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砂の城  作者: F
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抱きしめたい

サヤがステージに上がった時、あまり注目しないで欲しい、と願った。

その位、秀人にはサヤが輝いてみえた。 


病院から遅れて到着した時には、遠くで落ち着かない様子が見てとれた。

手を胸の前で組み、行ったり来たりしている。


サヤをどうにかして安心させてやりたい、落ち着かせてやりたいと思った時、奈緒の姿が近くに見えた。


サヤを連れ出して欲しいと奈緒に告げると、

「サヤをどうにかできるの?」と聞かれた。

「さっきから悟が声をかけても、いっぱいいっぱいだよ」


会場はほぼ満席になって、始まるのを待つばかりで、役員達もすでに席に着いている。

近くの営業所や関連会社、主な取引先からも人が集まる為、200人程になるとは聞いていた。


今はガヤガヤとしているが、開始してシーンとした中で注目されるのは、さすがの秀人も緊張する。


「サヤさんにしか効きない魔法がありますから」

秀人が努めて明るく言うと、奈緒は指を差し、衝立向こうで待てという。


しばらくしてオドオドした様子のサヤが現れた時、迷わず抱きしめていた。

誰かに見られるかもしれないのに。

ただ、大丈夫だよ、と伝えたかった。


少しでも気をそらせる為に、話かける。

サヤなら美味しい話をすれば、顔がほころぶはずだ。

オレが見守っているから、と分かって欲しい。


ステージに上がった時に、会場を見渡して、威圧感で急に話せなくなってはいけない。

小さな手に、三日月のマークを描く。


サヤなら分かってくれるはず。

笑って送り出そう。



サヤが無事ステージから降りた時、急に安堵感に襲われた。

自分の発表はまだこれからだと言うのに。


でも、今日来た目的はほぼ果たした気がする。


自分の事より、相手の事を重んじてしまう性格なのは充分承知していた。

サヤの事になると尚更そうなる。


今までもそんな恋愛をしてきたのか…。

これじゃ、そのうち〝重い〟と言われてしまうかもしれない。

少し加減しないといけないな、と思っていると司会者が秀人の紹介を始めた。




無事表彰式が終わり、人が入り乱れ、ざわつく中でもサヤだけはすぐに見つけ出す事が出来る。

同期の5人と、緊張がほぐれたのか明るく談笑している姿が微笑ましい。

何かあっても、支えてくれる仲間がいるから安心出来る。


サヤには直接挨拶出来ないが、すぐに戻らないといけない。

今は安定している、と担当医は言っていたがまた容態が急変してはいけない。


途中、課長に会い、現状を説明した。

「無理するなよ」と、肩を叩かれる。

報告はマメに入れろ、とも。


会場を後にすると、「秀人!」と呼び止められた。

「昨日から休んでるけど、何かあったの?」

美玖が尋ねる。


「ちょっと家の用事でな」

詳しい事は今は言わない方がいい。


「大丈夫なの?」

美玖に聞かれ、一瞬返事に戸惑う。

「大丈夫。それより急ぎの書類まわしとけよ」


急ぎ足で、駐車場を目指す。

でも、後ろで足音が聞こえた時、サヤだと確信して振り返った。

抱きしめた時に、離したくないと思った。

今からの現実から逃げたいとも思った。



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