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リメイク  作者: 春木
第七章 龍族の一味 襲来
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45話 業炎

 ヒーラさんからの治癒が終わり、僕は立ち上がる。


「大丈夫です。僕も行ってきます」


 きっと、ゴーエンには余計な世話だと怒られるだろうけど、僕もヒーラさんと約束したんだ。

 あれから三十分くらい経ってしまった。

 神の力と光魔法の移動なら、既に島に着いて戦闘が始まっている頃だろうか……。ゴーエンが強いとしても、ルークさんの光魔法はやはり特殊だし、きっと苦戦を強いられるはず。

 急がないとな……。


 -仙術魔法・神威-


 喧嘩祭りの記憶はよく覚えている。僕は、観客席まで神威で空間移動をした。

 どんな激しい戦闘が行われているんだろう……。


「なっ……!」


 しかし、僕の目に映し出されたのは、予想を遥かに超えた光景が広がっていた。


「 ゴーエン!! 」


 ゴーエンは既に膝を着き、ルークさんは無傷でゴーエンに手を翳し、既に王手を掛けていた。


 -風神魔法・ウィンドストーム-


 僕は両手を広げ、ゴーエンの前に立った。


「やあ、ヤマトくん。炎の神とはタイマンの約束をしたんだけど、邪魔盾は無粋じゃないかな?」

「なんとでも言ってください。僕も約束したんです……」


 ルークさんは、翳していた手をそっと下ろした。


「前に言ったね。()()()()()()()()()()()()()だと……」


 そう……。雷龍島のアジトで、この戦いがあることを教えてくれたのはルークさんだった。

 そして、次こそ本当に、戦う時なのだと……。


「覚悟の上です……!」


 いつもの、お調子者の笑みは消えていた。

 そして、ルークさんは徐に手を上げる。


「水龍 アーク。出撃だ……」


 そう言うと、ルークさんの背後の海水から、飛び魚と蛇を足したような長い龍が現れた。

 ()()()()使()()()()()()()()()()()してたのか……。


「ヤマトくん相手だと流石に骨が折れそうだからね。水龍の力も使わせてもらう。遊びじゃないからね」


 そこに、ブルブルとゴーエンは立ち上がる。


「気に食わないが、奴の言う通りだぜ……ヤマト……。私のことはいいから、他の奴を助けに行け……」

「でも、ゴーエン……こんなボロボロになって……」

「炎神……魔法……シャイニング……ブロウ!!」


 フラフラな中で炎魔力のエネルギーを溜め込み、僕の横を走って熱拳を繰り出した。

 威力は本当に凄い……島が震えている……のに……。


「だから、()()()()()()()……」


 そんな破壊力抜群の炎の拳を、ルークさんは片手で受け止めた。


「そんな……今の攻撃を片手で……?」

「これが俺の【光龍魔法・アゲート】だ。()()()()()()()()()()()()ことができる。そして、同時にヴォルフの使用していた【水魔法・シースルー】も発動し、常時炎の神から魔力を吸い上げている。それに炎の神は、守護神ともう一人、君の仲間に自分の魔法を付与しているせいで、既に弱体化している。それで俺と真っ向勝負して勝つなんて、土台無理だったんだよ」

「どうしてそんな……無茶なこと……」


 ゴーエンは相手の力量が分かっているはずだ。

 勝てないことだって……。


「フハハ……いいのさ。私は、所詮喧嘩しか脳のない形ばかりの神だったからね……。最後くらいは、アイツらの役に立ちたいって思っちまったのさ……」


 そうだ……。七神と会ってきてヒシヒシと感じる願い。

 

 " ()()()()()()()()()()()()()()()() "


 ゴーエンは自分一人ででも、光魔法を扱うルークさんを足止めさせることで、負担を減らしたかったんだ。


「そう言うことだよ、ヤマトくん。俺は争いは好きじゃないんだ。他の戦地へ行ってくれ。ここは炎の神の気合いに免じて、()()()()()()()()()()()()()よ」


 それでも僕は、ゴーエンの前に出た。


「それじゃあ、ダメなんです……!」

「私のことはいいんだ! さっさと……!」


 僕は、倒れ込むゴーエンの頭をそっと撫でた。


「それじゃダメなんだ……! ゴーエン……!」


 今の僕なら、きっとゴーエンとも共鳴もできるはずだ。意識をそっと、ゴーエンの魔力へと向ける。


   *


「おいおい……。日本みたいに地形は作ってみたけど、やっぱ太陽が出てないと南西も寒いな……」


 この光景は……。バベルは夜空の下、荒野で震えていた。


「ミカエル! 燃える物を集めよう! 炎魔法だ!」

「仕方ないですね……」


 アゲルは、バベルの指示通りに燃えそうな物を集め始め、一箇所に集めた。


「よし! 炎魔法・灼羅!」


 バベルの右手から放たれた火種は、一瞬にしてボワっと燃え上がった。


「焚き火みたいでいいな〜。日本を思い出すよ」

「そんなことはいいですから、早く進めましょう。南西にはどんな神を創るんですか?」


 暫く「う〜ん……」と考え込むバベル。


「あ、炎があるじゃん! やっぱ南の大陸はあったかくないとだよな! 炎の神を創ろう!」

「炎から創るんですか!? 神の性格は物の性質に反映されます。炎から創れば……どんな性格の神になるか……」

「いいじゃんか! そう言う神がいたって!」

 

 -光魔法・魂投廻生-


 そして、燃え盛る炎に向けて魔法を放った。炎は消え、徐々に人の形を帯び、ゴーエンの姿へと変貌していった。


「おお〜! 炎から女神だ! かっこいい!」

「あっと……ここは……」


 困惑気味に目を輝かせるバベルを見遣るゴーエン。


「僕が君を生み出したんだ。【業炎】の加護を付与しているから、君には炎魔法が使えるはずだ!」


 そして、ヒーラさんの時と同じ話をする。

 ゴーエンの作りたいと願った国は、『()()()()()()()()()()()』と答えていた。ゴーエンは名前はに興味がなく、付与された【業炎】の加護をそのまま名前にしていた。二人は、ニッシッシ、と笑い合っていた。

 やっぱりそうだ……。喧嘩だけが取り柄なんかじゃない……。強さだけが取り柄なんかじゃないんだよ……。


   *


「ピギャアアアアアアア!!」


 水龍の咆哮が、僕を現実世界へと巻き戻す。


「どうしてもそこを退く気はないんだね。ヤマトくん、俺ももう覚悟を決めるよ」


 そして、ルークさんは手を広げた。


「水龍 アーク。強制発動【水魔法・ドリュースト】」


 水龍の目は赤く光り、口から膨大な水のエネルギーが溜まっていく。そして、大砲のような水撃が放たれる。


 -炎神魔法・ラグマゴア-


 僕はそれを、


「炎神魔法……。()()()()()させるんだったね。でも、俺のシースルーでヤマトくんの魔力もかなり吸っている。水龍の攻撃が防げても、()()()()()()()()()よな!!」


 そして、水龍の水撃の奥から更に、手を伸ばす。


「水龍魔法・アークルイン!」


 ルークさんの手からは、見えない水撃が放たれる。


「共鳴をすると、()()()()()()()()()()()()らしいです」


 僕は水龍の水撃を、跳ね返した。


「蒸発じゃない……()()()()()!?」


 そして、ルークさんの水撃も掻き消した。その勢いのまま、僕はルークさんの眼前に迫る。


「だから……()()()()()()()()()()()()んだよ!!」


 そして、僕の振り上げた拳を防御する姿勢を取る。


「光龍魔法・アゲート!!」


 -炎神魔法・ラグマゴア × 岩神魔法・ヒルブレイク-


「なん……だっ……て……」


 僕はルークさんの掻き消す光を、溶かした。


「この業炎は蒸発じゃない。()()()()()()()んです。光だろうと、()()()()()()()()()()()()()()


 そして、即座にヒルブレイクでルークさんの腕を回復した。


「次は、回復はさせないですよ。ルークさん」


 すると、ルークさんはふわっと倒れ込んだ。


「フハハっ! 俺の負けだ!」


 ルークさんは、悔しい顔よりも、清々しい顔を浮かべていた。


「ゴーエン」

「ヤマト……すまなかった……」


 僕は、同時にゴーエンも回復をさせた。


「一つだけ間違っています。あなたが犠牲になってしまったら、楽園の国は誰も楽しめないんですよ」


 そう言うと、ゴーエンは微笑みながら涙を溢した。

◆VS 商売人 ルーク:光・水(手を溶かされ、瞬時に回復。魔法を封じられて敗北)

 ヤマト:風・炎・水・岩・雷・神威/光剣・グローブ

 ゴーエン(炎神):炎

 アーク:水龍

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