エピローグ
病院の中庭を散歩しながら、窓辺を気にする。
そろそろ診察が終わって、顔を見せてくれるはず。
「あっ!」
「ありさん、いたねぇ」
「ありさん、いた」
窓辺に待ちわびた秀人の姿を見つける。
大きく丸印を作っている。
ホッと胸を撫でおろす。
〝オレが、そっちに行くよ〟と身振り手振りで言っている。
「瑛愛ちゃん、パパ居た?」
「パパ、いた」
「今からこっち来るって。お茶飲もう」
「ママ、おちゃ」
「はいね。美味しい?」
「おいし」
「瑛愛ちゃん、あれ誰?」
走ってくる秀人に注意を向ける。
「パパ!」
「お待たせ」
秀人と抱き合う。
「変化なかった?」
「うん、安定してるって」
「良かったぁ…」
毎回の事ながら、結果を聞くまでは緊張する。
「ありがと、サヤさん」
病院の封筒で隠して、サヤに優しくキスをする。
「ママだっこ」
「瑛愛ちゃん、パパの所おいで」
秀人が瑛愛を抱く。もうすぐ2歳になる娘の瑛愛は、サヤの小さい時にそっくりだと両親に言われる。
「はい、瑛愛ちゃんほっぺチュ」
瑛愛の表情が可愛くて、秀人と顔を見合わせて笑う。
「今度から診察が半年後になったよ」
「えっ、ホント?」
そのまま瑛愛を抱っこし、駐車場へ向かう。
「よっぽど検査結果が順調なんだね」
「家族のおかげだよ。オレ、絶対にこのままで維持するからね、サヤさん」
「うん、もちろんだよ秀人」
「ホント幸せだよなぁ…こんなに可愛いい天使にも恵まれて…サヤさん、ありがとう」
秀人に抱かれながら、眠そうになってる瑛愛が居る。
「さっきオムツも替えたから大丈夫。そのまま寝ちゃうかな」
「今から寝れば、路子さんのお店に着いた時にちょうどご飯でタイミングいいのにね」
2人で協力しながら、ゆっくりとチャイルドシートに瑛愛を乗せる。
シートベルトをしても、起きない、成功だ。
秀人と近い距離のまま、誰も居ないからそのままキスをする。
終わった後も秀人を見るから、秀人が気付いたらしい。
「サヤさん、何かあった?不安な事がある?」
「もう一度して…」
秀人は、今度は丁寧にしてくれた。
「この感じ、覚えがあるけど?」
「情緒不安定になってるかも…」
「それは、またオレが支えるから大丈夫だけど、瑛愛が出来た時と似てない?」
「うん…私も思ってよく考えてみたら、不順だと思い込んでた」
「サヤさん、そんな大事な事早く言ってよ!
検査薬買って調べよう」
「2代目看板娘も完璧!」
女将さん特製のお子様ランチを前に、スプーンをぎこちなく握る瑛愛を写真に収める。
「瑛愛ちゃん、あ~ん」
サヤに食べさせてもらいながら、左手は別のオカズを手づかみする。
いつもながら、食事はバタバタだが、何でも食べてくれるので助かっている。
「女将さんの所でお子様ランチは嬉しいです」
「最近、家族連れが増えたからね。店も禁煙にしてるし、お酒提供も21時以降にしたのよ」
「ますます来やすくなりますね」
携帯を見ながら、秀人がつぶやく。
「ウチのコ可愛い…」
早速、店のインスタを見てニヤニヤしている。
「もう食べるか、携帯見るか、どっちかにしなよ」
サヤに注意される。
「秀人、毎日こんな感じ?」
「メロメロですね」
「だろうね…」
「瑛愛ちゃん食べ終わったら、サヤちゃんの持ってくるから声かけてね」
「は〜い」
時間差で提供してくれるのも嬉しい。
「ママどうぞ」
「ママにコレくれるの?じゃ瑛愛のお手々も食べちゃう。パクパクパク…」
キャッキャと瑛愛が笑う。サヤも瑛愛を見て笑ってそのまま秀人を見る。秀人は携帯を向けている。
「良し!完璧。動画最高!」
携帯を見ながら、確認する。
「ヤバっ」
また机に突っ伏してしまう。
「パパねんね」
「ねんね、したねぇ〜」
後日、瑛愛を実家に預けて、束の間の2人時間を作る。
日頃から子育てを助けてもらっているので、瑛愛も両親に慣れている。
実家周辺を手を繋いで散歩しながら、他愛もない話をする。
「瑛愛、髪が伸びてきてクルクルしだしたね。くせ毛が私にそっくりでしょ」
「それがまた可愛いけどね。
それより、オレはサヤさんのつわりがひどくなくて良かったよ」
「瑛愛の時もそうだったけど、少し胃がムカムカする位で、仕事だと集中してれば忘れちゃうし」
「気持ちの面は大丈夫?不安になってない?」
「秀人がちゃんとフォローしてくれるから助かってるよ。守られてるって思うと、頼もしい」
繋ぐ手に一瞬力を入れると、秀人も同じ様にする。
2人で顔を見合わせて、笑う。
「今度はどっちかな」
「どっちでも健康なら…でも、やっぱり女の子可愛いなぁ。この前、お父さんに言っちゃったもん。よくサヤさんを嫁に出せましたねって」
「そしたら、お父さん何て?」
「オレじゃなかったら出してないって。真由ちゃんオレみたいなダンナさん、探せるかな」
「確かに秀人みたいな人、なかなか居ないかもね」
「言っておくけど、サヤさんだからこうなったんだからね。学生の頃はここまでじゃなかった」
「ふぅん」
意味ありげに笑うサヤに秀人が言う。
「責任取ってずっとオレの隣で笑っててよ」
「…はい」
「おじいちゃん、おばあちゃんになってもだよ」
「ふふっ」
「オレの将来の楽しみは、サヤさんと沢山旅行したり、美味しいもの食べに行ったりする事なんだからね」
「それは楽しみ!」
「だから、〝今〟は子育てを楽しもう。今度産まれてくる子にも愛情を注いでさ」
「うん。楽しみな事が沢山あるね」
サヤがゆっくりお腹をさすった。
「安心して産まれてきてね〜」
秀人も立ち止まってサヤのお腹を撫でる。
「お母さんとお父さんがたっぷり愛情注ぐからね〜」
「ねぇ、サヤさん。初めてキスしたあの公園寄って帰ろう」
「秀人を膝枕した公園だね」
「人が居なかったらさ、初心を思い出して、同じ様にキスしよ」
「足りるかな」
「良ければおかわりもありますよ」
2人で寄り添いながら笑うと、何でも出来る前向きな気分になる。
繋いだ手が、安心感を与えてくれる。
私達は、きっとこのまま愛し合っていける。
周りに感謝する気持ちを忘れないで、秀人をずっと信じていこうと思う…
長い間お付き合い頂きありがとうございました。
今後は坂本課長編や奈緒さん編を書いてみたいなぁと思ってます。
その際には、またお付き合い頂けると嬉しいです。
ありがとうございました..2024/11/26
注)本日の改稿は主に行間を読みやすく修正しました




