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砂の城  作者: F
36/60

味覚

最近、ご飯を食べていても味がしない。

味覚がおかしくなってしまったみたい。

どうしても食べる量が減ってしまう。


母を心配させたくないから、無理やり最低限の量は食べる。


「おにぎりにする?」

残したご飯を見て母が言う。


「大丈夫、自分でやるから」

炊飯器からもご飯を足して、ラップに包んで握りだす。

今日のお昼の分とジムに行く前に食べる分だ。


横に並んで母も手伝ってくれる。


「サヤのおにぎりは小さいのよ。それじゃもたないよ。ジムも寄ってくるんでしょ」

炊飯器からまたご飯を足す。


「多いよ」

「ボディービルダーでも目指してるの?お腹割れてきたか、見せてよ」

母が服をめくってくる。


「ちょっと握ってるんだからやめてよ」

朝早くから、キャッキャと親子でじゃれ合っていると父が食卓につき、「オレにも、おにぎりちょうだい」と言っている。


〝はい、はい〟と母が味噌汁とともに用意しだす。





サヤを見送った妻に声をかける。


「…サヤはどうだ?」


「忘れようと必死みたいね。時間が出来たらジムへ行くか、独りでドライブ行くか、奈緒さん達と食事に行くか…予定を沢山入れて…。


周りの同期の子達が支えてくれてるみたいだから安心してるけど、ツラそうね…」


戻ってきて、隣に座った。

「この前酔ったサヤを連れてきてくれた大柄な子も同期か?」


「悟くんね。あの子久しぶりに会ったのに、〝お母さん、若返ってます〟って言うのよ」

妻が思い出したようにケラケラ笑う。


「お世辞だよ」

「分かってます。何にしてもサヤは頑張ってるから…

そういえば、私があなたと付き合っている時も、何度か泣かされた気が…」


「おっと、時間、時間」

慌ててその場を後にしながら、妻に声をかける。


「真由帰ってきたら、いつもの所予約して!」

「はい、はい」


食後に娘たちが大好きなケーキが食べられる、ホテルのレストランだ。

いつまでたっても娘達には甘い。





昼休み、女将さんのインスタが更新されているのを見つけた。

新メニューが出るらしい。


久しぶりに会いたくなる。

DMを送るとすぐに返事が来た。


〝看板娘待ってるよ〟


確か、秀人は明日は1日出張だと奈緒が言っていた。

営業部のホワイトボードを見たらしい。


だから、お昼は食堂で一緒に食べようと誘ってくれた。

秀人をなるべく避けているのを、奈緒もよく分かっている。



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