34話 因縁Ⅱ
ヴォルフは、怒りのまま僕に爪を立てる。
これは、ダンさんとの戦いで見せた見えない爪……!
-岩魔法・ブレイク-
バコン! と音が鳴り、岩は軽く削れた。
やはり、見えなくても防げれば問題ない……。
「僕をあまりナメないでもらえるかな……!!」
ヴォルフは、僕が防ぐことを知っていたかの様に、目の前に飛び掛かって来ていた。
しかし……
-風神魔法・ウィンドストーム × 炎神魔法・ラグマゴア-
僕はそのまま背後を取り、爪の装備を破壊した。
「なんで……そんなに……強くなってんだよ……」
「ごめん……。僕も遊んでた訳じゃない。沢山の想いを託されて旅をしているんだ」
罠に嵌められたかと思ったが、ヴォルフが向かって来てもカエンとルークさんは参戦せず、ヴォルフがやられる様をただただ見ていた。
こうして、僕とヴォルフの戦闘はすぐに収束した。
「セーカ……。私が攻撃魔法を使えないと言ったのは、アレは嘘だ……。お前に勝ち目はない……」
セーカは、まだ想いを捨て切れずにはいない。ずっと殺したかった相手は、自分の命の恩人だった。そんな殺伐とした感情が蠢いているのだ。
「決めたって言ったでしょ……。私は迷わない……!」
セーカは両手をバチバチと光らせる。そして柴色の光を放ち、ドレイクに掴み掛かった。
「雷魔法・ビライト!!」
激しく掴まれた両手から、雷が放電される。
しかし、
「なんだ……あの姿は……!」
「おやおや……荒々しい魔力の使い方だ……。外装が破れてしまったじゃないですか……」
ドレイクの皮膚は服の様に破れ、中から出てきたのは、まるでロボットの様な鋼鉄の人体だった。
「私に雷は通じません。この身体は……研究の成果です。炎魔法以外、私の身動きは止められません」
そう言うと、ドレイクは指をクイクイと動かす。
「お……おい……まさか……!!」
カナンは、意識を失くしたかの様にドレイクに向かって歩いて行った。
「カナンを洗脳に掛けたのか……!!」
「カナンちゃん!!」
セーカも酷く動揺している姿を示した。
ダメだ……元より鋼鉄に雷は効かないのに、カナンまで盾にされたらセーカに手出しは出来ない……。本当に用意周到な男だ……。
「カエンさんに免じて、他の方達が私の邪魔をしたことは不問にしてあげましょう。私も自由の国では中々に愉しめましたしね……。しかし、セーカ。貴女はそろそろ目障りだ……。貴女だけは殺しておきましょう」
そう言うと、ドレイクは両手を上げた。
「私の洗脳魔法が、あの程度と思わないことです」
ドレイクの指の動きに合わせ、カナンは動き出す。
まるで操り人形じゃないか……!
「セーカ……僕がカナンを……!」
「おっと」
僕が戦闘に加わろうとした瞬間、僕はルークさんに制されてしまった。
「俺たちも君たちの邪魔しなかったんだ。二人は因縁の間柄なんだろ? 邪魔立てはよそうじゃない」
クソッ……!
既にカナンを操っているだろ……と言いたいが、それがドレイクの戦い方なんだ。タイマン自体に変わりはない……。
「確か、この娘の魔法は爆破する弓でしたか……。それじゃあこの施設内では使えませんね。まあ、詠唱できない時点で魔法操作までは出来ないのですが、人質なだけでいいです」
そう言うと、カナンを自分の身体に密着させた。
「これで、貴女が攻撃してしまうとこの娘にまで電撃が走ってしまいますね……。大人しくしていなさい」
そして、指を向ける。指の先には穴が開いていた。
「雷魔法・ショット」
シュンッ! と飛び出た雷撃がセーカに当たる。
「威力は弱いですが、じわじわ痛め付けるには良い攻撃でしょう……。ガンマさんから、時には愉しむことも教わりましたからね」
そして、また指を向ける。
「雷魔法・ショット」
また、身動きの取れないセーカに小さな雷撃が当たる。
「ウグっ……!」
そして、セーカは膝を着いてしまった。
惨すぎる……。
そんな中、フラフラと大人カナンさんがセーカの前に現れた。
「カナンさん!? 何してるんですか!?」
「ちょ、ちょっと! 危ないじゃない!!」
しかし、大人カナンさんには聞こえていない様だ。
ルークさんがボソッと囁いた。
「あの人も……洗脳に掛かってるね」
「え……誰の……?」
ドレイクは対象の一人にしか洗脳は掛けられない。
目を瞑ったまま、大人カナンさんは地に足を付けたセーカの手を握った。
「まさか貴女も洗脳魔法が使えたとは……。まあ、今更何をしたところで勝算なんてないですが……」
すると、セーカに嵌められていたリングが赤く光り始めた。
「何よ……これ……」
あの指輪は、守護の国で大人カナンさんに買ってもらったと自慢していた指輪だ……。
セーカも困惑した表情を浮かべている。
そして、そのまま大人カナンさんは元の位置にフラフラと戻って行った。
「なんだっ……たんだ……?」
しかし、セーカは笑っていた。
「どうしました? 頭でもおかしくなりました?」
そしてそのまま立ち上がると、徐に背中に携えていた弓矢を構えた。
「バカ……! 放電するぞ……! 雷撃が当たればカナンにダメージが……!」
しかし、セーカの目は真っ直ぐドレイクを捉えていた。
「炎魔法・ボムロット 分散」
そして、放たれた矢は炎を纏い分散し、綺麗にカナンの周囲の鋼鉄に穴を開けた。
あの魔法……カナンが使ってた攻撃……!?
そのままセーカは柴色に光らせ、カナンが態勢を崩している間にドレイクに矢を向けた。
「このまま、あなたを倒します」
またしても、覚悟を決めた目をドレイクに向ける。自由の国の時と、同じ目だ。
「雷魔法・ショット!!」
セーカの脅しに対し、直ぐに両手の指の全方向をセーカに向けると、今度は大きな雷撃を放った。
ギリギリのところでセーカは交わし、二人は再び対面する状態となった。
「炎魔法……どうしてお前が使えるんだ……! クソが……また計画の邪魔をする気か……!!」
「もう迷わないと決めたんです。兄さん……!!」
そうして、再び弓矢を構えた。
「セーカ、凄いことを教えてやる……」
すると、ドレイクはニタニタと表情を歪ませる。
「私はお前の兄でもなんでもない! お前を育てた親も全て、私の洗脳で見せていた偶像なんだ!!」
そう言うと、高らかに笑い声を上げた。セーカは、力が抜けたのか弓を落としてしまった。
「お前を拾ったことも、育てられたことも、私が兄なことも全て……私が見せていただけだ!! バカめ!! 楽園の国に捨てたのも私だ! 全てこの時の為に!! 用意周到な私はお前の記憶を全て書き換えていたんだ!!」
「そん……な……。何の為に……そんな酷いこと……」
セーカは、既に放心状態だった。
「アハハハハ! それじゃあゴミの精神を破壊した所で皆さん始めましょうか!! 龍の魔力を全て私たち一味に注ぐショーを!!」
そして、徐にパソコンを弄り始める。
龍の膨大な魔力を……一味に注ぐ……!? そんなことしたら、本当に七神に及んでしまっ……。
「ショーの中身はそうじゃない、ドレイク……」
その男は、突如として地面から現れ、そのままドレイクを掌で突き刺した。
「ガンマ……さん……? どう……して……?」
「本当はその子の力量を測り、君を倒せるくらい成長していると期待してたんだが、精神攻撃で放心状態か……」
そして、カエンとルークさんも動き出す。
「君もだよ、ヴォルフ……」
カエンが呟くと、ヴォルフの姿は消え、エネルギー体に放り込まれていた。
「君のやり方は本当に……愉しくない……」
そう言うと、ガンマと言う男はドレイクを影の中に落とし、ヴォルフと共にエネルギー体に落とされた。
「それじゃあ始めましょう。本当のショーを……」
カエン、ルークさん、ガンマの三人は、エネルギー体の真ん中に並んだ。
□龍族の一味 アジト潜入班
ヤマト・エイレス(大和ヤマト):風・炎・水・岩・神威/光剣・グローブ
セーカ:雷/拳
カナン:炎+爆破/弓
大人カナン
◆龍族の一味(雷龍島アジト内)
カエン(龍長):炎
ドレイク:雷(洗脳)
ヴォルフ:水/爪
ガンマ:闇(幻影)
ルーク




