005 『群青の夜の羽毛布』真夏の夜に起こった奇跡!
――金曜日の深夜。
TUTAYAの半額キャンペーンだったので、
職場の子から勧められた邦画DVDを借りようと、
レジに並んでいたら――
……前にいたのは、色あせた白シャツに汗ジミ、
太っちょでメガネの汗だく“真夏のサウナ兄ちゃん”。
「こないだは、コレも半額になったんだよ!」と騒いでいた。
店員の女の子「いえ、新作は……」
「だから、こないだは、コレもなったんだよ!」
……いや、そんなこたぁ、どぉーでもいいんだけど。
俺、暑いんで、冷凍庫に缶ビール入れてきちゃったんだよ。
早くしないと――凍るか爆発するわ。
店員さん、壁を指差し、
「貼り紙にあるように、半額は旧作と――」
「なったって!!」
……なるわけ無いだろ、新作が。ばぁ〜か。
店員さん「ですから……」
そのとき、店員さんがチラッと後ろの俺に、
“ほんとすみません”みたいな視線を送ってきた。
……いやいや、俺に同意求められても困るんだがw
「早くしろよ!なったって!!!」
――だからそんなことで『新作』が半額になるわけ……
「……分かりました」
は? ねぇーちゃん、今なんつーた!?
……まさかの、駄々こねデブちんの、ねばり勝ち?
いやはや――なんとエロ新作までが、半額になってしまいましたw
◇
次の俺の番になり、DVDを指さして一言。
「これの日本語吹き替え版は無いの?」
指差したのは――邦画『群青の夜の羽毛布』。
店員さん「……あの、これ邦画なので」
「えっ!? ……あ、そっか」
夏の夜に、思いもかけない奇跡を目の当たりにして、
頭がぼーっとしてましたw
……でも冷静に考えたら、
エロ新作を半額にしたデブ兄ちゃんより、
邦画に“吹き替え版”を求めた俺のほうが、
よっぽど信じがたかったわ。
帰ったら冷凍庫の缶ビール、カチカチに凍ってたし。
ほんと、世の中なにが起こるかわかりません。
※これは10年くらい前の実話です♪