支え
斎場へ向かう車の中は、どうしても重苦しくなる。
運転してる悟がネクタイを緩めて、窓を開けた。
帰宅ラッシュと重なり、道路が混んでいる。
「サヤは知ってたの?」
後部座席から奈緒が聞く。
「うん…。少し前に聞いた」
「20歳そこそこで亡くなったら、家族はツライだろうなぁ」
悟が呟くように言う。
「隣の席に居ても、直前までそんな素振りも見せなかったけど、人知れず悩みを抱えていたんだな…」
斎場に着いて、受付をし前の人に続いて列に並ぶ。
故人の人柄からか、同年代の参列者が多く目に入る。
正面の遺影に目を奪われた。
弟さんはすごくいい顔で笑っている。
「秀人と似てるね」
「本当、良く似ている」
奈緒と一緒に見入ってしまう。
父親と挨拶に立っている秀人は、気丈に振る舞っていた。
3人を見付けると、父親に紹介し、「遠いところをありがとうございます」と挨拶した。
「母親がダウンしちゃって、挨拶出来なくて。
さっき課長も来てくれたんだ」
「秀人、お前は大丈夫なのか?」
悟が聞く。
「今は気を張ってるんで…。弟の顔、見てやって下さい」
3人を誘導しながら、サヤには目で挨拶し、次に
「奈緒さんも、わざわざありがとう」と言った。
秀人の弟(瑛人)さんは、穏やかな顔で眠っていた。
サヤは心の中で話しかける。
(お兄さんはあなたが大好きですよ)、と。
流れに沿って出口まで来た時、奈緒が言った。
「サヤ、もう大丈夫?」
秀人との事を気遣い、もう帰って大丈夫か?と聞いてくれているのだろう。
「うん、今日は忙しいし家族優先の方がいいしね」
奈緒も納得したように、「じゃあ」と会場を後にするよう悟に合図するが、悟は「いや」と言った。
「サヤ、秀人と少しの時間でもいいから会ってこい」
「えっ?」
「この会場で、秀人が支える人は沢山いるかもしれないが、秀人を支えれる人は数少ないんじゃないか。
待っててやるから会ってこい」
「悟…」
奈緒に視線を向けると、頷きながら、行ってと合図している。
「じゃ、挨拶だけしてくるね」
戻るサヤの後ろ姿を見て、奈緒が悟の横腹を突いた。
会場に戻ると、すぐに秀人が気付いた。
「サヤさん、どうした?」
「悟が、ちゃんと会ってこいって」
「そっか…今ちょうど会社の人もいないし控室行こう」
すぐ裏の控室へ移動する。
用意されている缶ジュースを袋に入れると、みんなで分けてと渡してくれた。
「ちゃんと食べれてる?」
「数日バタバタしてて、正直ちゃんと食べた記憶がないけど、そのうちまたサヤさんと美味しいものを食べに行くから大丈夫」
「うん」
「サヤさん、元気ちょうだい」
秀人がサヤの両手を取る。
願いをこめるように、握る。
サヤも心の中で(頑張れ、頑張れ)と言いながら。
「もう少し、別れを惜しんでくるよ」
そう言って、秀人は会場へ戻って行った。




