パブリック・トラスト
どんな高校かが理解できた頃
なぜ私、明智が軍需産業第三高校に入学したのかを振り返ってみましょう
小中学校を過ごした場所は底辺労働者の居住地区でした
親は結婚資格試験をギリギリ合格して
子育て可能収入とギリギリで判定された底辺労働者夫婦
住民は非常に気性が荒く、ガラの悪さ自慢をするようなところで
昔から拳で語り合う住民交流が普通な暴力と悲鳴が溢れる街
街角暴力や家庭内暴力を普通に視界に入る日常
”話し合いで家庭内や住民同士の揉め事を解決しよう”
なんて言う人が出現しても
何を気取った普通の市民のような事を言っているんだ
わかってないなあ、これだから不法移民な新参ヨソモノは
こんな町に流れ着いた馬鹿のくせに
話し合いなんて馬鹿だから無理だろ?
殴り合いで、拳で語って
勝った強い者が全てを決めるのが当たり前だろ?
なあ、みんな、そう思うだろう。この町の住人なんだから
と多数派の住人が言い張って、話し合いは実行されません。
そんな土地柄というか住民気質です。
なので警察にある住民監視サーバーの性能だけは世界一です
ほぼ全ての成人住民が要監視人物として登録されていて
マフィア関連住人から、マフィア企業舎弟会社の社員
はては、マフィアとズブズブな警察官まで
国や地域に不都合な事をしたら即逮捕できるように
町中が監視カメラや盗聴器だらけで
非国民キーワードを言ったら数分後には
警官が逮捕しに、やってきます。
人を見たら泥棒と思え、盗まれたくなければ誰も信用するな
詐欺は、言いくるめられて騙される方が悪い、嫌なら言いくるめる側になれ
そんな格言を年寄りが子供に語る地域で中学校までを過ごしました。
◆
中学三年生の時です。
同じクラスの同じ班で、監視チェックに気づいた奴が
どんな事を言わせたら、社会的に殺されるかという
実験を始めてしまい、唆された通りにNGワードを語って
隣の席に座っていた同級生が消されました。
存在を消す側になった奴は言いました
強い俺が勝ったから言う事を聞けと言ったのに
弱くて負けたくせに言う事を聞かなかったんだ
だから、奴が悪かったんだ、間違っていたんだ
存在を消されて当然だろ
クラス委員長とかも、いちいち騒ぎを起こして面倒なので
いっその事、行きつくところまで行きついてしまえ
と煽って事態をエスカレートさせていました
大人になって学校の外で発生したら事件ですが
学校内で中学生同志ならば、子供の戯言だからで
何をしても大丈夫な少年法という事を
日々の日常が証明していたので
誰もが、言うだけなら何を言っても大丈夫だと考えていました
なので、言葉の暴力が飛び交う日常は、よくある光景でした
担任教師は退役軍人である体育教師
戦争中に最前線の兵隊として、敵兵を殺しまくった時の事や
捕虜にした敵兵で、どんな人体実験をして
見せしめに殺して晒し者にしたり拷問したりした経験を
楽しそうに自慢げに語る先生でした
いわゆる強くて勝ってきた俺様自慢をする元兵隊さんです。
色んな意味で普通の人間が持っている感覚
思いやりとか、親切心とか、人類愛とかが
戦場での普通な日常で完全に壊れて無くなったけど
一応、社会生活はギリギリ可能だろう
と判定された人で
「俺が戦争中にいた最前線部隊では・・・」
が口癖でした。
内心、心の中で思っていたのは
戻りたけりゃ最前線にでも紛争地帯にでも戻ればいいのに
いいトシした歩兵として若い兵隊に混ざって戦えば?
こんなのを、よく市で雇う公務員として
市教育委員会が市立中学教師として採用したよな
というような罵詈雑言でしたが
誰も何も言いません、怖いので
そういうのが担任教師なので
消された生徒が
「なんで、こんな悪意を向けられるんだよぉ、誰か助けてぇ」
と本心から叫んでいた言葉に、何を考えていたか?
たぶん
「何を甘ったれた事を、それくらい自分で、なんとかしろ
できなけりゃ、無能な自分が悪いんだから我慢しろ」
そんな言葉を考えていたのでしょう。
それか普通の良識とは逆な頭の中身で
こんな地域にいる兵隊くらいにしか使えない馬鹿のクセに
なんだ、この弱卒は、弱い。こんなのが味方にいたら負ける
国が勝つために戦える強い兵隊になるための訓練と思って
強くなるために、ひたすら毎日、戦え
誰にでも勝てるようになるために戦え
というような独自の良識が根底にあったのかもしれません。
最初は、なんだ?このイカレタ壊れた元兵隊は?
と思いましたが慣れました
この先生が若い頃、子供の頃に、そう刷り込まれたので
一生、死ぬまで消えない心に掘られたイレズミのようなものなのでしょう
こいつの感覚に慣れるしかありませんでした・・・とっても嫌だったけど。
中学2年くらいまでは基礎体力が低いので
殺傷能力を保有するほどの攻撃力は無いので
死人は出なかったのですが
成長期に入って、数人が殺傷能力を保有して
公開処刑のような撲殺事件が発生するまで誰も止めませんでした
特に非国民NGキーワードを言わせての非国民リンチだったら
数人で殴り殺しても殺人罪にならなかったので
もし戦場の敵兵でも無いのに、人を殺したら殺人罪で
逮捕されるという事を道徳で教育されない学校でした
こいつは、どうせ弱いから殺される側になる
と判定した時点で合法に殺すゲームが流行し
中学の最終学年では、長年の義務教育ストレスで
非合法に殺してしまった生徒が逮捕され
見せしめとして激戦地へ囚人兵として送り出されるのが
当たり前な光景でした。
「ああ、しょうがない、あの地域住民の子供が通う中学だからな
どうせ、こいつらじゃ、何を言っても無駄
会話じゃなくて暴力で語り合っているんだから、しょうがない
こういう奴等が集団行動をするには
弱い者イジメも、差別も、仲間外れも必要悪
しょうがないか、はっはー、しょうがない
だって、こんなスラム街にある中学なんだから
道に餓死死体が転がっているような地域なんだから
数年前までは、外国人が自動車で住人を轢き殺しても
外国人の一ヶ月ほどの給料と同じ額の罰金で物事が収まってたし
人の命が安いし、今も安いままな地域なんだから
まあ、いいや、激戦地へ少年囚人兵として送りこんで
ひょっとしたら、悪だくみに関しちゃ天才で
有能で仕事熱心な兵隊として使えるかもしれないし」
そんな事を偉い先生とかは考えていたのでしょうか?
さて、そんな偉い先生たちですが、最終学年の見せしめには熱心でした
日々のストレスの鬱憤晴らしの意味もあったのでしょう
先生によっては、ストレス解消は、これだと公言していました
ですが、やりすぎて、毎年の前例のように
”中学生の子供のした事ですから”
と揉み消せる必要悪な内輪のイジメや、集団暴行事件では無く
大問題だと偉い先生が社会的制裁を受け
社会的に消されるかもしれない事件が発生して
国民新聞や国民テレビで全国へと大々的に公表されました。
……結論を言いましょう。事件の詳細は語りたくありません。
事件実行犯が少年刑務所送りになった以外に
実行犯と同じクラスの同じ班だった私も悪いことにされました
実行犯と関わって挑発したから悪いんだ、挑発したら実行犯も同じだ
同じ群衆心理の中にいた君にも連帯責任というものがある
そんな、ワケのわからない言葉を担任教師に浴びせられ
とにかく実行犯を煽っていたのは私だけということが関係者に報告され
進学できる地元高校がなくなりました。事実上の地元追放処分です。
小学校、中学校の元同級生とは中学卒業後、完全に交流がありません
「あんな事件を起こした問題児童と関わっちゃいけません」
スラム街にしか住めない底辺労働者な誰かの母親にまで
そう言われています。
でも遠くの大都市にある全寮制高校には
進学できることに成りました。それが
軍 需 産 業 第 三 高 校
情 報 工 作 科
だったのです。ちなみに普通の学力偏差値は自分の偏差値から遥か下。
立派な軍人になって前線で戦う兵隊になって軍で出世するのに
学校の勉強・・・学術理論や、学力偏差値・・物事の把握能力は関係無い
・・・らしいです。
勉強する才能が無かった脳筋の自己弁護のようにも聞こえますが・・・
国民義務教育も高校生なのにする学校だそうです。
でも、この高校にしがみつくしかありません
だって地元の同レベル高校へは行けないんだし
なんとか、この高校へ進学はできるのです。
そのとき、まだ知らなかったのです。自分が迷い込んだ不思議な世界に
この不思議な世界に迷い込んで
無神論者でありながら、この世の全てを破壊した伝説を持つ破壊神が
どんな気持ちで全てを破壊したくなったのかが
理解できるような体験を、この後する事になるとは思っていませんでした。
◆
第三高校の教師として過ごす事が決まった清水寺に
先輩からマニュアルが渡された
第三高校へと進学した中学生が
何故に、こんな学校へ進学する事になったかが
理解できるマニュアルだという事で
熟読して理解する事を要請された。
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底辺労働者居住地域での
義務教育学校における社会的信用維持マニュアル
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底辺労働者居住地域の中学校においては
教育心理学で習う 集団行動においての人格形成と
教育原論で習う イジメや差別への対応
のバランスをとった指導方針が、市から指示されます
その指示に従う事が最優先です
各自が個別に勝手な思い込みで指導をしてはいけません
もし勝手な思い込みで独りよがりな指導をした場合
人事考課で減点査定になります
ケースによっては懲戒処分となります
・・・・
我々の職務全体を考えた人間の指示に従う事が大事で最優先です
我々の職務遂行を優先する優秀な公務員として生きたいでしょう?
一学年に一人くらいの集団生活不適合な生徒のような事をしてはいけません
減点評価は嫌でしょう?
それに市立小学校、市立中学校なので学校法人会計上のコストは
なるべく削減する必要があります
指示された我々の職務遂行に必要な事だけをする
我々の中で、必要な存在とならなければ、なりません。
・・・・
管理責任問題が発生した場合
加害者の親、被害者の親、担任教師、同じクラスの生徒、学年主任、校長
PTA会長、同窓会会長、市教育委員会の役員
それらの人々が管理責任問題を問われないようにする事が
学校全体の信用というものを維持するために必要です。
事件に関係した当事者を集めて、群衆心理操作員による説明会を行います
事件発生などの場合、以下のような説明がされます
” 学校は悪くありません。全く責任問題は無いのです
悪いのは実行犯になった生徒と、実行教唆をした生徒
そうでしょう。皆さん
この学校自体の悪評が世論に広まったら
一生、履歴書に書かれる学校名が悪評にまみれたら
学校全体の信用が棄損されます
実行犯は未成年と言えど終身刑ですし
恩赦で釈放されても紛争地帯の最前線で囚人兵です
この地域に戻ってくる事は一生ありません
実行教唆をした生徒は刑務所に送られません刑法上は無罪です
ですが安心して下さい
皆様の御子様が通う当地域高校へは進学は禁止です
どこか他の地域にヨソモノとして出て行き
皆様が二度と会う事は、ありません
非国民犯罪者となる二人ほどの犠牲で全体が救われるのです”
・・・・
我々の職務に関係の無い部外者が
住人だからと学校運営などに介入しようとしたケースの対応
” 自分なんかが何かを考えようが
何かを言おうが、何が変わるワケじゃない”
という無関心層を増殖するように指導して下さい
そういう無関心層を多数派にすれば、
無責任なデタラメを言う人間が減ります
我々の職務遂行のために、批判するだけな存在は
無関心層へと追いやりましょう。
・・・・
そんな、社会的信用維持マニュアルを読みながら
清水寺は想った
この定型パターン対処をされる形で実行教唆生徒と判定され
第三高校に入学せざるを得なくなった生徒が
このマニュアルを読んだら、何をするだろうな
いや、誰に、どんな感情を抱くのだろうか?
と・・・