表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
砂の城  作者: F
30/60

複雑

下を向いて駐車場に戻ってきた時から、悲しみを背負っていた。

前向きな話は出来なかったのだろう、と思う。


助手席に乗り込む娘に最適な言葉はなんだろう…


「また泣いたの?」

余計に腫れた目を気遣う。


「サヤの涙がなくなるよ」

「なくならないから困ってるの」

そう言って、また拭う。


「一生分の涙を流してるわね」


ゆっくりと車を出発させる。


サヤがぽつりぽつりと話し出した。

「秀人がね、弟さんと同じ病気になったんだって」


ハッとして、喪服を用意していたサヤを思い出す。

「今日は手も握ってくれなかったよ」

サヤはふぅ~と大きいため息をつくと、シートを少し倒した。


目にハンカチを被せて、目を休ませているようだ。


「秀人に考える時間が欲しいって言われちゃった…」


(ツラかったね…)

手を伸ばし、サヤの腕辺りを撫でる。


「お母さんだったらどうする?」


ちょうど赤信号で、サヤの方を見る。


「お母さんなら…秀人くんの返事を待つかな」

「でも、秀人はもう答えを出してあるよ。

ただ、私にどう伝えるか、を考えているだけ」


「どうして分かるの?」

「ずっと悲しい顔をしてるから…」


青信号になる。


「もう好きでいたらダメなのかなぁ…」

娘の気持が分かり切なくなる。


「サヤはどうしたいの?」

「秀人と…ずっと一緒にいたい。

でも、嫌われたくない」


最後はまた涙声になっている。


母親としては、複雑で気持の整理がつかない。

未来を考えたら、秀人くんが考えている方が正解だと思う。


ただ、昨日からの娘の様子をみているとどちらが正解なのかわからなくなる。

秀人くんは、数回会っただけだが、とても誠実な青年だった。


「お母さん、心配かけてごめんね…」

サヤが、小さな声で言う。


返事の代わりにまた、腕を撫でた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ