相性
毎回、検査結果を聞きにくるのは緊張する。
診察室に入り椅子に座ると、瑛人の時からお世話になっている担当医が、結果を見ながら頷いた。
「秀人くんは、この薬と相性いいよ」
「本当ですか?」
「一生薬は飲み続けなくちゃいけないけど、前回と今回の結果をみる限り、数値は安定してる」
ホッと胸を撫で下ろす。
「瑛人くんの事もあって、不安になるよな」
秀人が頷く。
「でも、今は自分の体と医学の進歩を信じて欲しい」
「はい」
「この前、念の為、と妹さんの検査もしたけど異常なかったよ。
ご両親にも症状が出てないから、目に見える結果だけで言えば、〝発症リスク〟は高いかもしれないけど、〝確実に発症する〟とはいえない状況だな」
「そうですか…」
「瑛人くんが発症してからお酒も甘いものも止めてるんだって?」
「願掛けも兼ねて…」
「秀人くんに任せるけど、適度になら全然大丈夫だから。
そんなに自分を縛り付けなくていいし、秀人くんはもっと自由に生きていいんだよ」
「…はい」
泣きそうになる。
長年の呪縛が解けていくようだ。
病院の駐車場まで、うららかな春の日差しの中を歩く。
この検査結果を聞いて、真っ先に誰に知らせたかったのか、誰に一番喜んでもらいたかったのか…
(オレは本当にバカだな)
早足になり、携帯を取り出す。
少し緊張する。
もしかしたら、もう着信拒否されているかもしれない。
そうしたら、川島先輩に頼み込んで…
つがらない時に備えて、色々考えを巡らす。
呼び出し音が鳴る。
(サヤさん、お願いだから電話に出て!)
「もしもし…」
「サヤさん?」
無言のままだ。
「もう一度話がしたいんだ。今から迎えに行くからどうしても会って欲しい」
「…私はもう話すことはないよ。もう連絡してこないで…」




