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リメイク  作者: 春木
第三章 自由の国編
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13話 因縁

 セーカは、僕へ攻撃してしまったと焦ったのか、殺気は薄まり少し冷静さを取り戻した様子だった。


「セーカ、お兄さんとの因縁があるのは分かる。でも僕たちも聞きたいことが山程あるんだ。セーカがこの人を殺そうとするなら、まずはそれを全力で止めるよ」


 僕は真面目な視線を送り、セーカを圧した。セーカは俯いて動かなくなった。


「聞きたいこと……。()()()()()()ですかね?」


 男は、またも平然とその言葉を口に出し、僕に向き合った。僕は少し唖然としてしまった。この男も、ルークさんに似ているのか……。


「そ、そうです……。あなたからは龍族の魔力を感じる。先日、楽園の国でルークさんから話は聞きました。異郷の旅人として、あなたたちを止める気でいます……!」


 もう全てバレているのなら、恐怖心はあったが、恐る恐るも僕は本心をそのまま言葉にした。しかし、男はまたも書類に向き直した。


「そうですか。勝手になさってください」

「え……?」

「確かに私は龍族の一味に加わっていますが、正式に言えば、()()()()()()()()()()()ですので、そんなに殺気立たないでください」


 加えさせられている……? 何故……? そんなことルークさんは言っていなかった……。龍族の長にはそう言う能力があるのか……?


「私は確かに龍族の血を持ち、長により雷龍から加護を受けましたが、正直興味がないんですよ。私は私の研究がしたい。その邪魔をされることが一番嫌いだ」


 平和主義でもなければ、冷徹な訳でもない。自分のことしか眼中にないのだ。ならセーカはどうしてここまでの殺意を抱いている? 龍族の妹、セーカとは一体……?


「も、もう一つ、セーカのことで……」

「兄妹のことに口を挟むんですか? 随分と暇なんですかね、世界の救世主様とやらは……」


 溜め息混じりに、露骨に呆れた様子を浮かべる。多分、この人にとって、自分の時間を奪われることが何よりも嫌なことなんだ。一先ず僕のすることは、セーカを止めること。この人も龍族の一味ではあるけど、ルークさんのように戦う意志はない。それだけで今は十分だ。


「すみません、改めさせて頂きます」

「改めて時間を取れと……? 私は多忙なもので、世間話に割いてる時間が勿体無い」

「なら、どうすれば話の機会を与えて頂けるのでしょうか……?」


 男は、「ふむ……」と目を閉じると、ふと思い出したかのように僕に向き直した。


「国王から任務を言い渡されていました。多少面倒ですが他の者では手に負えないようで。私も攻撃魔法は使えないので、発明したものでなんとか対処しようと考えていたのですが、貴方たちならば余裕かも知れません」


 そして、一枚の紙を僕たちに見せ付けた。


「島の端に住んでいる『()()()()()()()です」


 紙には、凶悪そうな鬼のシルエットと、大きな文字で緊急任務、それから階級の様なものが書かれていた。


「この悪鬼討伐に付き合ってください。私に時間を割いて下さるのなら、私も貴方たちに時間を割こう。これでイーブンな条件ではないでしょうか?」

「分かりました……お引き受けします」


 そして、翌日の正午に王城裏の城門で合流とし、僕たちは一先ず、宿泊先へと足を運んだ。


「ヤマト、龍族相手にあの挑発は危険です」


 アゲルの緊張は未だ解けていない様子だった。水の神 ラーチも「楽しそうだから着いて行くよ!」と、翌日にまた合流することとなった。

 久々の宿泊先は、ホテルの様な構造で、割と安価だった為、久々に個室を取って休息することにした。お子様のカナンは僕と同室だが。考えることは山積みだ。カナンは久々にはしゃいでいたせいか、ベッドに横たわるとすぐに眠ってしまった。まあ、そのお陰で考え事は捗るな、と一息。

 僕はカーテンを開け、窓の外を見遣る。そして、窓の反射で映る人影。


「セーカ……」


 音もなく僕たちの部屋に入って来ていたのは、セーカだった。


「ヤマト、話したいことがあるの」

「あ、あぁ、うん……」


 カナンの母親探しのことも考えたかったが、目先のことを優先させようと、セーカに着いて行き、僕たちは宿泊先を出て、噴水の前のベンチに腰を下ろした。街灯がチカチカと光り、楽園の国とは違い、居住区の広がる自由の国の夜は静寂と化していた。

 そして、セーカは俯きながらも口を開く。


「ヤマト、ドレイクの言ってた()()って何……? 世界の救世主とか、魔法属性も沢山あるし、ゴーエンはまだしも、水の神とも親しそうにしてるし……。ヤマトって何者なの……?」


 ここに来て、当然の疑問だ。カナンには「つよ!」とか言っておけば追及はなかったが、僕と同い年くらいのセーカには通じない。アゲルにも別に口止めはされていないけど、なんとなくあまり言わない方がいい気がしていた。異世界の暗黙の了解みたいな……。

 でも、僕はちゃんと話すことにした。僕たちがしようとしていること、旅の目的、それから、僕自身のことを。噴水の音だけが響く広場で、僕は声を少し抑えながら、セーカに向き合って事の全てを話した。セーカはずっと目を丸くして話を聞いていた。ただの旅人じゃない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と言う現実を目の当たりにしたのだ。

 一頻り話し終えると、セーカは立ち上がった。


「喉、乾かない?」

「え? まあ、うん……」


 そう言うと、「じゃじゃーん!」と、水筒を鞄から取り出し、カップまで二人分用意してくれた。


「用意周到だな……」

「違うの! これ、ゴーエンとの修行の時にね、島にグランと二人きりで残されたことがあって、その時の思い出の物なんだ。その島でしか採れない茶葉で作ってあるお茶だから、大切に飲むんだぞ!」


 そう言うと、青いカップを僕に手渡した。やけに元気で、僕は戸惑いながらも受け取った。


「龍族か……。私なーんにも知らなかった」

「え……?」

「ヤマトとアゲルが龍族を警戒してることは理解した。だったら、私は龍族じゃないよ」


 そして、悲しそうな笑みを浮かべて僕の目を見る。


「私ね、()()()だったんだ。小さい頃にドレイクの両親に拾われて……だから、ドレイクは実の兄じゃないのよ」

「だったらなんで……ドレイクさんのことを殺そうとしているんだ……?」

「アイツは……自分の実の両親、私の育ての親を殺した張本人だからよ……!」


 そして、また顔を強張らせた。あの自分しか頭にない人が、実の両親を殺した……? 何の為に……? 理由がある……? いや、セーカが勘違いしてる可能性も……。セーカの復讐は止めたい。でも、ただの勘違いだとしたら、セーカの今までの努力は不毛そのものだ。しかし青いコップを見た時に、僕の脳は非現実的な異世界に来て様々な可能性や言動が巡った。


(私は攻撃魔法は使えないから発明で……)

(私の育ての親を殺した張本人なのよ…!)

(私は、私の邪魔をされるのが一番嫌いだ)

(雷魔法で脳に刺激を与えて音楽を聴かせている)


 そんな恐ろしいことは考えたくないけど、今までの可能性を全て信用するなら、この答えしか考えられない。自由の国 博士長 龍族の一味 雷龍の加護を受けた、セーカの血の繋がらない兄、ドレイクは……。


「自身の両親を()()()()()()()して殺した……?」


 僕も口に出してみて、その恐ろしさに震える。セーカも、そこまで辿り着いていなかったのか、恐怖心を露わにさせた様子だった。


「その通りですよ、異郷の旅人」


 そして、街灯の下から薄らと、ドレイクが現れた。

 この世界で繁栄している七国には、それぞれを統治する七人の神がおり、特別な力を宿す。

 世界を治めるのは世界の唯一神。七国の神と契約し、神々に力をもたらした人物。


ヤマト(主人公):光剣/左手にグローブ型の盾

 ◇風魔法 フラッシュ:暴風を放出

 ◇風神魔法 ウィングストーム:目線の場所に高速移動

 ◇炎魔法 ラグマ:武器に炎を付与

 ◇炎神魔法 ラグマゴア:全ての魔法を蒸発させる

アゲル(大天使ミカエル):光属性

 ◇光魔法 オーバー:対象を三秒間停止させる

カナン:炎属性+爆破/弓

 ◇炎魔法×爆破

セーカ:雷属性/拳

 ◇雷魔法 ビライト:拳から多量の雷を放出。それによる跳躍、高速移動も可能


〇自由の国

 孤島の中で、外部との一切を遮断した、神の存在がない、国王が統治する唯一の国。争いもなければ、祭りなどの祭典で別国からの観光者も受け入れておらず、居住区が土地のほぼ全てを占める。

 発明が盛んで、科学者や発明家が多く、戦いの為の魔法、というよりも、生活を向上させる為の魔法技術として研究が成され、外の国に売り込んで国が成り立っている。


ラーチ(自由の国の神)

ロロ(守護神/アイドル)

キング(自由の国の国王)

ドレイク(博士長/龍族の一味):雷属性

ララ/リリ/ルル/レレ(アイドル)

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