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砂の城  作者: F
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計画

「今年の誕生日が土曜と日曜なんて、オレ達を応援してくれてるとしか思えない。ほらっ、サヤさん見て!」

食堂の年間カレンダーを見て、秀人が指さす。


「秀人、その前にゴールデンウィークがあるよ」

「休みの計画するのが楽しみだね」

「ねっ」


時間をズラして、食堂で2人でお昼を取る。


「サヤさん、さっきウチの課長と話してたけど、何か用事があったの?」

「見てた?」

「目に入ったの」


「…秀人ブロッコリー食べる?」

差し出されるけど、サヤの上目遣いには騙されない。

「サヤさん、食べれるでしょ」


「何か仕事頼まれてた?」

「そうだね、ある意味頼まれてたかな」

ごまかし方が気になる。


「そんなに言えない事?」

「言ったら秀人、もっと課長の事好きになっちゃうよ、それでもいいの?」


「えっ?ないない。あの人、人の恋愛はこじれた方が楽しいと思う人だよ」

秀人が味噌汁を飲みながら、ないないとまた言う。


「ちゃんとまた付き合っていく事になったからお礼を言っていたんだよ」

「…課長に?」


「秀人が入院した時もいち早く連絡してくれたし、離れてる間、見るに見かねて、気にしてくれてたの。ツライと思うけど、秀人はまた必ず戻ってくるからもう少しだけ待ってやってくれないかって」


「えっ?」


サヤは深く頷く。

「秀人に伝えるのは、課長の本意ではないと思って言わなかったんだけどね。

たまたまお会いしたから、ご心配おかけしました、ってお礼だけでもね」


昨日の課長の話が全てではないんだ、と思い知らさせる。

「…オレからも後で言っておくよ。

奈緒さんにはさっき祝福してもらったから、川島先輩にも話をしなきゃ」


「悟には私からも今日のジムの時話をするよ。ネクタイも渡さなきゃ」


「みんなに支えてもらってるって実感するな」

「うん、ホントだね」


「サヤさん…」

「ん?」


「みんなに支えてはもらってるけど、オレにとって一番大事なのはサヤさんだから」

「うん」


「何かあったら一番はオレに頼ってよ。

その前にそうなれるように頑張るからさ」

「うん」

ニッコリと笑うサヤに触れたくなる。


そうそう、と秀人がポケットからケースに入ったSDカードを取り出す。

「サヤさん、この前気に入ってた曲いれておいたよ」

「えっ!嬉しい!ありがとう。今日の帰りに早速車の中で聞いてくね」

カードを見ながら、喜ぶサヤに聞く。

「最近まで好きだった韓国の俳優と、このグループと今はどっちが好きなの?」

「今は、こっち。歌もいいし、ボーカルの人がちょっと秀人と似てるから」



秀人から「今日はジム行きますか?」と聞かれた時に悪い予感がした。

オレが通っている事をなぜ知っている…?

今日は、いつもより早く帰るつもりで、準備してきた。


「色々ご迷惑かけましたが、サヤさんにもう一度チャンスをもらえることになりました」

秀人が隣の席で手を止め、座りながら姿勢を正して言う。

(そういう事か…)


「サヤさんを支えてもらって、ありがとうございました」


「別にお礼を言われる筋合いはない。ただ弱ってるサヤをほっておけなかっただけだし」

「はい」


「オレはこれからも同期としてサヤと関係を続けていく。それでいいよな?」

「はい」


「お疲れ」

「お疲れ様でした」


悟の背中を見送る。

川島先輩らしい会話だと思う。




「結局、付き合う事になったんだ…」

後ろから声がかかって、驚いた。


「あれ、麻生。お前課長とさっき出ていかなかった?」

「書類を取りに戻ったんだけど、別に聞かれてマズい話でもないでしょ」

「そうだな」


秀人がパソコンに目を移す。

「ねぇ、秀人…

もし向井さんと出会ってなければ私の事好きになってた?」


美玖の質問に秀人が振り返る。

「サヤさんと出会ってなくても、麻生とはそういう関係にはならないよ。

それよりお前、課長待ってない?」

美玖は取りに来た書類を持って、無言でその場を離れた。

秀人はそっとため息をついて見積もりの最後の仕上げにとりかかる。




「じゃあ、天気が良かったらこの日に実家へドライブにして悪かったら映画の日と交換しようか」

「うん、あと1日買い物の日と夜は女将さんのお店に行く日も欲しいなぁ」


早速お母さんの誘いで秀人が夕食を食べに来た。

お母さんも「秀人くんが来ると若返るわ〜」なんて言って楽しそうにしている。


会話で会社の様子が分かるのも安心するらしく、2人で話をしてるのをニコニコ聞いてたりする。


夕食後に、サヤの部屋で今日はゴールデンウィークの計画を立てる。


「結局、休みに入る前が一番楽しいんだよな。小学生の時の遠足と一緒でさ」

「お休み入っちゃうと、あっという間だもんね」


「今年はサヤさんと一緒にいられるから、余計に早いかもしれないな」

「そうかな?」

「楽しい時間程、経つのが早いからさ」 


秀人が手を伸ばし、サヤを抱き寄せる。

「やっぱりこの抱き枕が一番いい」


秀人の心臓の音が聞こえる。

ゴツゴツした体と秀人の匂い。頭を優しく撫でる手に安心し、身を委ねてしまう。


「眠くなる…」

「寝てもいいよ。後でキスして起こしてあげる」


無防備なサヤの姿が可愛いくてついちょっかいを出したくなる。

(ホントに寝ちゃう…?)


静かな寝息だけが聞こえる。

安心しきってくれてるのだろう。

サヤをしっかり支えるように、さらに強く抱きしめた。


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