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砂の城  作者: F
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リフト

最近の予報はよっぽどハズレる事がない。

ただ予定より早く、雲行きが怪しい。


早目に出勤したサヤも、検品を後回しにして先に雨除けの為にビニールをかけてまわる。

今日は、あとトラック2台が来る予定だ。


「向井さん、今日リフト乗る人が1人急病で休んでるわ」

フォークリフトを動かしてくれる、60代のベテランが言う。


「そっか、困ったね…課長出勤したか確認してくるね」

サヤは駆け足で内線をかける為に、現場事務所へ向かう。


「サヤさん!」

聞き慣れた声に反応し、無条件で微笑んでしまう。

「秀人、早いね」

「雨降ってきそうだけど荷物どう?」

「リフト動かせる人が居なくて、課長来たか確認しようかと思って…」


「江川課長なら直行だったから、オレに任せて」

秀人はジャケットをサヤに預けて、走って材料倉庫へ向かう。

サヤは秀人の服をデスクに置いて、秀人を追いかけた。


サヤが追いついた時には、秀人はヘルメットを被り、リフトを動かしている。

「秀人運転出来るんじゃん」


サヤも急いで作業に加わり、検品を始め、終わった材料から動かしてもらう。

今外にある材料だけ何とかなれば、後から入る材料も雨は免れそうだ。



「何で黙ってたの?」材料倉庫の隅で、体を軽く触れさせて聞く。

急ぎの作業に目処がついて、みんなそれぞれの持場に散らばっていた。


「そりゃ、サヤさんに惚れ直してもらえるように」

それを聞いてサヤが秀人に耳打ちしようとし、秀人はサヤに耳を傾ける。

「もう充分好きだけど…?」

秀人がニヤけて下を向いた後、そっとサヤと手を繋ぐ。


少しの間2人の空間に酔う。

次第に雨の降る音がしてきた。

「お昼ズラして食堂行こう」

「うん」




「土、日曜の講習で免許取れるんだよ」

「いつの間に?」

「サヤさんと離れてる時。何かに集中してないとダメになっちゃいそうで、思いついたらすぐに申し込んじゃった。結局、サヤさんの事忘れられないからの行動だよね」


秀人は日替わりの唐揚げ定食を食べ、サヤはパスタを食べている。

こういう事を聞くと、サヤだけが苦しかったのではなく、秀人も一緒に悩んでいたんだな、と思う。


「私も取りに行こうかなぁ」

「イヤ、重い荷物を動かさなきゃいけない時もあるし、とりあえず人数は足りてるんだから、オレ呼んで。ねっ」

「分かったよ」

「サヤさん、ホントに取りに行きそうで怖いんだよ。はい、唐揚げ1個あげるから許して」


「秀人、今度オムライス作ろ」

「うん、また今週末にでも作ろうか。でも何でオムライス?」

「ふわとろオムライスって見たら食べたくなっちゃった。多分、秀人器用だから卵の部分を上手くやってくれると思うんだな」

「出張中に動画見て勉強してみるよ」

秀人が笑って言う。



「異動の話はなくなったけど、長期出張の話は無くなってないんだよなぁ」

先に食べ終わった秀人が、お茶を飲みながら言う。


「異動の話?」

「サヤさんに言ってなかった?南営業所の2人が辞める時に、オレに声がかかってたって」

「それは、木下さんが行った話じゃなくて…?」


「そうそう、木下さんに決まる前にオレに声がかかってたんだよ」

「あれ…?」

サヤが首をひねる。


「例の送別会で悟が追いかけて来た時に、木下さんが後任で手を挙げてるって聞いてたけど…?」

「えっ?」


課長との話し合いを思い出す。

課長は1週間返事を待つって…。

(あの課長…!やられた!

でももし、本当に異動を希望したらどうするつもりだったんだろ…)


下を向いて首を振る仕草の秀人が心配になる。

「秀人、大丈夫?」

「オレ、ウチの課長には一生勝てないわ」

「私も坂本課長好きだよ」

「いや、サヤさんがそれ言うのはやめて。

そういえば、課長、サヤさんの事お気に入りなんだよなぁ」


サヤを見る。

「?」っと首をかしげるサヤを見て秀人は思う。

最大のライバルは課長ではないか、と。



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