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砂の城  作者: F
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「サヤ、誤解だって!」

やっとの思いでサヤの腕を掴む。


元陸上部の奈緒でも、久しぶりに走ったらキツイ。

特に荷物も持っていたから、走りにくかった。


「サヤ、走るの早い…」

乱れる呼吸を整える。


「あの2人、悟も一緒だったよ」


サヤが息を整えながら、涙を拭う。

「奈緒、助けて…」


泣くサヤを抱き寄せる。


(平気なふりをしてても、無理してると不意に崩れてしまうね)


「大丈夫だよ、大丈夫」

サヤを労っていると、


「お〜い!」と

ドタバタと走ってくる足音が聞こえる。


「あれ、悟…?」 


「お前ら、足はぇ~」

ハアハアと誰よりも息を切らす。

サヤと奈緒は顔を見合わせて笑ってしまう。


「車だからさ、帰り送るよ。コーヒー飲もうぜ。荷物も大変だろ?」



「営業課全体で展示会に行った帰りで、そのまま送別会だったんだ」

「誰か辞めるの?」

「南営業所のヤツだけどな」


悟はコーヒーを飲んで、2人の荷物を改めて見る。

「それにしてもよく買ったなぁ〜。無駄遣いじゃねぇ?」

「無駄遣いじゃないよ!」

2人で顔を見合わせて〝ね〜〟と口を揃える。


そんな2人を微笑ましく見る悟。

「コレ見てよ」

奈緒が自分の紙袋を開けながら、説明する。


「これが、春物のニット。色がいいでしょ?サヤと色違いで買ったんだよ」

自分の体に当てながら説明する。


「その色、奈緒に合ってるよ」と悟。


「これが春物コート」

「コレは今からでも着れそうだな」

「奈緒なら丈もちょうどいいでしょ?」とサヤが言うと、

「サヤだと、時代劇みたいに引きずりそうだしな」と悟が笑う。


「だから、私は買わなかったの!ちっさいってバカにしてる?」

悟がサヤを見てニヤニヤ笑っている。


「あと、これがパンツだよ。ハーフパンツでカッコいいでしょ」

「サヤならくるぶしまでくる長さだな」

「ちょっといい加減にして!」

怒るサヤに、お腹を抱えて大笑いする悟。


「それと…これ、なんだっけ?」

(あっ…!)

「奈緒、それは開けちゃダメ!」


サヤが、急いで隠すけど悟の目にはバッチリ入ってしまったらしい。

(間に合わなかったかぁ…)


「奈緒…お前そんな下着つけてんの?風邪ひくぞ」


サヤの方を見る。

「サヤは買ってないよな?」


「お父さんみたい…」


「娘たちの心配して、何が悪いんだよ」と悟がコーヒーを飲んで時計をみる。

「そろそろ送らないと、本物のお父さん達が心配する時間だな」




奈緒がトイレに行ってる間に、悟がサヤに言う。


「さっき泣いてたのは、秀人の事か?」

サヤがだまって頷く。


「無理する必要はないんじゃないか?

そのうち、だんだんと日常になっていくさ」

「うん…」


「秀人、自分に病気が見つかったからって言ってたけど…」

「秀人から聞いたの?」

「あぁ、つい最近な。

長期の出張は自分にしてくれって課長に頼んでるし、あいつもサヤになるべく会わないようにしてる。

でも、お互い無理しても今日みたいにどこかで崩壊するし自分の気持ちと上手く並走しないとな。

服を選ぶ時、自分の体に合わせるように」

「うん…」


「なぁ、話は変わるけど今度オレに春っぽいネクタイ選んでくれよ」

「えっ?ネクタイなんて選んだ事ないよ」

「だからいいんだろ」


奈緒が戻ってきた。

3人で駐車場に向かう。


「悟、お母さんに会っても〝若返った〟は禁句だからね。何回も聞かされてるこっちの身にもなって」

とサヤが言う。


「よし、今日は〝この前よりさらに若返ってますね〟だな」

悟なら本当にサラッと言いそうで怖い。



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