をつかむ?」


「そうそう。それで、両手を左右にゆすったときに、うまく真ん中の頭の影も、両手で掴まれているように、左右にゆすられてるように、頭を動かせれば、OK!」


マサ「OKって、……それやってんの?」


「ハマるから!絶対ハマるから!

 マサさんも帰ったらやってみて!で、成功したら、最後に足元に、“ウイッシュポーズ”の影を作るんだ!」


ゴトーは拳を握り、人差し指と小指を立てて見せる。


マサ「……はぁ」


「そんで最後は――全日本プロレスの武藤社長ポーズで、こうよ!!」


呑み屋でしゃがんで、しっかり最後は、こいつの得意な『武藤ポーズ』を決めてやがった。


「……けどさ。

 トイレじゃパンツ履いてないだろ。履いてから、武藤すんのか?」


いやいや、なんで俺まで真剣に聞いてんだ。



翌日、会社でマサに会うと、彼はニヤニヤしながらこう言ってきた。


『レイジさんも、やりました?』


――勘弁してくれ。


……とはいったが、俺も帰って試したのはここだけの話にしておく。(笑)


そして、俺は思った。

――しょうもないものとは、人から人へと受け継がれていく『無償の希望』なのだと。

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