ただのケンカ
「秀人、大丈夫だったの?」
週明け、早速見かけた秀人を捕まえる。
「おかげさまで良くなりました」
奈緒には、いつものニコニコしてる秀人にしか見えない。
「私が聞いてるのは、インフルエンザの事じゃなくてサヤの事だよ!」
秀人の目が泳ぐのを見逃さなかった。
「まだ仲直りしてないんだね…そもそもの原因は知らないけど、早く仲直りしなさいよ、子供じゃないんだから…」
奈緒は腕組みをして、不快感を表す。
「…はい」
下を向いている秀人が何か言いたそうで、隠している。
「早い方がいいから、サヤを呼び出そうか?」
秀人が少し迷って、自分に納得させるように大きく頷いた。
「お願いしてもいいですか?」
本当に2人とも素直じゃないんだから…とホッと胸をなでおろす。
2人が楽しそうに笑い合ってる姿がいつも微笑ましくて、またその姿が見れる事が嬉しいと思った。
「奈緒さん、お願いついでに…」
「何?」
「サヤさんと話をした後、サヤさんの事頼みます」
秀人が拳を握ってまっすぐ奈緒を見る。
「えっ?どういう意味?」
それじゃ、まるで…
「なんで?サヤの事好きじゃなくなったの?」
「…僕の気持ちは何も変わってないです。
今も変わらずサヤさんが大好きで…。
ただ、僕が弱いだけです。
僕はもう、サヤさんが泣いても抱きしめてあげられない…」
秀人がここまで言うには、何かがあったに違いない。ただのケンカで終わらないような…
「秀人…それはもう一度ちゃんと2人で話をした方がいい。2人で話し合ったら何か解決策が見つかるかもしれないよ?
何でお互い好き合ってるのに、離れなきゃいけないのよ…」
奈緒の泣きそうな顔に秀人は何も言えなくなる。
「今日の終令後に、食堂前の長椅子のところで待ってます」
秀人がお辞儀をして、離れて行った。
奈緒は、やりきれない気持でしばらく佇んでいた。




