011 うちの期待の新人・星くんは……
現場でPM支援をしつつも、自分のチームの承認作業があるので、週一で帰社しないといけない。
(昔は現場で全部できたのに……今は情報持ち出し厳しすぎ。ほんと窮屈な時代だわ)
◇
そんな帰社日。
うちの課には、今年4月入社の新人――期待の星くんがいる。
研修を終え、7月から小さなプロジェクトへ配属中。
承認が終わりかけた時、
ちょうど帰社して来たのは、彼の教育担当のリーダー女子。
目が合った瞬間――
……あ、やばい。怖い目してる。
こっち来た。
隣に座った。
空気が重い。
「相談があるんですけど、少し時間いいですか」
――いやいや、まずは**“おつかれさまです”**じゃない?
(その、他人行儀な、私もあなたの部下ですけどオーラはなに?)
「今年入った新人のことなんですけど」
――え、まだ相談OKしてないんだけど(汗)
「ああ、期待の星くんな」
「そう、その“期待の星くん”なんですけど」
◇
そして衝撃のひとこと。
「口癖が、『でも』『だって』『どうせ』で」
「それ、……黄金の三種の神器だなw」
「笑い事じゃないんです!!」
――はい、叱られました。
俺のほうが涙目になりそう。
◇
さらに教育担当のリーダーによる面談での感想は――
・面倒くさいことに巻き込まないでほしい
・自分に、判断や回答を求めないでほしい
・そして、とにかく楽をしたがる
……って、なにその守りたいこの無気力感。
そして極めつけ。
星くんの新しい口癖。
「なんか、いつも、やらされ感いっぱいっす」
――俺、滝汗。
「やらされ感」って新人の段階で解禁ワードなの?
彼女が注意したら、すぐ涙目になって黙っちゃったらしい。
……マジか。
◇
メールチェックや承認処理を終えて、ノートPCを閉じながら、俺は言った。
「……でも筆記はすごくよかったらしいぞ」
リーダー女子「……」
――はい、完全に逆効果。慰めゼロ。
むしろ火に油。怖い顔がさらに怖い顔に。
慌てて必殺のPM逃げ台詞。
「君の教え方は素晴らしい。君ならできるよ。
長い目で見ていこう。……あ、ごめん、現場戻る時間だわ」
――やばい、しばらく社内には戻らんとこ。(汗)
◇
現場へ戻る電車の中で思った。
……最近の新人は、なんとも頼もしい。
でもこれだけは断言できる。
このエッセイを読んでる全国の新入社員のみなさんに――
君は絶対、勇気を与えている!
そして星くん。
君はすでに、先輩女子を泣かせている。
――いや、俺も泣かされそうだが。
【了】




