② 驚愕の事実
ミーシャによると、この星は遥か昔、生命体が存在しない荒廃した星だった。
この星を訪れた天上人によって、創造された世界だと言う伝承が残っている。
エルフの里には、その伝承を示す遺物が今でも残っているそうだ。
彼等は大気組成を生物多様性が可能な観点からフォーミングし、
更に、このような多種多様な植物などを地表に散布して、地上の環境改善と、
そこに住む動物の食糧確保の観点からこの星を改造した。
現在、この星の住人達は、彼等によって創造された、生命体であり、
地球だとアダムとイブのような生命体から、産みだされた生命体が人々のルーツと言われている。
この星の最初の住人は、エルフの祖先と言われるハイエルフで、
そのハイエルフからエルフが生まれ、その後に人間、最後に獸人が誕生した。
それから何世代を経て、それぞれの種族がこの星の環境に順応し、
徐々に人口が増えてきたらしい。
因みに、この星の一年は400日で、地球とは異なり単純に比較出来ないが、エルフの寿命は数百年と長く、次いで人間は40~60年程度で、獸人の寿命は更に短く、平均30年程度となっているそうだ。
人口の構成比は、エルフ、人間、獸人の順に1:3:5となっている。
意思の疎通は共通語があるので、種族を越えて協力して過酷な環境でも生き残ってこられたようだ。
知識の継承に繋がることはエルフ、組織的な運営には人間、力仕事には獸人というふうに、それぞれの種族による特性を生かした役割が、この都市を支えてきた原動力と言える。
この都市では、三つの種族が互いに協力して都市の周囲に壁を築き、外部の猛獣から身を守るシェルターとして機能しているが、生活環境の更なる向上を図るには、上下水道の整備が遅れている事がネックとなっているのが、説明を聞いてよく判かった。
水道工事の整備によって得られる恩恵は計り知れないが、その為には、都市周辺にいる猛獣から身を守りながら、工事をしなければならない。
私からは『工事に際しては作業中の護衛が欠かせないので、まずは作業員と護衛の人員確保が必要です。』とミーシャに伝えて、彼女から上司に伝えて人員を手配してもらえるよう依頼した。
ミーシャから『今日は慣れない事もあるでしょうし、あなたもお疲れだと思うので、こちらで手配した宿に案内します。明日朝に迎えに行きますから、それまで身体をゆっくり休めて下さいね』と言われた。
次に護衛の一人に宿迄の道案内を頼んでもらって、
ひとまず当分の間、滞在する宿に向かうこととなった。
宿に行く途中、都市内部の様子を観察すると、
まるで中世のような石造りの建物が並んでいる。
街の中心部には、先ほど迄居た宮殿が建っていて、
その周囲を囲むように大きな広場が拡がっている。
更にその外側には住人の住居や店舗が、
宮殿から放射状に延びた道路に沿って建っていた 。
暫く歩くと目的の宿に到着。宿は2階建てで、一階は食堂と受付、
二階には宿泊客の部屋があり、まずはそこの受付に案内された。
宿屋の主人はカールという人族で、どうやら家族でこの宿屋を営んでいるようだ。
店主のカールから部屋の鍵を受取り、腹が空いたので、ひとまず持ってきた荷物を置いてから、食堂で食事することにした。
宿泊費と食事代は手持ちのお金が無い為に、宿の支払いをどうしようかと困ったので、カールに尋ねたら、此処の宿泊費と食事代は国費で全額支給されると聞いて、衣食住の心配事が無くなりひとまず安心した。
食堂のメニューから定食を頼んで待っていると、シチューのような煮込み料理が出てきた。素朴な味だが、野菜の持ち味が引き立つ料理だった。
これなら滞在中の食事もどうやら楽しめそうだ。
お腹も落ちついてきたので、とりあえず指定された部屋に向かった。
二階の部屋はベッドと机があり、八畳程の広さだった。
トイレは共用で宿屋の裏側の離れに小屋があり、昔ながらの汲み取り式?便器の下には汚物桶があり、定期的に交換されて運ばれ、郊外の原野に撒かれ、そこで堆肥として処理されているそうだ。
風呂は水の制約があり、シャワーもない。風呂が無いので、暫くはお湯をもらってタオルで身体を拭くしかない。
宿に風呂が無いのは非常に残念だが、上下水道が完成する迄は、作業の合間に川辺で水浴びとかして我慢するしかないかな~。
部屋の明かりは手提げランブだけで薄暗いけど、こんなときに備えあれば憂い無しで、持参したトランクから荷物の中身を確認してみたが、上下着替えと下着の他、筆記具、カメラ、メモリーカード、LED懐中電灯、小型手動発電機、太陽電池パネル、双眼鏡、スマホ、タオル、手袋、サバイバル用具(十徳ナイフ、ライター、点火用具、ロープ)、メジャー、小型バッテリーなど、未開地でも電気で困らないようなグッズをいくつか事前に用意したので、当分は安心して過ごせそうだ。
明日から仕事が開始出来るか不明だが、今夜はひとまず休息して身体を休め、明日に備えて就寝することにした。