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砂の城  作者: F
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サヤの場合

新入社員は無駄に元気。

まだ会社というモノに夢や希望を描いているのだろう。

半年も経てば、嫌でも現実が見えてくる。

そこからが、本当の社会人の始まりなのに。


地元では有名企業と呼ばれる製造工場に勤めて2年目の向井サヤは、今日も朝からなるべく省エネで働くべく、計画を立てる。


午前中は、倉庫に積まれた材料の検品、午後からその伝票をまとめる。


帰り際に、入荷した材料のリストをそっと上司である課長にメール報告する。

そして、定時にピタッと終わり、独身の自分時間を楽しむのだ。

帰り際に報告するのは、何か異常があっても、捕まらないようにするため。


予定通りその材料が入ろうが入らまいが、私には関係ない。

どうせ注文をし忘れた人が悪いか、材料を出荷しなかった仕入先が悪いか、受け入れした記録のミスなのか、どれかには当てはまるのだから。


今までの経験上、本当にまずい状況の場合は次の朝までには何かしら解決案が見つかっていて、出社したらあとは指示に従うだけだった。


入社してから、変わらずこの仕事をしているが、この課でサヤが1番年下で経験も浅いため、意見を聞かれる事もまずない。

自分には、責任が回避できるこの仕事に満足していた。

休みに推しに費やせる給料があれば、それで充分なのだ。


だから平日は、なるべく頭と体力を使わず、ただ淡々と必要最低限の仕事をこなす。

これまでもこれからも。


サヤはいつも通り、入荷リストを作成し5分待ってから別の場所に居る課長にメールした。


帰り支度を整えながら、壁掛け時計を確認する。

予定通りに今日も進んだ。

早く終礼が鳴って欲しい。


その時、事務所の扉を勢いよく開ける音がした。


「お疲れ様です!」

あぁ、朝から元気いっぱいの新入社員クンではないですか。

夕方まで変わらぬテンションは入社したての若さ故なのですか。


「向井さん、今日この材料入ってきたか分かりますか?」

その時、終礼がちょうど鳴った。

帰らなくては。


「ごめん、ちょっと用事があって帰らないと。

今日入った材料のリストはこのファイルに入っているから見てくれる?」


体半分は事務所から出つつ、新入社員クンに声をかける。


「分かりました!帰り際にすみません」

若さ故な彼は素直にファイルを確認している。

サヤは予定通りに会社を出た。


彼の名前を思い出しながら…。



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