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砂の城  作者: F
55/60

元旦

路子さんの店の近くの海で初日の出を見た。

ハッキリと見える、昇る太陽の神秘的な光景に、心が奪われる。

薄明の中、秀人はサヤを見てより強く手を繋ぐ。

サヤは秀人に身を寄せた。


「キレイに見えたねぇ」

サヤがまだ興奮状態なのがよく分かる。

すっかり明るくなった浜を、手を繋いでゆっくり一歩ずつ歩く。


「サヤさんは、今年の目標立てた?」

「最近楽しい事が多すぎて全然考えてなかった。

思い出してみるよ。まずは、クリスマスでしょ。一緒にイルミネーション見たよね。ゴルフ用品のプレゼント交換もして。それから…忘れられないライブ!」

「まさかサヤさん、好きな曲のとこで泣いちゃうとは思わなかったよ」

「私も自分でビックリした!」

サヤが笑う。


「お休みに入ってからは…」

「お互いの部屋を一緒に大掃除もして。サヤさんご飯作るより掃除の方が得意だもんね。」

「うん。ご飯は秀人が作った方が盛り付けもキレイだし上手」

「大学時代の友達とも会ったし…」

「秀人のお友達、面白かったよね。ずっと笑ってたね」

「昨日は路子さんの店で年を越したしね」

「秀人の誕生日にケーキをお裾分けした子と会えるなんて思わなかったよ。人懐っこい可愛い子だったね」


2人で顔を見合わせながら歩き、駐車場に着く。

「サヤさん、何飲む?」

「温かいお茶がいいな」

取り出したお茶をサヤの頬に当てると、〝温か〜い〟と顔をくしゃっとさせる。

可愛い顔に、もう1本もさらに当てて、キャッキャとサヤを笑わせる。



「今日も1日あっという間だったね」

海からそのまま秀人の実家に挨拶に行き、お墓参り等済ませて、夕食は戻ってきてサヤの家でご馳走になった。


「ホントあっという間…って、秀人またラブレター書いてくれてるの?」

「このファイルいっぱいにしたいんだ」


秀人がサヤの部屋で書いたレポート用紙は、キレイにファイルされて増えていく。

秀人と長期の出張で会えない時、読み返すのがサヤの楽しみになっている。

ラブレターとは言うものの、愛の言葉だけではなく、日記の要素も含んでいて飽きない。


「また後で読むの楽しみだな〜」

「お楽しみに!」


書き終えた秀人がサヤの隣に座る。

サヤの顎を上げ、キスをした。

「明日は何しようか?」

「ん~、3日の日に初売りに行きたいから初詣とか…?」

「おみくじ引く?」

「もちろん!」

「4日はゴルフで、5日は会社の前日だから一緒に料理をしてのんびりしようか」

「そうしようか」


「5日の日にさ、サヤさんに聞きたい事があるんだ」

「5日でいいの?」

「この休み中、オレと沢山一緒にいて、直して欲しい事とか気付いた事とかを教えて欲しい。あっ、もちろん日頃思っていた事でもいいよ」

「秀人に対してのお願いって事?」


「そう。だからちゃんと冷静にオレの事見てて」

「難しい宿題だけど、気にしてみるよ。

で、それは私に対してはいいの?」

「サヤさんに対して、か…」


「うん。秀人が言いたいのは、これからの為を思っての質問でしょ。私に対しても考えてみてよ。自分では気付いてない事もあるかもしれないし…」

「うん、お互いの宿題にしよ」


サヤが話しながら無意識に触っているクマのぬいぐるみはクリスマス仕様だ。

数ヶ月前の出張で、お得意様に試作の量で注文頂いた新しい材料は、その後他の色も含めて大量に注文頂くようになった。


少しばかりのお礼のつもりで、材料を使用した服を着ているぬいぐるみを購入した。

可愛いし手触りが気持ちいいから、とサヤも気に入っている。


サヤの部屋は、整理好きもあって余分な物が少ない。

今ある物は必要な物ばかりだろう。

今までの私服を見る限り、服だけは沢山あるかもしれない。


「秀人、さっきからキョロキョロしてどうしたの?」

「ごめん、改めてサヤさんの部屋を見たくなって」

「大掃除の時に細かい所まで見たでしょ」


「サヤさんと同じだよ」

「どういう意味?」

「細かい所まで知っていても、改めて見たくなるの!」


そう言うと、秀人はサヤの顔をじっと見る。

こらえきれずに、笑い出すサヤに今日何度目かのキスをした。


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