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リメイク  作者: 春木
第四章 守護の国編
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27話 時空

 次に目が覚めたのは、翌々日の昼間だった。二日も目を覚まさなかったらしいが、治癒魔法を施されたらしく、心配はあまりされず、逆に大人カナンの登場にみんなは夢中になっていた。

 あんなに守護の国の為に頑張ったのに……と、少しだけ不貞腐れている。

 僕たちは守護の国 騎士団本部の会議室の一室を借り、パーティメンバーとリオラさん、そして大人カナンを含めた六人で話し合いをしていた。


「それで、僕が起きた時に誰も医務室にいなかった訳だけど、何か話に進展はあったんだよね?」


 僕は全員に鋭い目付きで問い掛ける。大人カナンを今すぐにでも言及したいところだが、アゲルの性格なら、僕が寝ている間に話を進めてるはずだ。


「ヤマトが再び気絶する前にも言ったことなのですが、ひとまず()()()()()()()()()()()()()()だそうです。どうやら()()()()()()()()のようで、手荒なことはまず間違いなくないと。ですので、別段焦る必要はないそうです」

「大人カナンさん……? は……どうやって出現したの……?」


 すると、大人カナンさんは口を開く。


「今、事情を説明してしまうと、()()()()()()()()()()()をもたらしてしまう為、そこは言えません」


 納得の行かない僕だが、何故か他のみんなはそれを平然と受け止めている様子だった。そんな、納得の行かない僕の表情を読み取ってか、アゲルは大人カナンさんの言葉に追説する。


「ヤマトが納得できないのも無理はないです。そして、他のみんながどうして納得出来ているのか、説明します」


 そう言うと、ノックも無しに扉が開かれた。中に入って来たのは、猫耳の目付きの悪い少女。


「誰……だ……?」

「この方は、ヤマトが会いそびれていた、寅の仙人 ディム様です」


 すると、ディムは僕の前の机の上に飛び乗る。


「主じゃな? ()()()()()()()()()()()()というのは……」

「は、はい……。そうですけど……」


 全員に緊張が走る。ディムの目は閉じられ、そして開かれる――――。


「私を今から楽園の国に連れて行ってくれ! あそこの酒屋にはとても芳醇な香りの美酒があるのじゃ!」


 そして、全員が呆気に取られた。リオラさんが慣れた手付きでディムを抱き、机上から下ろすと自分の隣に座らせた。


「ディム様、それよりも()()()のお話を……」


 どうやら、仙人 ディムの来訪は予定されていたものだったらしい。


「そうか。今ここにいるその女は、()()()()()()()()()()()()()だったな。話してやろう」


 多分、他のみんなはこの話を聞いてるから、大人カナンさんの何も言えないって主張に頷けるんだ。

 僕は、ディムの目をしっかりと見つめた。


「なんじゃ? この人間は。真面目すぎてつまらんな」

「え、えぇ……?」

「何か一発ギャグの一つでもしてみろ。そうしたら話してやるわ」


 急な無茶振りだ。なるほど。僕もようやく、ガロウさんが会わずに帰って行った理由が分かった。しかし、僕には取っておきの一発ギャグがあった。

 ぶちかますぜ……。


「皆さんお馴染み! 岩の神! カズハさんの真似をします!」


 岩の神 カズハさんであればここにいる全員が知っている。そして、僕にはギャグセンスはない為、ここは物真似で乗り切ろうと思ったのだ……!

 僕は立ち上がり、中腰になる。


「ふぁ……あれ、もうお昼〜? アリシアちゃ〜ん、ちょっとここの見張り替わってよ〜」


 実際に気怠そうなカズハさんを見ていた、アゲル、セーカ、アズマ、リオラさんはプスっと吹き出した。

 よし……! 成功だ……!


「あ……と、ヤマトくん……何してるんだ……?」


 はい、お決まりのご本人登場。

 仙人 ディムの来訪に時間を合わせ、岩の神 カズハさんと、守護神 アリシアさんも呼んでいたようだった。

 しかし、最初僕の物真似で笑わなかったディムは、途端に腹を抱えて笑い出した。


「アハハハハ! アハハハハ! ()()()()()じゃ! コイツの戸惑っている顔は面白いのぉ! アハハハハ!!」

()()()()()……? お、おい、アゲル!」

「ち、違います! なんでもかんでも、僕だと思わないでくださいよ……!」

「じゃあ誰が……?」


 すると、僕らの部屋の外、廊下から、ディムと同じ笑い声が響いた。


「え……?」


 そして、ディムの顔はまた僕を見遣る。


「今のは()()()()()じゃ。ワシの仙術魔法は()()()()が出来る。タイムスリップってヤツじゃ。そして、ワシが主の戸惑った顔が面白いと聞いたのも、未来のワシじゃ」


 そして、様々な事柄が腑に落ち始める。


「ワシの仙術魔法は、()()()()()()()()()()()()できる。しかし、未来を変えることは出来ない。その為、その女の口からは何も言えないと言う訳じゃ」

「でも、未来を知ったら無理矢理にでもその行動をしなければ未来は変えられるんじゃ……。この守護の国も、カナンのことも守れたんじゃ……!」

「ヤマト、落ち着いてください。続きがあります」

「うむ。未来を変えられない理由はただ一つ。変えられないのではなく、()()()()()()()からじゃ」

「世界が……崩落……? じゃ、じゃあ……仙人様は未来に何が起こるか分かってるんですか!?」


 暫くの静寂の後、ディムは笑った。


「本当にバカじゃの。未来の行く末を教えたら、未来が変わるに決まっているじゃろ。言えぬわ」


 あ、あぁ……そうか……。


「使用者のワシは、ワシ本人と接触ができ、話すことも可能じゃ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()からの」


 少しの沈黙の後、僕は一つ疑問に思った。


「少し話が逸れるんですけど、今、岩の神のカズハさんが居ます。僕と同じ異郷者である貴女なら、岩の加護を受け、僕みたいに岩神魔法も使えたりするんですか?」

「それは無理じゃ。何故なら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()からの。主は()使()()()()()()()()があったから加護を受けられる。まあ、その代わりにワシらは七属性でもない仙術魔法が使えたのじゃがな」

「じゃあ、僕が仙人様から仙術魔法を頂いて、過去や未来に行くことは可能なんですか……?」

「無理じゃ」

「どうして……? ガロウさんの神威は使えるのに……」

()()()使()()()()()()じゃろうが、主では()()()()()()()()()()()する。だから教えられん」


 そうか、未来を知っていたのに空から落下して呼吸困難になっていたリオラさんを助けなかったのも……。


「って、そういえばリオラさん無事じゃ……!?」

「ああ、それはワシが助けたからじゃ」

「未来を変えたらいけないんじゃ……?」

「最初からそういう未来だった。リオラは運が良かった。それだけのことじゃ」


 淡々と過ぎていく()()と言う新たな問題。大人カナンさんが自分の事情を話せないのは、もう飲み込むしかない。

 なら、最後に話すべきは……。


「どうすれば、カナンを助けられますか……?」


 すると、大人カナンさんが立ち上がった。


「それは私が案内できますよ。場所は分かります」

「ど、どこですか!?」

()()です。船に乗るか、ヤマトが神威で皆さんのことを繰り返し送るか……」


 そこに、カズハさんが割って入る。


「あ、それなら国で飼育してるフライドラゴンに乗って行くか? ヤマトくんには、何か礼をと思ってたんだ!」


 カズハさんはニカっと笑ってみせた。僕と交戦したことも、もう吹っ切れたようだ。流石は岩の神だ。


「フライドラゴンってなんですか?」

()()()()()()()()だ。フライドラゴンは調教しやすくて移動手段に使う国もある」

「今までそんな龍見たこと……」

「ああ、使っているのは冒険者をよく外に送り出している、ウチと正義の国くらいだからな」


 そして僕たちはしっかりと身体を休ませ、翌々日の正午、カナン救出に向かうことになった。

 この世界で繁栄している七国には、それぞれを統治する七人の神がおり、特別な力を宿す。

 世界を治めるのは世界の唯一神。七国の神と契約し、神々に力をもたらした人物。


ヤマト(主人公):風・炎・水・岩・神威/光剣・グローブ

アゲル(大天使ミカエル):光

カナン:炎+爆破/弓

セーカ:雷/拳

アズマ:水/治癒


〇守護の国

 セキュリティが強固で、国の周囲全てが岩盤で覆われている国。兵士教育が盛んで、兵士たち自らが交代で次代の生徒たちの指導をしている。


カズハ(岩の神):岩

アリシア(騎士団長/守護神):闇

リオラ:闇・寅の仙人 ディムに仕えている者。

ディム:寅の仙人。仙術魔法により時空移動が可能。

大人カナン:カナンが連れ去られた後、急に現れた大人の姿のカナン。


●龍族の一味

カエン(龍長):炎

ドレイク:雷・洗脳

ガンマ:闇・幻影

炎龍

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