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リメイク  作者: 春木
第八章 冥界の国編
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49話 もう一人の異郷者

 滝へ着くと、仙人ナーガさんは指を差す。


「よし、お前。そこに立て」


 見当は付いていたが……仕方ない。

 滝を見て感じたことだが、今いる冥界の国には、気温と言う概念がないらしく、寒さも暑さも感じない。

 ただ、やはり滝に打たれるのは気が引ける……。

 僕は渋々も、激しく流れ落ちる滝に頭を付け、その振動を身に浴びる。しかし、苦痛かと思いきや、意外にも心地よく感じた。


「どうだ?」


 ナーガさんは訊ねる。


「なんか……少しだけ落ち着きます……」

「その実感こそが、【仙術魔法・神無(かんむ)】だ。もう出て来ていいぞ」


 僕は少し唖然としてしまった。


「え……っと、()()()()()()ってことですか……?」

「そうだ。この滝は私のエネルギーで創った。不快感を感じる者は会得できないが、心地良く感じる者には会得できるようになっている」


 ガロウさんの時の精神集中と違って、なんだか呆気なくて気が抜けてしまったが、エネルギーは感じる。


「このエネルギーか……」

「でも、まだ使用はするな。()()()()()()()()な」


 はい、お約束ですよね。

 仙術魔法という、そもそも特殊な魔法で、異世界と言う次元を移動できる魔法に代償がない訳がない。


「まず、お前の認識通り、これは次元魔法で相違ないが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「え……じゃあ会得した意味がなくないですか……?」


 すると、悟さんが刀を構える。


「エイレスとやら、俺の刀を見てみろ」

「うわっ!」


 さっきの戦いでは一切見えていなかった、()()()()()()()()()()()が刀には覆われていた。


「これは()()()()()()()()()()()だ。この次元魔法を会得することで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()んだ」


 なるほど……。それで、悟さんが言っていた魔法の見切り方に繋がるわけか……。


「あの金髪の光魔法の光速移動も見ることは出来ないが、どこに出現するのか()()()()()()()ことが出来るようになる。だから俺は反撃が出来たんだ」


 今まで気薄だった光と闇という、未知の領域と感じていた魔法属性、その対抗策のような気がした。


「先に説明しておこう。闇の神の元には、神本人のアゲル。そして、守護神のドール。魂の管理者である悪魔 ルインという男がいる。全員が闇魔法を使う。闇の神アゲルは見た目も中身も子供そのものだ。自分の友達が欲しくて冥界の国にずっと留まらせる為に、悪魔ルインと共に魂を奪いに来るはずだ。魂を取られれば永久にこの国からは出られない。気を付けろよ」


 困惑、という概念を一度頭から消し去ろう。アゲルがいない今、一つずつ整理をしよう。


「あの、ちょっと一人になっていいですか……?」


 そう言い、僕は一人で散策を始めた。

 まず一に、七神である闇の神は子供で、この冥界の国に留まらせるために襲ってくる恐れがある。

 よし、これはなんとなく理解できた。ラーチのように純真無垢な子供の神なら、そんな思考になってしまってもおかしくはない。

 二に、冥界の国、と言う名だけあって、ここはある意味では()()()()()のようなものなのか、はたまたその狭間のような国なのだろう。危険な場所ではあるけど、一国であり、アゲルからの使命では、闇の神からも加護を受けなければならない。それに、冥界の国に行く為には条件があるようなことも話していた。ならば諸々が頷ける。

 三に、()()という存在も分かる。

 神がいて、龍がいて、魔法がある世界。神が悪魔を従えているのは謎だが、世界観的にはおかしい存在ではないし、二人係で襲ってくるのだろうか。この辺は会ってみないと分からないが、悪魔という存在が危険視されていることは理解した。

 最後に、闇の神の名は、()()()……。

 僕が初めて召喚された時、アゲルは確か、僕もミカエルだとバレないように、と、安直な名前を付けたはずだ。

 でも、闇の神の名はアゲル……。アゲルが知らないはずがないし、たまたまなんてこともないだろうし……。

 そこへ、龍長カエンさんは静かにやって来た。


「カエンさん……」


 カエンさんは、今まで敵対していたとは思えないような笑みを僕に向けた。


「一人になりたいところすまないね。もしかしたら、()()()()()()()()()()()困惑しているかと思ってね」


 やはり長を務めるだけあって鋭い……。と言うか、僕が分かりやすいのだろうか……。


「まあ、そうですね……。僕を召喚したアゲルが、何を企んで闇の神の名を名乗っていたのか……分からなくて……」


 すると、カエンさんはハットを脱ぎ、暗い空を仰ぐ。


「少しだけ、昔話をしましょう。()()()()()であることを知って、それも未だに困惑していそうだしね」


 そして、ニコッと僕に微笑み掛けた。

 情報量が多すぎて、一度「そんなもんだよな……」と保留にしていた問題だ。でも、聞いておかないといけない気がした。


「私も君と同じ、()使()()()()()()()()()()()だ」

「カエンさんも……召喚された異郷者……?」

「私は、ルシフェルという天使族に召喚され、この世界を変えることが君の使命だ、と言われた」


 僕は救って欲しいと言われたけど、カエンさんは変えて欲しいと言われたのか……。


「それから私の旅は始まり、エイレスくんと同じく様々な属性魔法が使えた。ディムの仙術魔法も然りだね」


 そうか……。僕と同じ境遇、天使族からの正式な召喚であれば、加護も受けられるし仙術魔法も会得できる。


「でも……唯一神の封印をしたのは、龍長、つまりはあなただって聞いてるんですけど……」


 少しの沈黙の後、カエンさんは答えた。


「私は、旅の果てでバベルに会った。封印をしたのも私で間違いない。しかし、彼は()()()()()()()()んだ」


 バベルは、自ら封印されることを望んだ……?


「エイレスくん、僕が何故七神を殺そうとしているか分かるかい?」

「いや……理由は……。でも皆さんいい人だから……」


 冷徹な表情を、カエンさんは向けた。最初に対峙した、炎龍上の時に見せた眼だ。


「バベルは、この世界を創ったことを嘆いていた。絶えない戦争、七神やその民たちが悩み苦しむ姿、七神の呪い……」

「呪い……?」

「君は七神と共鳴をしたはずだ。どこまで見たかは分からないが、()()()()()()()は知っているかな?」


 ヒーラが風の一部から創られたことを思い出しながら、僕はコクリと頷いた。


「知っているなら話は早い。七神は自然界に存在する物質と、バベルの魔力のエネルギーの融合体だ。本来、この世界の人間は魔力が尽きたら死んでしまう。が、七神はバベルから授かった魔力。その膨大な魔力が尽きた時、()()()()()()()()()()()()だけが残る」


 元々の物質に還る……と言うことか……?


「バベルの魔力は特別製だ。私たちの居た地球であれば、自然の物質に戻るだけだろうが、彼らは違う」

「七神は……違う……?」

「何故違うのか。それは、この世界自体、()()()()()()()()()()だからだよ」

「確かにそうだ……元々あったものではない……。じゃあ七神の皆さんはどうなるんですか!?」


 そしてまた、空を仰いだ。


「七神の一人でも魔力が途絶えれば、全ての七神が共鳴し合い、()()()()()()()()()()()()()()()()


 僕はまたしても唖然としてしまった。

 しかし、もしカエンさんの話が本当なら……。


「七神が世界を滅ぼす前に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()、世界が滅びることはない……」

「やはり、察しがいいね。助かるよ」


 そう微笑むと、再びハットを被って去って行った。

 この世界で繁栄している七国には、それぞれを統治する七人の神がおり、特別な力を宿す。

 世界を治めるのは世界の唯一神。七国の神と契約し、神々に力をもたらした人物。


ヤマト(主人公):風・炎・水・岩・雷・神威・神無/光剣・グローブ

カエン(龍長):神螺

ルーク:光・水


〇冥界の国


九条悟:闇・神無/刀

九条凛:神無

ナーガ:酉の仙人/仙術魔法(次元移動)神無

アゲル(闇神)

ドール(闇神の守護神)

ルイン(悪魔)

ルシフェル:カエンを召喚した天使族

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