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リメイク  作者: 春木
最終章 七神暴発編
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幕間 リメイク

 ヤマトと四方守神がアゲルを助けに行き、悪魔ルインとルシフェル、僕の三人は闇の中に残された。


「闇龍、ちょっといいですか」

「なんだ……? ミカエル……」

「僕とルシフェルを、()使()()()へ送ってください」


 突然の申し出に、ルシフェルは動揺する。


「ま、待てよミカエル! 僕は禁忌を犯しすぎたし、追放したのは君だろ!?」

「バベルに赦されたんだ。もういいだろ……」


 そして、有無を言わさずに天使の国へ降り立つ。


「相変わらず……何もないところだよね」

「ほとんどの天使族は……地上界で人間に成りすまして秩序を守らせているからな……」


 何もない、真っ白な空間。ここに、長いことルシフェルを閉じ込めていた。


「うわっ!」


 僕は、ルシフェルに光剣を投げ付けた。


「な、なんだよいきなり……!」

「僕と勝負をしよう、ルシフェル」

「は……?」

「魔法の力は無し。光剣のみを使った剣術。それなら公平な勝負になるだろ」

「やっぱり……バベルが赦しても、ミカエルは僕のことを赦さない気なんだね……」


 僕は、ここぞとばかりに大翼を広げる。ルシフェルには、もうない翼。


「死ぬ気で掛かって来い!! ルシフェル!!」

「クソっ……!! 分かったよ……!!」


 ルシフェルは、必死に光剣を掲げる。しかし、魔法を使用しない戦いは公平……()()()()

 天使族、いや、魔法の源の僕たちにとって、翼の有無というのは身体を動かすのに最も必要なものだった。

 ルシフェルの鈍い動きは、僕を捉えることはできない。


「ハァハァ……趣味が悪いよな……。誰も見てないのにストレス発散でもしたいのか……?」

「ルシフェル……翼が欲しいか……?」

「は……? 堕天した僕にそんなこと出来ないことは分かってるだろ……?」


 しかし、僕はニヤけた。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。その今なら、()()()()()()()()()()()

「それって……」

()()()()()()()よ。そして、君が光の神になるんだ」

「それが自身の権力も開け渡すことだと……分かってるんだよな……? また僕が裏切ったらどうする……? 君に力は無いんだぞ……」


 僕は、自身の大翼をスゥッと消滅させる。


「さあ、受け取りなさい、ルシフェル」

「正気か……?」


 恐る恐る、ルシフェルは僕の手に輝く、光のエネルギーをその身に受け渡される。そして、ばさっと、白く綺麗な大翼が現れた。


「これで……ミカエルは……」

「うん。ただの人間になった。光魔法が少しだけ扱える、ただの凡人になったわけだね」

「これから……どうするの……?」

「さて、風の赴くままに考えてみようかな。この世界の終焉は免れた。バベルも七神も無事だったしね」


 そして、僕はルシフェルに背を向けて去った。


   *


 闇神 アゲルを連れ、地上界に戻った僕は、炎龍に跨るカエンさんと合流していた。


「本当に全てを守り切るだなんて……。お見それしましたよ、バベル様」

「やめてくださいよ、カエンさん。僕一人じゃ何も出来ませんでしたから……」


 そして、カエンさんは炎龍から飛び降りた。


「それでは、早速お話をしましょうか」

「はい」


 僕が聞きたかったのは、龍族の一味のその後だ。暴発を共に防ぎ、終焉を防いだ功労者たちとは言え、一度は七神に反旗を翻し、殺そうとした一味だ。

 僕が許しても……他の神たちは……。

 炎龍とカエンさんは、順番に彼らが今後どうするのか、どうなるかの調査に向かってもらっていた。


「ルークは、()()()()()使()()()()みたいですよ」

「え……それだけ……?」

「ヴォルフは狼村に帰り、ガドラは持ち前の岩魔法で岩神と共に守護の国に暮らすそうです」


 ガンマは闇龍で、ドレイクは死んだ……。


「フーリンは、自由の国を助けたとかで、暫くは()()()()()()()()()()()()()になるそうですが、そこで弟と共に兵士になると言っていましたね」


 七神も分かっていた。この世界の、本当の想いを……。


「カエンさんは……」


 すると、カエンさんはハットを僕に被せた。


「私は、ディムに仕えるとでもしましょう。禁忌を犯した罪滅ぼしをしなければなりませんからね」


 そう言うと、今まで見せていた裏のありそうな笑みとは違う、朗らかな笑みを僕に見せた。


「あの……カエンさん……!」


 ここで言わなきゃ……また繰り返してしまう……。


「同じ地球人の貴方に、お願いがあるんです……」

「お願い……?」

()()()()()()()()()()を、譲り受けて貰えませんか……?」


 それは、僕がこの世界の唯一神を降りると言う話。

 そんな重責……帰ってくる言葉は当然……。


「分かりました。その命、僭越ながらお引き受けしましょう」

「え……? いいんですか……?」

「はい。未だ子供の君に世界の神なんて、務まりませんよ」


 そう言うと、またしてもカエンさんは笑った。そして、僕に手を差し出す。


「さあ、力を」

「は、はい……」


 僕は言われるがままに、その力をカエンさんに渡す。


「お疲れ様でした、唯一神バベル。そして、おかえりなさい、ヤマトくん」


 気が付いたら、僕は涙が溢れてしまっていた。夕暮れに染まる中、荒れ果てた広野が広がる。


「世界は……きっともっと素敵な世界になる。君が創り変えたこの世界は、きっと……」


 そう言うと、カエンさんは炎龍に跨った。


「それでは、またいずれ、どこかで」


 僕の姿は、ヤマトの姿に戻っていた。


「ハァ〜……疲れた……」


 重責から解き放たれた最初の一言だった。


「それじゃあ、僕は……」


 もう、行き先は決めている。


「アゲル、行こうか」

「うん! ヤマト!」


 すると、背後からいつもの声が僕たちを引き止める。

 

「おーい、俺たちを置いて、どこ行くってんだ?」

「ヤマト一人だと不安だしねー!」

「ぼうけんだー!!」

「ヤマト、着いて行く」


 アズマ、セーカ、カナン、ホクト。

 そして、


「さあ、ボサっとしている暇はありませんよ、ヤマト」


 いつものニヤけた顔は、僕を振り回すんだ。


「あぁ! ミカエル!」

「本当にこの世界が平和になったのか、ちゃんと確認しに行かないといけません。神の加護もなくなりましたから、徒歩での大変な旅路になるでしょうね」

「えー、またそんな疲れる旅するのー……」

「アハハ、元々旅ってそんなモンだろ?」


 僕は、ミカエルと、カナン、セーカ、アズマ、ホクト、そして、アゲルを連れて、自然の国に向かった。

 僕たちの、リメイクは終わった。

 そして、新しい冒険が始まる。

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