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砂の城  作者: F
18/60

支え

斎場へ向かう車の中は、どうしても重苦しくなる。

運転してる悟がネクタイを緩めて、窓を開けた。


帰宅ラッシュと重なり、道路が混んでいる。

「サヤは知ってたの?」

後部座席から奈緒が聞く。


「うん…。少し前に聞いた」

「20歳そこそこで亡くなったら、家族はツライだろうなぁ」

悟が呟くように言う。


「隣の席に居ても、直前までそんな素振りも見せなかったけど、人知れず悩みを抱えていたんだな…」




斎場に着いて、受付をし前の人に続いて列に並ぶ。

故人の人柄からか、同年代の参列者が多く目に入る。

正面の遺影に目を奪われた。

弟さんはすごくいい顔で笑っている。


「秀人と似てるね」

「本当、良く似ている」

奈緒と一緒に見入ってしまう。



父親と挨拶に立っている秀人は、気丈に振る舞っていた。


3人を見付けると、父親に紹介し、「遠いところをありがとうございます」と挨拶した。


「母親がダウンしちゃって、挨拶出来なくて。

さっき課長も来てくれたんだ」


「秀人、お前は大丈夫なのか?」

悟が聞く。


「今は気を張ってるんで…。弟の顔、見てやって下さい」 

3人を誘導しながら、サヤには目で挨拶し、次に

「奈緒さんも、わざわざありがとう」と言った。


秀人の弟(瑛人)さんは、穏やかな顔で眠っていた。

サヤは心の中で話しかける。

(お兄さんはあなたが大好きですよ)、と。


流れに沿って出口まで来た時、奈緒が言った。

「サヤ、もう大丈夫?」


秀人との事を気遣い、もう帰って大丈夫か?と聞いてくれているのだろう。

「うん、今日は忙しいし家族優先の方がいいしね」


奈緒も納得したように、「じゃあ」と会場を後にするよう悟に合図するが、悟は「いや」と言った。


「サヤ、秀人と少しの時間でもいいから会ってこい」

「えっ?」

「この会場で、秀人が支える人は沢山いるかもしれないが、秀人を支えれる人は数少ないんじゃないか。

待っててやるから会ってこい」


「悟…」

奈緒に視線を向けると、頷きながら、行ってと合図している。


「じゃ、挨拶だけしてくるね」

戻るサヤの後ろ姿を見て、奈緒が悟の横腹を突いた。



会場に戻ると、すぐに秀人が気付いた。


「サヤさん、どうした?」

「悟が、ちゃんと会ってこいって」

「そっか…今ちょうど会社の人もいないし控室行こう」


すぐ裏の控室へ移動する。

用意されている缶ジュースを袋に入れると、みんなで分けてと渡してくれた。


「ちゃんと食べれてる?」

「数日バタバタしてて、正直ちゃんと食べた記憶がないけど、そのうちまたサヤさんと美味しいものを食べに行くから大丈夫」


「うん」

「サヤさん、元気ちょうだい」


秀人がサヤの両手を取る。

願いをこめるように、握る。

サヤも心の中で(頑張れ、頑張れ)と言いながら。


「もう少し、別れを惜しんでくるよ」

そう言って、秀人は会場へ戻って行った。


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