⑥ 城壁の下に水路を通す
ついに城壁前迄の水路が完成したので、今日の作業は城壁の下に水路を通す作業になった。
城壁の陥没が起きない様に上蓋の石材❨3m×1m×0.3m❩3枚を補強の目的で最初に城壁基礎から1m下に城壁に沿って幅3m奥行き1m高さ30cmで石材を埋めてから作業員がT字形に石材中央の下を掘って進め、更に作業員が石材の奥の土を少しずつ掘って、最初に埋めた石材を奧にスライドして順次石材を差し込むことで、その後の作業が楽になり、城壁を越えて水路の開通が出来た。
その後、都市内側に地下水路への出入りが出来る石段と荷揚げ用開口部、それに保守用の止水扉を設け、開口部及び、水路の側壁と底を石材で埋めて、幅2m深さ2mの水路が地下1mの所で都市内部にようやく繋がった。
此処からはこの開口部を起点として都市中央迄の水路を構築する。
当初は都市中央の宮殿迄の水路構築は、露天掘りを計画していたが、石材加工の精度が向上して、石組でアーチ状のトンネル構造が可能になったので、掘削して周囲を石組で組み立てながら水路を構築する方法で行うことにした。
使用する石組は組み合わせてアーチ状になるよう、事前にそれぞれの石に番号を付けて順次組み合わせると石組が出来るようにして、規格を統一した。
この工法のメリットは道路を閉鎖せずに作業が可能で、住民の負担が軽減出来て騒音も少ない事が挙げられる。
一方デメリットは掘削した土砂を随時運搬車などで開口部へ搬出する手間が増えて、掘削時に地下水が大量に涌き出す場合、排水しながら作業しないと水没してしまうので、それらの対策が必要になる。
排水用ポンプの代用品として、昔ながらの鉱山で使われていた手回しポンプを製作して湧水対策とした。
土砂運搬車についても作業効率を考え、車輪は大きくして車載量に耐える強度がある物を設計、製作して準備してから工事を再開する事にした。
今まで水路では、地下水が涌き出すことは河口付近のみで、それ以外は無く、
余程深く掘らないと湧水が涌き出すことはないと思うが、万一を考え事前の準備は欠かせない。
そこで鍛冶屋で排水用ポンプの製作依頼と、材木屋で運搬車の製作依頼する為、街の北側へ向けて移動中、一人の老女が気を失って倒れている場面に遭遇した。
老女は見る限り、上等な服を着て高貴な身分のように思われたが、付き添いも無く、声を掛けても意識が無いので、抱上げて近くの診療所に連れて行き、介護することになった。
診療所のベッドに寝かして暫くすると老女の意識が戻り、正気を取戻したのでいったい何があったのか老女に尋ねた。