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リメイク  作者: 春木
第六章 正義の国編
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37話 氷の剣士

 大剣を構えた少女は、そのまま大振りで僕に躊躇なく大剣をぶん回した。


「 待て待て待て待て待て!!! 」


 -風魔法・フラッシュ-


 僕は急いで、少女の開けた穴から脱出。


「うわ……結構深かったんだな……。こりゃ、アゲルの言う通りラグマで破壊しても捕まってたかも……」


 まあでも、この深さならあの子も追って来れない。僕一人ででも、先に雷の神に会うべきか……。


「逃がさない」


 しかし、その少女は、穴が深いにも関わらず、ゆっくりと這い上がって来た。

 その足下には、


()……?」


 氷結した大地の上に少女は立っていた。

 ()()()……? そんなの七属性にないぞ……?

 しかし、僕に考えてる余裕など与えてはくれない。その少女は猛スピードで眼前まで押し寄せる。


 -岩魔法・ブレイク-


 しかし、


「なんっ……!」


 岩の防御壁はボロボロに砕かれてしまった。


「私の氷、岩より硬い」


 そう言うと、また大振りの構えを取った。

 風魔法で逃げても追われるだけ……。炎魔法で防いでも大剣まで破壊は出来ない……。水魔法の遠距離攻撃はこの間合いの速さじゃ意味がない……。岩魔法は砕かれる……。

 それに何より、今、僕の武器は()()()しかない……。


「ヤマト! ()()()です!!」


 地下からアゲルが声を上げる。

 雷魔法……()()()()()()()()ってことか……? どんな魔法か分からないのに……。

 そして、少女は眼前に迫る。

 いや、迷ってる場合じゃない……! やるしかない……!


 -雷魔法・サンランド-


 僕の手から黄色い雷光が放たれる。

 やはり攻撃魔法……この子、大丈夫か……!?

 しかし、その雷光は少女を()()()()だった。


「あれ……? ダメージ喰らってない……?」

()()ですね」


 卑怯……? どう言うことだ……?


「まさか、雷の()()()()が使えるとは」


 拘束魔法……!? 雷魔法は激しい火力が欲しかったが……。まあこの状況じゃ九死に一生を得たか……。


「で、なんで僕を襲ったの? 初めましてだよね?」

「それが望み。叶えるだけ」


 そう言うと、大剣を静かに背中に戻した。

 やはり大剣そのものは武器、その周囲に()()()()()()()()()()()()()()()()()()んだ。

 無表情で、クールで寡黙な女の子だった。


「逃亡者がいたぞー!!」


 そこに、何人もの兵士たちが駆け付けてきた。


「や、ヤバい……! 僕は逃げるけど、君、もう僕のこと襲ってこないでよ! 人違いだから!!」


 そう言い残し、僕は姿を眩ませることに成功した。


「ハァ……。あと五日……どうすればいいんだ……」


 アゲルは捕まったまま。

 派手に動いても、もしかしたらまたあの少女に狙われるかも知れない。それに、逃亡者として兵士たちには僕の情報は漏れているらしく、もう表の道はほとんど歩けない……。


「お困りのご様子ですね……」


 路地裏に密かに座っていたのは、根暗そうな不気味な雰囲気を醸し出す男性だった。


「えっと……貴方は……?」

「僕はブルーノと言います。一応、物書きでして……。へへ……結構、僕の作品、人気なんですよ」


 なりたくない大人ランキング上位に上がりそうな人だけど、こんな裏路地裏にいる物書きさんなら大丈夫そうだ。

 しのごの言っている暇はない――――。

 僕は、ゴクリと息を飲み込んだ。


「どうか……ご飯を恵んでください!!」


 綺麗な九十度のお辞儀だ。……まさか、こんな場面でこの技を使うことになるとは……。


「ぜ、全然いいですけど……」


 ブルーノさんは、さっきまで不穏そうな雰囲気を醸し出していたのに、困った顔を浮かべていた。


「ここの屋敷に住んでるんです。どうぞ上がってください」


 その屋敷は、どう見ても周りの屋敷とは一味違う、大きな役人のような家だった。


「あら? ブルーノさん、帰宅されました?」


 中から出て来たのは、煌びやかな和装を着た、僕より少し年上くらいの女性だった。


「あら! お客さんじゃないですか! 先に仰ってくださいよ!」

「あ、初めまして……。旅人のヤマトと言います……」


 威厳のある佇まいに圧倒され、仰々しく頭をペコペコと下げた。


「彼女はクイナ。この国の()()()()の一人娘さんだ」


 やっぱり偉い人だった……。


「持ち上げないでください! ブルーノさんも、この国では有名な物書きさんなのです。三大名家とは言いますが、そのどこにでも雇われてるベテラン冒険者さんでもあるんですよ」

「す、すごい人なんですね……」

「いやぁ……まぁ……」


 そう言うと、ニヤニヤと笑い出した。


「なーんか騒がしいね」


 すると、また中から一人、オレンジの髪をした白衣の男の人が現れた。


「あ、ヤマトさん! こちらは私の専属医師のヴェンドさんです!」

「どーも! お医者さんでーす」


 ちょっと雰囲気がカズハさんに似ている人だった。

 そして、僕はそのまま夕食を頂くことになった。


「え!? ()()()()に襲われた!?」

「はい……いきなり……。顔も知らないのに……」


 三人は徐に俯いた。

 やっぱり、何か問題のある子なんだ……。


「彼女はこの国では三大名家よりも有名でしょう。氷の剣士、剣豪ホクト。雷の神に仕えている訳ではないのですが、()()()()()()()()()()()()とか……」


 思想が同じで手を組んでる……。

 嫌な予感が頭を過ぎる。


「その、雷の神の思想ってなんなんですか……?」


 クイナさんは少し俯いた後、僕を見遣る。


()()()()()()()だと、私たち三大名家を競わせ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と……」


 正義の国……段々と見えて来たような気がする。

 取り締まりの厳しい兵士たち。三大名家の存在。そして、雷の神の強い思想――――。

 この正義の国は、少しでも多くの犯罪者を見つけ、神に証を見せる為に躍起になっているんだ。


「きっとあなた方を捕らえたのは、この国で一番躍起となっている海洋隊(かいようたい)でしょう。頭に藁の傘を被ってませんでしたか?」

「藁の傘……全員被ってました!!」

「やはり……海洋隊の兵士さんたちも、みんな報酬欲しさに躍起になって取り締まっているのです」


 この困った表情を見るに、きっとクイナさんのこの家は乗り気ではないのだろう。


「取り敢えず、ヤマトくんはその海洋隊に捕まった仲間を救出に行くんだろ? 手伝うよ」


 そう言ったのは、医師のヴェンドさんだった。


「俺は岩魔法の使い手でな、()()することができる」

「へ、変身!? 凄いですね!」

「フハハ、そうだろ! 明日見せてやるよ!」


 そうして、僕はこのまま、この家、雷鳴隊(らいめいたい)本部にしてクイナさんの家に寝かせてもらえることになった。


   *


「ロズ」


 コトン、と小さな足音がする。


「ホクトか、何の用だ」

「異郷者を見つけた。正義の国に来た」


 ロズと呼ばれた大柄の男はホクトを睨む。


「ならば……殺せ……」


 ホクトは背を向ける。


「私に命令するな。殺しはする」


 そして、ホクトは去って行った。


「いいのですか!? ロズ様!! ()()()()()あの様な不遜な態度!!」

「まあ良い……。彼女は機械みたいなモノだ。それより、海洋隊には期待しているぞ……?」

「も、もちろんです!! 海洋隊、ルビーの名に置いて、必ずやその異郷者を再び捕えてみせます!」


 そして、青髪の女性は去って行った。


「異郷者……遂に来たか……待っていた……」


 雷の神 ロズ。

 正義の国で三大名家を競わせ、絶対正義を重んじる男。

 そして、()()()()()()()()()――――。

 この世界で繁栄している七国には、それぞれを統治する七人の神がおり、特別な力を宿す。

 世界を治めるのは世界の唯一神。七国の神と契約し、神々に力をもたらした人物。


ヤマト(主人公):風・炎・水・岩・雷・神威/光剣・グローブ

アゲル(大天使ミカエル):光

カナン:炎+爆破/弓

セーカ:雷/拳+炎

アズマ:水/治癒+岩


〇正義の国

 三大名家を筆頭に、少しでも禁を犯す者を取り締まらせ、犯罪者をより多く捕まえるように示唆している。

 三大名家は争うように犯罪者探しに躍起になり、次第に協力関係ではなく敵対関係を持つようになった。


ロズ(雷の神)

ホクト(氷の剣士):氷/大剣


◆海洋隊

ルビー:海洋隊 隊長


◇雷鳴隊

クイナ:雷鳴隊の屋敷に住む跡取り娘

ヴェンド:クイナの専属医師

ブルーノ:物書き

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