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リメイク  作者: 春木
第四章 守護の国編
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23話 龍の襲来

 アリシアさんは、全ての鎧を消すと、軽装になって僕たちのことを案内した。予想通り、黒い鎧は全て魔法で創られたものだった。


「さっきの試合なんですけど、例えば()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だったんじゃ……」

「いえ、戦わない選択をするへっぴり腰なんて、岩の神に会わせるわけないじゃないですか」


 そう言うと、アリシアさんはニヤッと笑う。


「でも、私すらをも打ち負かす脅威もまた、会わせるわけにはいきません。()()()()()()()()()()()()()で本当は合格にしようと思っていました」


 途中棄権もまた、敗北宣言みたいなものか……。何はともあれ、よかった。あのままじゃ、アリシアさんを打ち負かしてしまうところだったから――――。


「それより、アゲル! ()()()ってなんだ!? 初めて聞いたぞ! そんなものがあるのか!?」


 すると、驚くようにアゲルは答えた。


「いやいや、ヤマト。光魔法があるんですから、闇魔法も存在して当然だとは思わないんですか!? 光と闇は対になるものです。光があれば闇もあるのですよ」


 確かに……光があるなら闇もある……か。腑に落ちてしまってなんだか悔しい。


「って……あれ……?」


 アリシアさんに着いて行くと、僕たちは一番最初の入国審査の元まで戻って来てしまった。


「ここ、入国審査の国の入り口ですよね?」

「はい、こちらに岩の神はいますよ?」


 すると、一つの部屋をコンコンと叩いた。そして、中から欠伸をしながらのそっと男が出て来た。


「あ、騎士団長様だ。お疲れ様で~す」


 ん? この声……。


()()()()()()()()()()()()の方ですよね!?」

「ああ、日本とかよく分かんないこと言ってた君か!」

「よく分かんないこと言ってた人を通さないでください!」


 そう言うと、アリシアさんは男の頬を捻った。


「いたたた、アリシアちゃん痛い……」

「えっと……で、こちらの方が……?」

「はい、岩の神 カズハ様になります」


 守護神が騎士団長で、神は受付兵……?


「あー、そういや君は俺に会いたかったんだよな。ちょっと入国の人多かったから、最初アリシアちゃんのところへ向かってもらおうと思ってな、すまんすまん!」


 そう言うと、悪びれもなく手を合わせた。

 なんだか、岩のカチカチした想像とは真逆の、風のようにフワフワした感じの男だった。


「じゃあ、君が()()()()()()()()()()()()()()()()でいいんだな?」

「はい、既に風・炎・水の神たちと会って来ました」

「うわ! ゴーエンに会って来たのかよ! アイツ怖かっただろ〜!」


 岩の神 カズハさんは、他の神たちとも仲が良さそうで、今までの旅路を楽しく話すことが出来た。


「あ、そうだ。今夜はウチ泊まってけよ。まあ、ウチって言っても騎士兵の宿屋なんだけどな! あ、ちゃんと女の子は女性騎士の部屋があるから安心してくれ!」

 

 そう言うと、騎士団総本部の奥へと案内し、僕たちを男女に分け、僕とアゲル、アズマの三人は、カズハさんの案内の元に男部屋へと入って行ったのだが……。


「よっしゃあ! 俺の勝ちだ! イッキ! イッキ!」

「ガハハハ! お前ら、休憩の兵士はちゃんと休憩しなきゃダメだろ~!」


 中では、上裸の男たちが腕相撲大会を開き、酒瓶がゴロゴロと転がっている騒がしくむさ苦しい場所だった。


「あ、カズハさん! 腕相撲しましょうよ!」

「いんや、今日は客人が来てるもんでな。お前ら、少しは片付けておくんだぞ!」


 そう告げると、綺麗な場所に僕たちの荷物を置かせてもらい、僕たちは一度部屋の外へと出た。


「むさ苦しいところでごめんな〜」


 ヘラっとカズハさんは片手を上げた。

 昔はこういう空気は凄く苦手だったが、旅をして行く内に少しだけ、愉快な気持ちになれた自分がいた。加われと言われたら流石に抵抗はあるが……。

 すると、本部の最上階へ行き、更に展望台へと案内してくれた。そこからは守護の国全域が見渡すことができ、上から見るとすごく整った綺麗な街に見えた。


「おかしいと思ったか? 守護神が騎士団長を務めてて、神の俺は下っ端の受付兵。まあ受付兵も交代制だから、傭兵したり学校の先生したりしてるよ」


 そう言いながら、カズハさんは街を眺めていた。

 

「最初は確かにおかしいと思いましたけど、こうしてカズハさんと話していると、理由が分かる気がします」


 僕が答えると、カズハさんは笑った。


「アッハッハ、俺みたいな奴に固い役職なんて無理無理! アリシアちゃんの方が打って付け!」

()()()()()とは誰のことを言ってるのですか?」


 後ろからセーカとカナンとリオラさんを連れたアリシアさんが現れた。どうやら女子部屋も同じような雰囲気だったのか、二人はげっそりとした顔を浮かべていた。


「ち、違うぞ!? 守護の国に相応しい、真面目でお優しい御方だ〜って話を……」

「それよりもカズハ様。神を巡る旅人が来たら、()()()()()()()()があったんですよね?」

「話したかったこと……?」


 すると、二人の顔付きが変わっていた。


「ああ、君が来たら話したいことが……」


 その瞬間、まさに一瞬だった。

 守護の国は、周りも、上空ですらをも岩石でスッポリと覆われた国。その上空に聳える岩壁が、パックリと消滅し、綺麗な空が映し出された。

 その途端、本部全体に緊急警報が鳴らされる。


『緊急警報! 緊急警報! 敵は上空!!』


 敵は上空……? 飛んでるのか……?


()()です!!』


 龍……!!

 僕が呆気に取られていると、カズハさんはヘラっと呟いた。


「ッカ〜! 龍か〜! バベルが生み出した最古の魔物、俺も直で見るのは初めてだな〜」


 そこには余裕にも見える口調に見えた。


「カ……カズハさん! 龍ですよ!? 龍が攻めて来たのに……そんな悠長な……」

「ヤマトくん。俺はこれでも神だぜ? 龍の一匹くらいならまあ大丈夫かな〜」


 そうだ……龍を見るのは初めてだが、今まで龍族の一味と戦って来て、七神は龍族の一味より遥かに強い。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()なら、カズハさんがいれば大丈夫かも知れない……!


『続報をお知らせします!! ()()()()()()()()()()()()()()()()模様!! 騎士団本部へ攻め入って来ています!! 騎士団長、指示をお願いします!!』


 カズハさんの余裕は、青ざめた顔を見て分かった。

 神の力は確かに絶大……でもだからこそ、()()()()()()()()()()()()()()……。


「アリシア、龍は俺一人でなんとかする! 騎士団の指揮を取って()()()()()()()させろ!」

「分かりました……!」


 神と守護神の関係を知らなければ、傭兵が騎士団長に指図している絵柄にも見える。

 しかし、指示の的確さ……やはりカズハさんは紛れもない岩の神だ。


「絶対に、誰一人死なせることは許さない!」

「僕たちはどうしましょうか、ヤマト」

「カズハさん……僕たちは……!」

「一緒に戦ってくれるか、ヤマトくん……! なら、全員でアリシアの援護に回ってやってくれ……!」

「分かりました!!」


 そして、全員で急いで本部内を駆けた。

 階段の途中で、僕は()()()()に止められる。


「やあ、初めましてだね」

「貴方は……?」


 聞かなくても分かる。()()()()()だ……!


「どうしました? ヤマト?」


 見えてないのか……!?


「僕は龍族の一味、研究者のガンマ。他の人に僕の姿は見えていないよ。何故ならこれは()()だからね……」


 幻影……。自由の国の幻影魔法の龍族……!


「今日は少し大所帯でね。簡単に潰れちゃっても困るからアドバイスに来てあげたんだ。岩の神は一人で龍討伐に向かったようだけど、それじゃあ()()()()()()よ」


 カズハさんが……神が敗ける……!?


「岩の神が相手にしようとしているのは、七龍の中で最も強いとされている炎龍。そして、炎龍を暴走させない為に操っているのは……」


 僕は唾液をゴクリと飲み込んだ。今までの龍族で見たことのない属性だ。


「龍族の一味……我らが長、()()()()()()()()()()だ! ふふ……この宴を愉しもう!」


 そう言うと、ガンマと言う男の姿は消えた。


「ヤマト、どうしたんですか!? 急がないと!!」

「ごめん、今、僕の目の前に幻影魔法の龍族の男が現れたんだ……。やっぱり僕だけでも、カズハさんの援護に行ってくる!!」


 そして、僕は再び、展望台へと上った。

 この世界で繁栄している七国には、それぞれを統治する七人の神がおり、特別な力を宿す。

 世界を治めるのは世界の唯一神。七国の神と契約し、神々に力をもたらした人物。


ヤマト(主人公):風・炎・水・岩・神威/光剣・グローブ

アゲル(大天使ミカエル):光

カナン:炎+爆破/弓

セーカ:雷/拳

アズマ:水/治癒


〇守護の国

 セキュリティが強固で、国の周囲全てが岩盤で覆われている国。兵士教育が盛んで、兵士たち自らが交代で次代の生徒たちの指導をしている。


カズハ(岩の神):岩

アリシア(騎士団長/守護神):闇

リオラ:寅の仙人 ディムに仕えている者。

ディム:ガロウと同じく異世界からやってきた仙人の一人。守護の国の近くの森に住み、寅の仙人と呼ばれる。


●龍族の一味

??(龍族の一味の長):炎

ガンマ:闇・幻影

炎龍

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