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リメイク  作者: 春木
第六章 正義の国編
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閑話 お転婆な跡取り娘たち

 俺が住んでいる屋敷の庭はいつもうるさかった。


「私の方が強くなるもん!!」

「いいえ! 私の方が背高いですから!」


 妹のルビーと、うちの家系と同じくしてこの正義の国を守る三大名家の跡取り娘、雷鳴隊のクイナちゃんだ。


「お前たち……また言い争いしているのか……」


 クイナちゃんは毎日うちの門を潜っては、ルビーを呼び出して色んな勝負を仕掛けていた。家の屋敷は広いこともあり、兵士たちの訓練も行われており、兵士たちの和やかな視線が向けられていた。


「まあ良いではないか。この様に三大名家の娘たちが安心して遊べるのも、平和と言うことじゃよ」

「爺さん……」


 若くして俺の父に隊長の座を譲った、平和主義な祖父。交戦的な雷鳴隊の現隊長、クイナちゃんの祖父とはあまり仲が良くないらしく、二人の喧嘩なのか遊びなのかを、喜ばしそうに毎日見ていた。

 正義の国、雷の神 ロズ様は、ここ数十年引きこもったままだった。俺たちは何があったか分からないが、雷の神から一番の信頼を受けている、守護神 ブルーノさんが隊長を務める風漂隊により、国の平和は保たれていた。


「今日は、あの雪山で勝負よ!」

「望むところじゃない!」

「あの雪山にはね、恐ろしい大きな剣を持った、()()()()()()()が氷魔法を使ってくるそうよ!」


 この国の言い伝え、と言うより、「雪山には氷の剣士がいる」と言う目撃情報が幾度となく報告されていた。


「お前たち! 勝手に国の外に出るな! 本当に魔物に襲われたらどうするんだ!」


 まったく……。

 俺は、駆け足に二人の後を追った。


「やっぱ、雪山の麓ともなると国内より寒いな……」


 しかし、二人はそんな姿は見せずに睨み合う。


「先に山の頂上に行った方の勝ち!」


 そう言うと、二人は駆け足の態勢を取った。雪山の標高自体はそんなに高くないし、正義の国は七国の中でも有数の冒険者を輩出している。魔物は狩り尽くされているだろうが、万が一復活していないとも限らない。


「いい加減にしろ! 魔物が出たら危ないだろ!」

「ふふん、大丈夫よ! お兄様!」


 そう言うと、ルビーは()()()()を腰から取り出した。


「見てこれ! お父様から譲って貰ったのよ! この剣を介せば、私も水魔法を放てるんだから!」

「ルビーちゃんズルい! 私、まだ武器も何も貰ってないのにー!」

「ふふ、これが期待値の差ってヤツかしらね!」


 クイナちゃんは徐に顔を膨らませていた。

 まあ、出現するとしても弱い魔物だろう。俺の岩魔法で足止めしている隙に逃げればいい……。

 そうこう考えている内に、二人のスタートは切られてしまっていたようで、全速力で山を登っていた。


「ハァ……疲れる……」


 僕も年齢が年齢なだけに、まだ門兵程度だが、既に父より次期海洋隊隊長として、今の内から経験をと兵士として雇われていた。

 しかし、基本的には二人のお守りがメインだった。何事もなく、俺たちは雪山の山頂に辿り着いた。


「ねえ、お兄様! どっちが先だった?」

「俺は後から着いて来たんだから見てないよ……」

「えぇー! それじゃあ決着付けられないじゃない!」


 ルビーは顔を膨らませると、再び剣を取り出した。


「仕方ない! 今日は私の魔法見せてあげる!」


 そう言いながら、山頂の岩に向けて剣を構える。


「水魔法・ブラッシュ!」


 ルビーの放たれた水撃は岩を通り越し、山奥の方へ消えてドコッと音を立てた。


「全然操れてないじゃない!」

「仕方ないでしょ! 剣が折れてるんだから!」


 そして、二人はまたも言い合いを始める。


「おい、言い合いは戻ってからで……」


 その時、俺は背後から大きな影を見つけた。


「二人とも! 下がって!!」


 急いで後退し振り向くと、そこには雪に弱く、活発的に活動しないはずのマウントベアーがいた。


「何故、山頂にコイツがいるんだ……」


 この時期は特に寒くなる為、マウントベアーは雪山に大きな洞穴を作って冬眠するはず……。


「さっきのルビーの魔法が冬眠を起こしたんだ!」

「え!? 私のせい!?」


 ルビーは酷く混乱した姿を見せる。

 まずい……。俺一人なら、なんとか足止めして直ぐに逃げられるけど……二人を守りながらじゃ……。

 俺もまだまだヒヨッコだ。魔物との戦闘はまだ慣れてはいない……。しかし、やらなければ最悪の事態も有り得る……。


「俺が注意を引くから、二人は急いで山を降りて!」


 二人は手を繋ぎ、恐怖心を紛らわせながらも、俺に向かって大きく頷いた。


「岩魔法・グランドレイド!」


 俺は地面に手を付け魔法を詠唱した。そして、辺り一面を少しだけ地形を崩した。

 俺の岩魔法は、手に装備してあるグローブから介し、自分の周囲の地面の一部を変えることが出来る。使い方によっては有効な場面も多いが、正直、戦闘においてはあまり使えない魔法だった。


「ガオアッ!!」


 マウントベアーは体重が重い代わりに鈍足だ……!

 俺の急な地形変化に戸惑って態勢を崩した。


「今の内に俺も逃げ……」


 逃げようと背後を向いた瞬間、水色の長髪を靡かせ、大きな剣を背に携えた女は、ルビーとクイナちゃんのことを抱えて俺の前に立っていた。


「お前が噂の…………! 二人に何をしたんだ…………!」


 しかし、女は表情を変えずに二人を下ろした。


「マウントベアーの子供に襲われてた。一匹は怪我をしているみたいだった。その親熊も危険」


 そう言うと、スルリと大剣を構えた。

 そうか……ルビーの水魔法は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……。だからあんなにも怒った様子だったのか……。


「あの、ありが……」


 俺がお礼を言おうと振り向いた途端、マウントベアーは氷付けにされてしまっていた。

 噂通り本当に()()()なのか……? そんなの聞いたことないぞ……?


「子供にこの山は危険」


 それだけ告げると、女は去っていってしまった。


   *

 

 数年後、俺は海洋隊の隊長になっていた。

 そして、暫くして、雷の神 ロズ様は、「神に一番功績を残せた者に富と名誉を与える」と宣言した。それからすぐに、風漂隊は解散されたと聞く。

 そして、あの時助けてくれた氷の剣士は、剣豪 ホクトと名を馳せ、この国で有名な冒険者になっていた。ロズ様とも親し気で、ロズ様に加担する形で雇われている様子だった。

 神の宣言の後、雷鳴隊現隊長、クイナちゃんの父上はしばしば家に来ては、まだ経験の浅い現隊長の俺に色々と功績自慢をしてきた。


「盗賊団を捕らえた」

「また付近の魔物を一掃しておいたぞ」

「海洋隊は何をしている」


 そんな重圧感に耐え切れず、俺は海洋隊の隊長から足を引いて、再び隊長は父となった。

 父も、様々なストレスを感じていたのだろう。ある時、禁忌を犯してしまった。このことは、俺と、今は亡き祖父しか知らない。

 父は、雷鳴隊隊長、()()()()()()()()()()()。そして、自分の岩魔法の()()()で、次期隊長になる()()()()()()()()()()()()()を使っていた。それは、少しずつクイナちゃんの()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だった。

 父としても、この()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だったのだろうが、祖父からの命で、俺はクイナちゃんに医者だと嘘をつき、治療することになった。父の岩の呪術魔法を解けるのは、恐らく、()()()()()()()()()()()()()()()()()()だったからだ。

 クイナちゃんは、毒を盛られたのは俺の父だと知らず、今でも慕ってお兄さん扱いをしてくれる。暫くして、風漂隊を解体した後、放浪の旅に出ていたブルーノさんは、クイナちゃんの屋敷、雷鳴隊の本拠地に居座るようになっていた。なんだか不思議なメンバーでモヤモヤした気持ちが拭えることはなかったが、平穏なこの場所が、いつの間にか俺にとっての安息の地となっていた。

 数年後、クイナちゃんの身体に張り巡らされた岩の毒は全て排除できたが、俺は海洋隊に戻りたくない理由で、ずっと専属医師を続けていた。

 妹、ルビーとの遺恨を残したまま――――。

 この世界で繁栄している七国には、それぞれを統治する七人の神がおり、特別な力を宿す。

 世界を治めるのは世界の唯一神。七国の神と契約し、神々に力をもたらした人物。


ヤマト(主人公):風・炎・水・岩・雷・神威/光剣・グローブ

アゲル(大天使ミカエル):光

カナン:炎+爆破/弓

セーカ:雷/拳+炎

アズマ:水/治癒+岩


〇正義の国

 三大名家を筆頭に、少しでも禁を犯す者を取り締まらせ、犯罪者をより多く捕まえるように示唆している。

 三大名家は争うように犯罪者探しに躍起になり、次第に協力関係ではなく敵対関係を持つようになった。


ロズ(雷の神):紛争状態になってしまった国を見て、自分自身で自分を戒め続けてきた。

ホクト(氷の剣士):氷/大剣


◆海洋隊

ルビー:水/海洋隊 隊長


◇雷鳴隊

クイナ:雷鳴隊隊長

ヴェンド:岩/クイナの専属医師・海洋隊元隊長


◇風漂隊

ブルーノ(守護神):風/物書き・風漂隊隊長

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