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砂の城  作者: F
33/60

ただのケンカ

「秀人、大丈夫だったの?」

週明け、早速見かけた秀人を捕まえる。


「おかげさまで良くなりました」

奈緒には、いつものニコニコしてる秀人にしか見えない。


「私が聞いてるのは、インフルエンザの事じゃなくてサヤの事だよ!」

秀人の目が泳ぐのを見逃さなかった。


「まだ仲直りしてないんだね…そもそもの原因は知らないけど、早く仲直りしなさいよ、子供じゃないんだから…」

奈緒は腕組みをして、不快感を表す。


「…はい」

下を向いている秀人が何か言いたそうで、隠している。


「早い方がいいから、サヤを呼び出そうか?」


秀人が少し迷って、自分に納得させるように大きく頷いた。

「お願いしてもいいですか?」


本当に2人とも素直じゃないんだから…とホッと胸をなでおろす。

2人が楽しそうに笑い合ってる姿がいつも微笑ましくて、またその姿が見れる事が嬉しいと思った。


「奈緒さん、お願いついでに…」

「何?」

「サヤさんと話をした後、サヤさんの事頼みます」


秀人が拳を握ってまっすぐ奈緒を見る。


「えっ?どういう意味?」


それじゃ、まるで…


「なんで?サヤの事好きじゃなくなったの?」

「…僕の気持ちは何も変わってないです。

今も変わらずサヤさんが大好きで…。

ただ、僕が弱いだけです。

僕はもう、サヤさんが泣いても抱きしめてあげられない…」


秀人がここまで言うには、何かがあったに違いない。ただのケンカで終わらないような…


「秀人…それはもう一度ちゃんと2人で話をした方がいい。2人で話し合ったら何か解決策が見つかるかもしれないよ?

何でお互い好き合ってるのに、離れなきゃいけないのよ…」


奈緒の泣きそうな顔に秀人は何も言えなくなる。


「今日の終令後に、食堂前の長椅子のところで待ってます」

秀人がお辞儀をして、離れて行った。


奈緒は、やりきれない気持でしばらく佇んでいた。


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