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ゲリラ・マーシャル・アーツ

 教室内にある何を道具にしてもいいから

 対戦相手に、どれだけダメージを与えて

 恐怖心を植え付けて反撃する心を折れるかという趣旨の


 ゲリラ格闘術という授業がありました


 気絶させるか、戦闘意欲を失わせるか

 授業中の事故で再起不能の大怪我をして戦闘不能にするか


 とにかく両者が戦闘意欲を失わない限り続く

 サシ勝負の格闘が続行される授業です。




 授業の最初にゲリラ格闘術の先生が宣言します


「御前等は、頭のいい人間と同じ事をするな

 しようと思っても、できないだろうが、あえて言う、やるな


 頭の良さと言っても色々あるが

 たとえば格闘になった時、


 相手の格闘スタイルを見切って戦って勝てる


 という頭の良さを持つ人間を御前等みたいな馬鹿が見て

 俺も同じ事をやって勝ちたいと考えて実行に移したとしよう


 御前等じゃ完全に見切れなくて

 見切ったつもりで、”どうせ、こんなもんだろう”

 と相手を舐めてかかって負ける


 なぜか? 馬鹿、相手の格闘スタイルを見切れないのに

 自分が見切れると思い込んだだけの馬鹿になってしまったからだ


 わかるか? だから、御前等は馬鹿なんだからな?

 馬鹿だから無理だ。それを自覚しろ?

 じゃねえと死ぬのが早くなるだけだ


 そもそも、兵隊でも頭のいい人間は

 ゲリラ格闘術なんか覚える必要は無い

 ゲリラ地上戦という事態になった時

 部下の兵隊に指示するだけで

 対人格闘なんかする必要も無いからだ


 そしてだな、紛争地帯の最前線

 市街戦や密林ジャングルでのゲリラ戦での戦闘を指示される

 御前等、歩兵部隊の人間が何で評価されるか?


 それは、強さだ。他に何も無い

 何をしようがいいから、同じ歩兵に勝てばいい、それだけだ


 弱くて負けたら殺される、

 勝てる強い兵隊にならないと生き残れない・・・当たり前だ


 強くなれば、弱い敵を倒して、いつかは上官になれる


 死にたくなければ、敵兵を殺せ! わかったな!!!」



と ゲリラ格闘術の基本心得を語ります


強いか弱いか、勝てるか負けるかだけが全て


という事を、言い方を変えて繰り返し宣言します



 実は私も、この高校に入学できただけあって

 某武道で黒帯を持っています。


 でもゲリラ格闘術で勝つ最低条件


 ”相手の闘争心を折る”


 という事が可能な気がしません。



 ゲリラ格闘術はスポーツでは無いので

 ルールがあるワケでも勝ち負けを決める

 ポイントがあるワケでも、ありません


 某武道みたいに、体を鍛える前に心も鍛えましょうとか

 礼を知り己を知るための精神修養をしましょう

 なんて事は指導教官である先生も言いません


 どちらかが相手を半殺しにして戦闘不能になるまで

 ひたすら互いに暴力を振るって決着をつけるまで殴り合う


 デ ス ゲ ー ム


 相手を痛めつけるためには、どんな卑怯なマネをしてでも

 とにかく勝つためには何をしてもいい。なんでも、あり

 相手の心に、どうやって御前は俺に勝てないと思いしらせるかだけが全て


 もちろん、友愛溢れる少年マンガのように

 喧嘩した後に仲良くなって仲間なんて事は、ありません。


 腹の中に悪意を抱え、いつか蹴落としてやる

 自分が勝てそうな隙を見せないかなぁ

 と、負けている間は表向きだけ一緒に戦う友達面をして

 勝てたら豹変して下僕扱いをするやつが多いようです


 自分は、できるなら、この授業の主旨に染まりたくない

 と感じたたのですが


 これぞ、天から与えられた俺のためのものと

 喜び勇んで参加する人間がいました。



 マフィアの息子である後白河と


 ボス猿を目指す気らしい門馬です



「消えろぉ!! こぉの、クソ馬鹿野郎ぐぁ!」



 最初が肝心と挑発的な掛け声を

 後白河が叫びながら掃除用モップの柄で門馬を殴り


 鈍い音が響きわたります



「うっ ぎぃゃあ あ あ あ あ あ あ あ あッ!」


 殴られた門馬が頭を押さえて転がっていきます


「ぶっ 殺 し て や る ぅ う う う う う う !」


 気合いと根性で門馬が掃除用具を手に後白河を襲うが

 後白河が、漫画の棒術を使うキャラのような技で門馬を返り討ち

 重心を崩された門馬は、自分の突撃した勢いのままに壁に激突。



「んぅふ んぐぃゃ あ あ あ あ あ ッ!」


 頭を打った門馬が転げ回ります


 いくら門馬でも大怪我で再起不能、入院なんじゃないか。

 いや授業中の不幸な事故で死んだんじゃないかとすら思いました。


 でも、そんなはずは無いのです。



「ちっくしょおお! やりやがったなぁあああああああああッ!」


 門馬が叫びながら立ち上がります。

 まだ心が折れずに反撃できるとは


 心の底では彼らが同じ人類なのか疑問を持ちました


 どこかの国が攻撃性能と耐久性を追求して秘密裏に開発した

 戦闘用の改造人間なんじゃないかとすら想いました。



「門馬! 門馬! 門馬! 門馬! 門馬! 門馬!」



「ここで敗けを認めたら男じゃねえぞお!


 あの時、負けたんだからって 一生、言われるぞ! いいのかぁ!

 こんな奴に 一生、言われるんだぞ 負け犬ってなぁ!!


 さらに、こいつが誰かに負けたら、そいつらにも言われるんぞ

 俺より弱い負け犬に負けた負け犬ってなぁ!!」



 門馬に、まだ戦えコールが浴びせられ観客の煽りに応え、戦闘を続行。


「まぁだ、わからんのかぁああ!!

 本当に殴り殺すつもりで殴らんかぁああ!!!」


 先生においても、闘争心を煽る言葉を投げかけ


 同時に、見学生徒も同じ高校の同じクラスになっただけで

 しょせんは他人だから、どうなろうが関係ねえって感じで

 煽って闘わせて面白がります


 自分以外の誰かが仕合いをしているのを見て

 色んな言葉が脳内に浮かびます

 場の空気を読んで、口には、しません


  誰かが頑張れば、自分が

  ゲリラ格闘術・・・通称 コローシアイと呼ばれる

  なんでもあり格闘術の選手になる時間が短くなるので

  頑丈さだけは一番な門馬のようなアホに

  長い時間、戦わせて頑張らせよう


 という場の空気を一緒になって増幅させます


 こういう科目では有能な怠け者でいて

 無能な働き者が苦しみながら足掻く光景を

 見るだけでいたいという心理もあったのでしょう


 普通の人間は心の奥底で眠らせて表に出さない部分

 獣性と書いて、にんげんせいと読む性分を

 湧き上がらせるように先生も指導します。


 そうしないと、やる気が出るはずが、ありません。


 その日は一時間弱の授業をフルに使った

 二人だけのデスマッチが繰り広げられました、たいした体力です。


 先生が締めの言葉を言って授業が終わります。


「今回は見ていただけの御前等ぁ、何を考えた?


 俺だったら、こうしたのに、あの時、こうすれば良かったのに

 なんで、こうするんだろうな、だから時間切れ引き分けなんだよ


 などなどと思いついただろう?

 ひたすら戦っている二人を客観的に見て


 1対1で自分が格闘している時に見えるのは

 格闘相手だけで独りだ

 そして、客観的に自分を見れる奴なんざ

 少なくとも、御前等の中には、いない


 御前等は、たぶん鍛えた所が全員バラバラだ

 誰かと同じ強さを追求するな、自分の強さを追い求めろ、以上だぁ!」


・・・・



 そしてゲリラ格闘術の成績がズバ抜けて優秀となった

 後白河くんが新しい内輪の遊びを考えて

 歩兵科全員に強制参加をさせました


 歩兵科の休憩時間や昼休みに、ゲリラ格闘術自主トレ試合を行い

 勝った側が抜けて、負け残りトーナメントで一番弱い人間を決め


 最後まで残って最弱王になった人間は

 鍛えて弱さを克服するために

 誰の相手でも、いつでも、どこでも受けてたつ

 スパーリング・パートナーとして戦わねばならない


 という事が決まったようです。


 後白河くん曰く


「このルールでゲリラ格闘術のレベルが上がるんだからよ

 スゲエだろぉ 感謝しろよ御前等ぁ」


 という事だそうです


 毎日、どこを叩いたり殴ったりすると

 一番ダメージがあるかを確かめて遊ぶオモチャを

 最弱王と呼んでいるようにしか見えません。


 どぅえーっ へっへっへ でへ


 んぅぐえーっ へっへっへ げへ


 と厭らしさが響く悪役笑いを響かせ

 強い俺達は弱い者を、どうしてもいい

 というような呪文を言いながら楽しそうに遊んでいます


 担任の先生も、それをニコヤカに眺めています

 若い子供が元気良く一緒に遊んでいるなあと笑いながら・・・


 特に、後白河は野球部なので誰も行為をとがめません。


 この学校では、野球部は特権階級です。

 野球部が大会に出場できなくなるような事件は

 全て同窓会長である所管の警察署長の手によって揉み消されます


 実際やりたい放題でした。全て学校が揉み消してくれます。


 たとえば、一年生の時、野球部で事件がありましたが

 事件翌週には、事件関係者が全て学校から消されてました

 野球部に所属していなかった事は、もちろんの事

 学校にも在籍していなかった事になり、寮からも退去

 この学園都市に存在していなかった事になりました。

 そして野球部は公式大会には何事も無く出場しました。

 隠蔽専門の訓練をしている卒業生もあるだけあって

 素晴らしい隠蔽力な学校です。



 後白河の父親は副会長のマフィアのボス

(表向きは企業舎弟会社の会長)ですが


 警察署長の同窓会会長と、ズブズブの仲で

 何かの不都合が不祥事や事件があっても

 自分だけは消されないという確信があるのでしょう。


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