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砂の城  作者: F
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満月

今年から各課の代表者が選ばれ、課の仕事の流れ、その仕事をする意味、目指している目標など、課に沿った内容の発表を、研修後の新入社員に向けてする事になった。

今回は第一回目ということもあって、様子を見る為か新入社員以外の社員も集まり、会議室に立ち見が出来ている。


お互いに代表に選ばれた2人は、1ヶ月程前から準備を始めた。

発表する内容のシナリオを作成し、必要な資料を用意する。

初めて聞く人に内容が伝わるか、プレゼンのスピードも含めて自宅で練習を見せ合い、意見を交わした。

実際、お互いの練習を見ていたら、新たな発見が多く見つかり、今まで何気なくやっていた仕事の意味が分かった。


秀人の質問に、管理課を含めてプレゼンした方がいいと気付いたサヤは、伊藤主任のもとを訪れ、発表するプレゼンの内容を伝えた上、その後の流れについて一部説明を入れて欲しいと提案し、快諾してもらっていた。


今、前に立つサヤは、堂々としていて凄く魅力のある女性だ。

何度も見たプレゼンだが、要点が分かりやすく、声も聞きやすいと改めて感心する。

新入社員ではない立ち見の方からも、感嘆の声が聞こえてくる。以前の表彰式のサヤとは違い、余裕すら感じられる。


無事発表を終えて、しばしの質問タイムに入る。

奈緒が、隣に来てそっと耳打ちする。

「サヤ、すごくいい女だね」

「そうなんすよ、今もほらっ、笑顔を振り撒かないで欲しい」

「ホントに、一途だねぇ」

「あの笑顔に勝るものはないです」


サヤの姿を見守りながら思う。

(オレのお嫁さんになる人です、って言えたらなぁ)

婚約指輪の代わりに結婚指輪にお金をかけようとサヤに提案された。今となってはその提案をのんだ事を少なからず後悔している。



最後に感想で、今回指揮を執った営業課の坂本課長が、前に出た。

「新入社員のみんな、どうだった?

今回初めてこの会を開いたが、自分の課以外は知らないことが多くて、僕自身も勉強になったと思う。

特に、資材課と管理課の連携の発表良かったよなぁ?」

周りから拍手がわく。

サヤが座ったまま頭を下げた。


「ウチの営業課の今泉の発表どうだった?今日は特に自信を持って発表出来てたなぁ。何でか分かるか?

来月、そこに居る資材課の向井さんと結婚するんだよ」


ドッと、歓声が上がり、さっきよりも大きな拍手がわきあがる。

「おめでとう〜!」とみんな口々に言い、鳴り止まない拍手の中、秀人とサヤは立ってお辞儀をした。

サヤに限っては恥ずかしそうにし、座ってからもパタパタと赤面した顔を仰いでいる。


一度静まるのを待ってから、坂本課長は続けた。

「仕事は一生懸命やった方が絶対面白い。

一生懸命やった結果の失敗なら、君たち上司が必ずフォローしてくれる。

だから失敗を恐れずにどんどんやりなさい。


恋愛も一緒。ウチの会社は不倫以外は社内恋愛認めているし、どんどん恋愛もしなさい。

特に今の2人の様に、お互いを高め合う事の出来る相手なら、尚いいじゃないか。

なんなら僕が相談にのってあげるから気軽に営業課に来なさい。ウラ情報もそっと教えます」





秀人と手を繋ぎながら、夜の散歩をする。

「今の気分はどう?」

「う〜ん、なんか不思議な感じ。いつもと変わらないのにドキドキしてる。秀人は?」

「ついにこの日が来たか、って思ってワクワクしてる」


「秀人、私を選んでくれてありがとう。私今、凄く幸せだよ」

「オレの方こそ、サヤさんに出会えて本当に良かった。愛してるよ」

お互い見つめ合って笑う。


「これから、もっと幸せになろうね」

「うん。もっと幸せにするからね」


「サヤさん子供すぐに欲しい?」

「ん〜、うん。こればっかりはタイミングもあるけどね。でも、出来たら嬉しいな」

「サヤさんそっくりだったら、女の子でも男の子でもどっちでも可愛いいなぁ…」


仲良く並んで歩く2人の姿を、満月が見守っている。

明日、サヤの25歳の誕生日で、秀人25歳最後の日に、向井サヤは『今泉サヤ』になる。



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