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リメイク  作者: 春木
第五章 カナン奪還編
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32話 雷獣サンドラ

 アズマさんは今にも押し潰されそうだった。


「早く逃げてください!! 貴方は、魔法攻撃は防御できても、()()()()()()()()()()()!!」


 しかし、歯をギチギチと僕を必死に守る。


「アゲルってよぉ……いつもヤマトのことばっかで……目的のことばっかでさ……」

「はい……だって、僕たちはこの世界の救済を……」


 そして、僕に向かって叫んだ。


()()()()()()()()なんだよ!!」


 そして、魔獣サンドラを投げ飛ばした。


「どう……なって……」


 ふと見ると、アズマさんの両手には大量の水の魔力が集められていた。本人はアドレナリンが出ていて気付いていない。

 しかし、攻撃魔法は使えないはずじゃ……。


「そんなデカい図体してんのに、力は大したことねぇんだなぁ! 魔獣さんよぉ!!」


 そして、魔獣サンドラを指差した。決して腕力が弱いなんてことは絶対に有り得ない。


「セーカより腕力は劣るけどな……一応ヤマトよりかは腕力はあるんだぜ……。これなら、俺一人でもコイツに勝てちまうかもなぁ!」


 そして、アズマさんは両腕を顔の前に出し、ボクシングポーズの構えを取った。

 そんなはずはない。いくらセーカさんが炎の神に育てられた怪力だとしても、魔獣なんかの腕力と比べたら人間との筋肉量が違いすぎる……。


「ガアアッ!!」


 魔獣はまたも咆哮を上げる。


「アズマさん! 避けてください! ()()です! 落雷は魔法じゃないから防げない!!」

「ヤバっ……!」


 雷の速度に人間が敵うはずがない。


「なん……だ……こりゃ……」


 アズマさんに降り注ぐはずだった落雷は、頭上で方向を変え、地面に降り注いでいた。


「ジャジャーン!」


 すると、水の神 ラーチは座り込む僕に並ぶ。


「守護神 ()()()()()()()()()だよ!」

「でも……ロロさんの雷魔法は洗脳では……?」

「ちょっと違うの! 洗脳じゃなくて脳に信号を送ってるだけだからね! ()()の方が近いかな!」

「わ、私も役に立てましたか……?」


 恐る恐るロロさんも僕に並んだ。

 ロロさんの雷魔法は、電波させること。蓄電場所を設置し、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。

 水の神 ラーチは、そのまま座り込んだ。


「さーて、僕たちに出来ることは本当に()()()()()()になっちゃったね。あの人、あんなに強かったんだ」


 いや、アズマさんは強い人ではない……。


「君ー! 僕たちで落雷の方は防御するから、全力でその魔獣ぶっ倒しちゃってよー!」


 手を振りながら、ラーチは声を掛けた。


「マジっスか! なら全力で殴ってみます!」


 そう言いながら、アズマさんは笑顔を見せた。

 そして、一気に魔獣へと駆ける。


「無理です……! さっきのがたまたまにせよ……魔力量にだって限りがある……ここは一時撤退を……!」


 しかし、アズマさんは、


「ガアアッ!!」

「オラァッ!!」


 魔獣サンドラの雷を帯びた拳をただのパンチで殴り返し、そのまま尻を突かせた。


「何が起きているんだ……?」

「ハハッ! 俺って意外と力あるのかな!」


 そして、勢いのまま魔獣へまた駆け寄った。

 さっきよりも足が速くなってる……!? どう言うことだ……アズマさんに一体何が起こってるんだ……!?

 アズマさんの足には、拳と同じように水の魔力が集められていた。

 しかし、こんな魔力の使い方……すぐに……。最悪、魔力の底を知らないアズマさんは、自分の許容量も知らずに死んでしまうかも知れない……!

 そして、何度も魔獣サンドラの激しい殴りや蹴り、更には落雷までもその足で避けてみせた。


「ハハっ、すごいすごい! 水を得た魚だ!」

「ラーチ……!?」


 よく見ると、水の神 ラーチは、魔力切れを起こさせないように自身の水魔力をずっと流していた。


()()()()()()()()()()()、だもんね?」


 そう言うと、ニヤッとラーチは笑みを向けた。

 役立たずは……僕だけになってしまった……。

 その後も、アズマさんは魔獣サンドラを圧倒して殴り続けるが、致命傷に至らせることが出来なかった。

 魔力の方は、水の神 ラーチから膨大に注がれている為、切れるということはなかったが……。


「ハァハァ……まだ倒れないのか……」


 元々戦闘に参加しないアズマさんは、もう息も絶え絶えになってしまっていた。


「なあ、アゲル……いい策でもねぇかな……」

「なんで僕なんですか……僕なんか……」


 すると、アズマさんは珍しく怒った顔で僕の胸ぐらを思い切り掴んできた。


「さっきも言っただろ!! 仲間だからだ!! こっちは頼り切りなんだよ!! ()()()()を!!」


 そして、静かに僕を離す。


「あとその、アズマ()()っての、やめてくれよ。俺たちは仲間なんだろ……んで、協力して世界救うんだろ!!」


 何を言っているんだ、この人間は……。ヤマトと僕は特別な存在なんだぞ……。


「何ニヤけてやがんだよ……こっちゃ怒ってんのに」


 ニヤけてる……? 僕が……? 本当だ……この人間の戯言が面白かったか……?

 バベル様の記憶が、スッと脳に過る。


   *


「ミカエル、お前は僕の従事者なんかじゃないぞ。僕たちは仲間なんだ!」


 はぁ……皆さん、まるで分かっていない。バベル様も……何も分かっていない。

 僕は……。


   *


「アズマ、よく聞いてください。あの魔獣サンドラは、()()()()()()()()()()です。水は雷に対して圧倒的に分が悪いです」

「じ、じゃあどうすれば勝てるんだ……?」


 ああ、本当だ。僕はいつの間にか楽しくなってしまっているんだ。

 この旅が――――。


「僕に策があります。アズマに、()()()()()()()()()

「岩の魔力……? そんなこと出来るのか……!?」

「思い返してください。ヤマトはまだ光魔法を扱えないのに、光剣を振るうことで、光魔力を一部ではありますが、使用して戦闘することが出来ています」


 アズマは、混乱した様子を露骨に示す。


「ふふ……貴方に賭けてみましょう。まさか魔獣をたった一人の人間が倒せるなんて奇跡ですからね……」

 そして僕は、光槌(こうづち)をその手に出現させた。


「なんだこれ……光の……トンカチか……?」

「そうです。ただ一つ、ヤマトに渡している物と違うのは……()()()()()()()()()()()ことです」


 アズマは光槌を受け取る。


「こんな小さいトンカチで勝てんのか……?」

「僕たちの勝利条件は殺すことじゃない。あの魔獣を()()()()()()()()()()()です。魔獣の脳天に光槌をぶつけたら、いつもの様に思い切り魔力を放ってみてください」


 アズマは僕を信じ切った目で小さく頷いた。


「アズマ! 落雷が来ます! ロロさん!」

「任せてください……!!」


 ロロさんの雷魔法で落雷を防ぐ。


「脳天にぶつける為にはジャンプ力が必要です! ラーチ、水魔力を存分に注いでください!」

「分かったよー!」


 ラーチは目に見える程のエネルギーを両手で注ぐ。

 目眩しにはなるか……! 他の人にはダメージを与えないくらい魔力を絞る……。


「光魔法・ブラックヘル!」


 魔獣サンドラは、視界にいきなり光が差し、目を両手で覆った。


「今です! アズマ!!」

「オッラァァ!!!」


 体勢を崩した魔獣サンドラの直前で、足に集中させた水魔力でアズマは思い切り飛び上がる。

 そして、サンドラの脳天に光槌をぶつけた。


「そのまま魔力放出をしてください!!」

「信じてるぜ……アゲル……!!」


 笑いながら、アズマは思い切り魔力放出をした。小さな光槌に触れた箇所から、魔獣サンドラを分厚い岩がゴツゴツと包み、次第に覆った。


「すげえ……本当に岩が出ちまった……」

 

 呆気に取られながらも、ニカっと笑い、僕たちにピースサインを送るアズマ。

 まったく……本当に世話が掛かるな。

◆VS 魔獣サンドラ:雷龍を守護する魔獣。

 アズマ:水/防御・治癒/光槌により岩

 アゲル(大天使ミカエル):光

 ラーチ(水の神):水

 ロロ(水の神の守護神):雷(電波)

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