22話 VS 守護神
守護の国へ着くと、そこには行列が並んでいた。入国審査が厳しいとは聞いていたが、そこで待っていたのは一人一人個別による入国審査だった。
暫くの時間を経て、僕たちは中へ入った。中に入ると、壁に覆われた受付兵がおり、岩でゴツゴツした椅子に座らされた。
「それでは質問を始めて行きます。その岩の椅子には特殊な魔法効果があり、嘘をつくとこちらに伝達される仕様になっておりますので、本当のことをお答えください」
こういうの、無駄に緊張するけど、別に悪意も何もないし、平然と答えれば大丈夫だろう……。
「まず、あなたの出身国をお答えください」
出身国……? 僕の場合、最初に行った国は自然の国だし、自然の国でいいのか? それとも日本……?
「えっと……自然の国……」
「違いますね。仮に育った国をお答えする方もいますが、ちゃんと出生した国をお答えください」
「えっと……日本……です……」
受付兵も困惑しているのか、暫くの静寂。
「ま、まあいいでしょう。次に入国理由についてお答えください……」
多分、本当に深層心理を読まれてるんだ……。神探しの旅をしている訳だから……岩の神に会う為……とかでいいのかな……。
「岩の神に会いたいからです」
「貿易や流通、学問ではなく、岩の神に会う為? 岩の神に会って何をするつもりなんですか?」
これ……セキュリティ頑丈ってレベルじゃない……。
僕が困惑していると、後ろからセーカの大きな声が聞こえてきた。
「旅人の旅に同行してるだけよ! 別にこの国に悪意なんて微塵も持ってなんかいないわよ!」
僕たち旅人は苦労するな……。
しかし、悪意のないことが伝わったセーカの声は、その後聞こえてくることはなかった。そうか、悪意がないことを示せばいいのか。
「岩の神から力を授かりたいのです。この国への悪意は一切ありません」
すると暫くの静寂の後、国への扉は開かれた。
「分かりました。どうぞ、お通りください。岩の神へ会う為には、まず国家騎士団長の下へ行くといいでしょう。国家騎士団長こそが、岩の神の守護神です」
「あ、ありがとうございます!」
そうだよな、怖くて頑丈なセキュリティかと思ったけど国の安全の為に行なっているんだもんな。
最後は受付兵も顔を出し、親切に送り出してくれた。
「無事に通れたみたいで何よりです、ヤマト」
「アゲルは天使族とか、ちゃんと答えたのか?」
「はい、しっかり本当のことをお話しましたよ」
アゲルですら本心を答えなきゃ通過できないほど、この魔法効果というのは正確らしい。
最後に出てきたのは、疲弊した顔を浮かべるアズマだった。
「ど、どうしたの……?」
「俺って記憶ないからさ……自由の国でまず違うって言われて、入国理由もすげえ大変だった……」
アズマは、セーカみたいにズバッと言えるタイプじゃないからな……。ご愁傷様……。
岩の国の中の構造は、仙人 ディムが行っていた通りとても複雑だった。入ってすぐに広がるのは、商売や労働者が盛んな労働地区。中心には国家騎士本部が聳え立ち、その左右にはなんと魔法学校があるらしい。そして、囲うようにして、岩で作られた家がマンションのように広がっていた。
「こりゃリオラさんがいなかったら迷っちゃうな……。受付の人に、岩の神に会うにはまず国家騎士団長を尋ねろって言われたんだけど、リオラさんの用事もあるだろうし、どうしようか?」
「私の用は仙人様へのツマミと食材の買い足しだけですので、皆様のご用件が先で大丈夫ですよ」
僕らはこのところ、旅と言っても船でじっと移動したり、空間魔法でパッと移動したりと、歩いて疲労困憊になることが少なく、休憩が不要だった。
「それじゃあ早速だけど、騎士団本部へ向かおうか」
入国してしまえば中の人たちはとても親切で、騎士団も怖い人ばかりかと考えてしまっていたが、とても親切に案内してくれた。
「騎士団長アリシアさんですね。彼女なら現在、本部裏にあるトレーニング地区にいるかと思います」
国家騎士団総本部の奥、先程説明になかったエリアは、騎士や魔法学校の生徒のみに使用が許されている、トレーニング用の施設になっていた。施設内はとても広く、弓の練習や拳、それぞれの武器に応じた専用のエリアで分けられていた。
「せい!! ハァ!!」
すると、奥の方では、二人が戦ってる姿が見えた。僕らが足を運ぶと、戦闘は中断された。
「すみません、中断させてしまい……」
「大丈夫ですよ。あなたたちは……?」
僕に言葉を返した相手は、全身に黒い鎧を纏い、大きな盾を両腕に付けた女性だった。
もしかしてだけど……この人が……。
「七神に会う為に旅をしている旅人です。騎士団長である守護神がここにいると聞いて来ました」
すると、大きな盾を置いて、女性は膝を着いた。
「ようこそ、守護の国へ。私の名はアリシア。守護の国騎士団長、並びに、岩の神の守護神 アリシアです」
やはり、この全身鎧の女性がアリシアさんだった。
少し待って欲しい、と言うと、後ろには同じ制服を着た少年少女たちが座っており、彼らを帰していた。
「お待たせしました。今日は魔法学校前線志望の学生たちへの実技指導をしていたもので。先程ちょうど終了したところでしたので、お気になさらず」
前線志望……そこまで細かく分けられているのか……。左右に点在する理由も分かった気がする。
そして、先生がいるわけではなく、魔法学校の生徒たちは騎士団員たちが交代で授業をしていたのだ。
「それでは早速始めましょうか」
そう言うと、アリシアさんは再び大きな盾を構えた。
「え、何かするんですか……?」
「岩の神に会わせられるべき人たちであるのか、私が見定めさせて頂きます。戦闘のご準備を」
国に入ってから、みんな親切で油断していた。そうだ、この国のセキュリティは頑丈なんだ。
仕方ない……。
「それじゃあ、僕が……」
僕はアゲルから光剣を手渡され、周りには何もない闘技場のような造りの場所へ足を進めた。
いきなりの守護神との戦い……正直緊張する。でも、手を抜いたら絶対にやられる――――。
「それでは、いつでもどうぞ」
そう言うと、アリシアさんは盾を構えた。
あんなに重そうな盾を二つも構えているんだ……。速度で圧倒してしまえば、僕に分があるはず……。
-風神魔法・ウィンドストーム-
僕は一気にアリシアさんへ間合いを詰める。盾は前後に構えているところを見ると、背後に回り込んでもきっと意味がない。
むしろ、逆に眼前で相手の虚を突く――――!
そして、光剣に【炎魔法・ラグマ】を付与させ、燃え盛る炎の刃をアリシアさんへと振り翳した。
「なっ……!」
「甘いですよ……旅人さん!!」
アリシアさんは盾を大きく振るうと、僕を吹き飛ばす。
今の感触……ただの大きな盾じゃない。ラグマの炎魔力すら簡単に弾いてしまうあの盾は、全部魔法で創られているものだ……!
それなら今度は【炎神魔法・ラグマゴア】を付与する。
そして、また僕はアリシアさんの眼前へ向かった。
「オラァ!!」
しかし、アリシアさんは読んでいたかのように身体を傾けて僕の剣を交わし、黒い盾はビヨンと伸びた。
「え、えぇ!? 伸びた!? 何の魔法なんだ!?」
「闇魔法・ランギス」
闇魔法……?
すると、盾は僕を覆うように広がり、複数の棘のようなものが僕を目掛けて襲い掛かる。
急いで【風魔法・フラッシュ】で向きを変えたはいいが、この数じゃラグマゴアで防ぎ切れない……!
-岩魔法・ブレイク-
咄嗟に高鳴った鼓動、岩魔法の発現……!
【岩魔法・ブレイク】は、僕を覆うようにして岩の盾が現れ、アリシアさんの闇の棘を全て防いだ。
「まだです……!!」
そこに更にアリシアさんは、もう片方の盾で僕に襲い掛かる。
「もう、やめましょう……」
僕は光剣を手放し、アリシアさんに向かい合う。
「勝てないと踏んだ上での降伏ですか?」
「どうでしょうか……。まだ分からないですけど、僕はアリシアさんと争いたくないと思ったんです。最初は、勝たないと認めてもらえないと思いましたけど、この戦いってその為のものではないですよね?」
すると、アリシアは黒い盾を消した。
やはり魔法で創られていたものだったんだ。
「合格です。あなた方を岩の神へ会わせましょう」
そう言うと、アリシアさんは微笑んだ。
この世界で繁栄している七国には、それぞれを統治する七人の神がおり、特別な力を宿す。
世界を治めるのは世界の唯一神。七国の神と契約し、神々に力をもたらした人物。
ヤマト(主人公):風・炎・水・岩・神威/光剣・グローブ
アゲル(大天使ミカエル):光
カナン:炎+爆破/弓
セーカ:雷/拳
アズマ:水/治癒
〇守護の国
セキュリティが強固で、国の周囲全てが岩盤で覆われている国。兵士教育が盛んで、兵士たち自らが交代で次代の生徒たちの指導をしている。
アリシア(騎士団長/守護神):闇
リオラ:寅の仙人 ディムに仕えている者。
ディム:ガロウと同じく異世界からやってきた仙人の一人。守護の国の近くの森に住み、寅の仙人と呼ばれる。




