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砂の城  作者: F
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近い将来

サヤの実家で夕食をご馳走になるのも、数え切れなくなった。

昼間サヤの父親含めた3人でゴルフの練習に行った帰りに寄らせてもらっている。


サヤが意外な才能を発揮してメキメキと腕が上がっているのには驚く。

今日までは打ちっぱなしで練習していたが、今度はショートコースに出てみよう、と話した位だ。




父はビールを飲み、サヤと秀人は今日のゴルフの出来栄えを母に話す。

和気あいあいとする雰囲気で、済んだ皿を片付けだす。

「今日も美味しかったです」

秀人の言葉に、母が喜ぶ。

「秀人くんが来ると沢山食べてくれるから、作りがいがあって」

「お母さん、朝から鼻歌歌ってるよ」

サヤの言葉に秀人が微笑む。



「フルーツでも切ろうか」

子供の頃のお弁当は、サヤがブドウで、真由はリンゴだったから、今でもこの時期はブドウとリンゴを買っちゃうの、と母が笑う。


「秀人くん、この前の病院、結果はどうだった?」

飲みだしたら無口になる父が、久しぶりに口を開いた。


「おかげさまで、血液検査の数値が安定しているので少し薬の量が減りました」と秀人が答える。

「良かったわね」と母が言う。


「今度病院行くのは3ヶ月後か…?」

「えぇ。これで安定すればまた間隔は延びると思いますが」


「秀人くん…言いにくいかもしれないが…その…もしこのままサヤと家庭を持ったとして、私達は健康な孫を見れるのかな?」


一瞬時が止まる。


「お父さん、何も今聞かなくても…」母がたしなめる。

「そうだよ、いくらなんでもまだ早いよ」サヤも合わせる。


「いや、早くはない。今だからこそ確認しとかなくてはいけない事なんだ」と父がキッパリと言う。


秀人は一瞬戸惑いを見せたが、「今までの主治医の話では…」と話始めた。

これまでの検査結果を織り交ぜながら、秀人は父に丁寧に説明している。

サヤは秀人に説明させてる事を申し訳なく思い、早く時間が過ぎないか、と願ってしまう。



サヤの部屋に入ると、いつもの位置に座るが、今日は抱き枕は抱えない。

サヤの元気がない理由は分かっている。

そのままサヤをそっと抱き寄せる。

「お父さんが聞くのは間違ってないよ。オレが父親の立場なら同じ事をしてたと思う」

「言いにくい事を言わせてごめん…」


「サヤさん、オレ達にとってはすごく大事な事だし、お父さんはオレ達の将来まで考えて聞いてくれたんだと思うよ」

「だとしても、今聞かなくても良くない?」


秀人がそっと体を離して、サヤと向かい合う。

「オレは近い将来サヤさんと一緒になって、恵まれるのなら子供も欲しいよ。サヤさんはそう考えた事ない?」

「もちろん秀人とそうなれれば嬉しいけど…」


「お父さんに質問された事は遅かれ早かれ説明しなきゃいけない事だから、なんとも思ってないよ。

それよりオレは、サヤさんが〝まだ早い〟って言った事の方がショックだったかな」


秀人を見つめる。

愛おしむ様に、サヤの頬を撫でる。

「サヤさんとの未来を夢見てるのはオレだけだった?」

「そんなことないよ、ちゃんと私だって考えてるよ」


秀人がサヤの頭を撫でる。

「今日は帰るよ。明日も休みだしまた明日ゆっくり話そう」

「うん…」


秀人の車を見送る。

今日は別れのキスもしなかったな、と思う。

秀人をキズつけてしまったのかもしれない。

自分の気持ちが上手く伝えられなかった事のもどかしさで、落ち着きがなくなってしまう。

なんでもっと素直に、飾らずに想いを伝える事が出来ないんだろう。

秀人はいつも私を想ってくれるのに。


たまらず、秀人に電話する。

「秀人…今電話大丈夫?」

「停まってるから大丈夫」


「私ね、秀人の事が大好きだよ。それは病気が分かってからも変わらない。

ただ…未来を想像するのが、少し怖かったんだと思う。秀人と結婚して、子宝にも恵まれた未来なんて、今よりももっと幸せな未来なんて、想像したら何かが壊れてしまう気がして。

今でも充分幸せなのに、欲を出したら今の幸せが逃げていってしまいそうで」


秀人がつぶやく様に言う。

「サヤさん、ホントにバカだなぁ」

エンジンをかける音がする。

「まだ近くに居るし、迎えに行くから少しドライブしよ。お母さんに言っておいて」



ハンドルを握りながら、時折サヤを見て、秀人が話す。

「オレはサヤさんと一緒に居ると、サヤさんの笑顔が見たくなる。幸せそうに笑ってくれればそれがオレの幸せなんだ」

「うん」

「今が幸せの頂点だと思わずに、もっと欲を出して。そうすればオレはもっとサヤさんを笑わせようと頑張るから」

秀人と目が合う。

「今の幸せは逃げないよ。これからも一緒に今以上に幸せにならない?」


ハザードをたいて空き店舗の駐車場に停車する。

ハザードの音が鳴っている。

シートベルトを取り、サヤの顔に触れる。

しばらく、2人で見つめ合うと照れてしまう。


「サヤさん、大好きだよ」

「私も大好き」


時々激しくなるキスに体中に電気が走る。

秀人の腕を掴む。

長いキスの後、そのままサヤを抱きしめ耳元で囁く。

「今すぐ抱きたいなぁ」

そう言うと首筋に軽くキスをした。

「でもお楽しみは明日に取っておくよ。覚悟しといて」



サヤの家の前で停まると、秀人が言った。

「3ヶ月後の診察の時、嫌じゃなければサヤさん一緒に来てくれる?オレの病気の事、もっと知ってもらえれば、安心出来るかも」

「うん、そうしたい」

軽いキスは、いつもの一旦お別れの挨拶。

照れくさそうに笑うサヤがいつも以上に愛おしい。



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